テンポ良し!アクション良し!おバカ良し!脈々と受け継がれるB級サメ映画の系譜が感じられる掘り出し物な一作「サマー•シャーク•アタック」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(747日目)
「サマー•シャーク•アタック」(2016)
ミスティ•タリー監督
◆あらすじ
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オザーク高原にバカンスにやってきたリック一家。湖の周りは花火大会を楽しもうと、大勢の人で賑わっていた。そんななか、川に入った祖母が突然現れたサメに襲われてしまう。さらに、湖でカヌーを楽しむリックと母・ダイアンにも不穏な影が近づいていた。(Filmarksより引用)
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『休暇を利用して湖の花火大会にやって来た主人公一家が突如出現したサメの群れと壮絶な死闘を繰り広げる』
という非常にシンプルな内容のB級サメ映画なんですけども、テンポよく展開していきますし、何より遊び心がふんだんに盛り込まれたアクションシーンは作り手側が楽しんで作っているのが我々視聴者にもダイレクトに伝わってくるため、個人的には相当好感が持てましたし、面白かったです。
ちなみに今作は劇場公開用の映画ではなく、アメリカのsyfyチャンネルにて行なわれている人気サメ映画「シャークネード」を題した『Sharknado week』という、他の人気サメ映画からZ級の珍作まで様々なサメ映画が放送される夢のような企画において、2016年に「Ozark Sharks」というタイトルで放送されました。
テレビ映画ゆえにおそらく予算も限られる中で、最大限自分たちの作りたいものを作ったという感じの印象です。CGのサメはお世辞にもクオリティが高いとは言えませんが、完全に開き直ってガンガン登場させてくるので中盤以降は慣れます笑
クオリティが低いとどうしても登場回数を極力少なくする方向に舵を切る作品は多々ありますが、逆に出しまくることで見慣れさせるというのは非常に新しいですね。これには衝撃を受けました。えらいもんで、本当に中盤以降はなんとも思わなくなります。
『Sharknado week』は毎年かは定かではありませんがコンスタントにやっているようで、下記の公式サイトからラインナップが見られるんですけどこれがまたメジャーどころからマニアックなものまで抑えてあってサメ映画好きには堪らないと思います。
こういうの日本でもやって欲しいですね!
強いて気になったところを挙げるとしたら、クライマックスに突入してからエンディングまでが20分強と少々長くダレてしまいました。85分とそこまで長くない尺の中でテンポ良く展開していたのに最後の最後でもたついていたのが個人的には相当勿体なかった気がします。
詳しくは後述しますがサメの倒し方が非常にバラエティに富んでおり、絵的には相当楽しめます。登場人物も非常にバランスが良く、無駄なキャラがいませんでした。なもんでクライマックスからエンディングまでをもう少し巻いて、それまでに主人公のモリーや訳知り顔の管理人ジョーンズの掘り下げなんかがあってもいいのかなと思いました。
今作で監督を務めたミスティ•タリー氏は、実験によって生み出されたゾンビ鮫が島の人々を襲う「ゾンビシャーク 感染鮫」(’15)や、漫画好きの少年が描いたサメが現実に現れる「サンタ•ジョーズ」(’18)など個性的なサメ映画を生み出しているため、サメ映画好きにとっては要チェックのクリエイターとなっています。
なお同氏は「フライング•ジョーズ」(’11)や「ゴースト•シャーク」(’13)などこれまた個性的なサメ映画を数多く生み出し、俳優としても活躍しているグリフ•ファースト監督の愛弟子だそうです。
B級サメ映画の系譜が脈々と受け継がれている感じが良いですね!日本でも夏目大一朗監督のようなオリジナリティ溢れるサメ映画を製作するアグレッシブな監督がこれからどんどん出てくることを願ってます。
今作は現在アマゾンプライム、U-NEXT、WOWOWにて配信中です。アマゾンプライムでは年内で配信が終了するため気になる方はお早めにどうぞ!個人的にはそこそこオススメです。
◇休暇を利用してオザーク高原の湖で行われる花火大会にやって来たリック一家。家族だけのバカンスにあまり乗り気ではなかった長女•モリーもサプライズで押しかけてきた恋人•カーティスのおかげもあり、大はしゃぎ。家族全員がそれぞれの時間を楽しもうとしていた。しかし突如として凶暴なサメが出現し、モリーたちの祖母が彼女の目の前で食べられてしまう。慌ててカーティスと兄•ハリソンに助けを求めるが、祖母の姿は跡形も無く消えており、当然ながら警察も彼らの話を意に介さない。そんな彼らの話を聞いた管理人のジョーンズは待ってましたとばかりに大量の武器を用意し、サメの群れとの真っ向勝負に挑む。そんな折、モリーたちの両親がカヌーで湖に出ていることが分かり、彼女たちは急いで現場に急行する。
というのが今作の中盤までの流れです。
ちなみにアメリカのミズーリ州に実際に存在するオザーク湖(オザークス湖とも)を舞台としているため原題が「Ozark Sharks」となっていたわけです。
物語がテンポ良く進んでいく中で『自然とメインキャラたちがバラけて行動し、各々の話が展開していき、クライマックスで全員集まる』という理想的な構成でとても見やすかったです。
各々をバラけさせるための動機や行動理由みたいなものがちょっと薄いかなとも思いましたが私はあまり気になりませんでした。基本的には長女のモリーが軸となっておりますが、兄•ハリソンや管理人•ジョーンズ、モリーの彼氏•カーティスなんかも上手いこと機能しており、ストーリーに厚みが増していました。
祖母の命を奪われたことへの敵討ちもありますし、両親を助けるためとか行方が分からなくなったハリソンを探すためと主人公一家が湖に留まって戦う理由がちゃんとあるのも良かったです。
ただ、個人的になんですけど管理人のジョーンズに関してはもう少し掘り下げが欲しかったです。モリーがサメの被害を訴えた時に待ってましたとばかりに大量の銃器や刃物、御手製兵器まで保管してある武器庫に彼女たちを連れていくんですけども、彼がなぜここまで用意周到に備えていたのかが最後まで明らかになりません。
2500ボルトの高電圧が流れるオールやシンプル日本刀、トラバサミ、巨大空気砲、捕鯨砲etc…と魅力的な武器の数々やそれらを用いたサメとの戦闘シーンは非常に面白いんですけども、ジョーンズのバックボーンがないため、ただの武器用意担当、武器マニアに見えてしまいます。これはちょっと勿体ないように思いました。
また、サメの設定も少々雑でした。
サメの種類は湖のような淡水でも生きられるオオメジロザメで、繁殖のために冷たい海から暖かい湖に移動してきたというのは分かります。しかし、過去にも目撃情報はあったけど一度も被害者が出たという事例が無かったことから「誰かがサメを怒らせたんだ!」という、やっつけにも程がある理由だけで強引に物語を進めていくのは流石にパワープレイすぎるかなと思いました。
例えば、付近の森林を伐採していたり、湖の一部を埋めたり、産業廃棄物を流していたみたいな「サメが怒るのも当然だ」と明確に分かるシーンがあれば納得できます。
あるいは、『過去に一度だけ幼い少女がサメに襲われた事件があり、その唯一の被害者が実はジョーンズの娘だった。しかし彼の話を信じる者は一人もおらず、その日から彼はサメへの復讐の機会を伺い続けていた』みたいな感じにしたら上手いことジョーンズが武器を大量に保管しているくだりにも繋がりますし、道理が通ると思いました。
中盤で「オレについて来い!まずは北を目指す!」みたいにカッコつけてたジョーンズがサメに襲われて即死亡するシーンは予想外すぎてめちゃくちゃ面白かったです。「ディープブルー」(’99)の序盤も序盤で重要キャラ感出まくりのサミュエル•L•ジャクソンがサメに食い殺されたのと同じくらいの衝撃でした。
また終盤で調子に乗って犬死したカーティスはずっと役立たずのおバカキャラだったので、彼の死はもう少しギャグ強めでも面白い気がします。
ラストは『カーティスの弔い合戦とばかりにモリーが大量の花火をジョーンズ御手製のバズーカ砲にありったけ詰め、サメの口めがけて発射。サメは上空まで吹き飛び、花火とともに木っ端微塵に爆ぜる』というのは爽快かつ芸術性すら感じる締め方で個人的には相当ハマりましたし、その後にダラダラ続けずに終わらせてしまうのも良かったです。
全体通して見るとそこまで派手さはありませんが十分に楽しめると思います。31日までならアマゾンプライムでも配信しておりますのでもしよかったら是非ご覧になってみてください!
そして!
いつもお世話になっているNNさんがご自身のnoteでオリジナルのサメ映画のアイディアを募集するという最高過ぎる企画を実施しておりまして、なんと僭越ながら私が審査と言いますか皆様のアイディアの寸評を担当させていただくことになりました!
どれも非常に魅力的で、こんなの絶対私好みのZ級サメ映画になるじゃないか!と悶えております笑
1000本以上のホラー映画を見てきた経験をフルに活かして一つ一つの作品に私なりのコメントを書かせていただければなと思っておりますので、どうか一つお手柔らかによろしくお願いいたします。
結果の方はNNさんのnoteの方で12月29日に発表されるそうです!こちらも是非要チェックでお願いします!
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