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冒険家マークと学ぶローマ帝国史 第1回

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マーク
古代オリエント文明を中心に考古学研究の旅を続けている冒険家。いつか自分も歴史に名を残す大発見をすることを夢見ている。生活はカツカツだけど、期待と夢に溢れた毎日を送っているよ。自由と冒険、そして非日常。それこそが彼が追い求める最高にハッピーな人生だ。

コインの図像を観ながら、古代ローマの歴史を学んでみよう。なぜボクらは歴史を学ばなければならないのか?その理由は人それぞれだが、ボクは先人たちの失敗を学び、同じ失敗を回避して人生をより良くするためにあると思う。そして何より、学ぶことが楽しいから。やっぱり、これに尽きると思う。楽しいことをすることは、人間にとって一番幸せな時間だ。人生辛いことも多いけれど、だからこそ少しでも楽しい時間を増やしたい。歴史について触れる時、ボクは現実のしがらみを全て忘れて、自分が最も自分らしくいられる。そして、底なしに楽しいんだ。だから、この楽しさ、面白さ、そして至福のひとときを、ぜひともキミたちにも味わってもらいたい。そんなふうに思う。

今回の第1回では、古代ローマの誕生、いわゆる建国の歴史について紹介していくよ。全ての道はローマに通ず。偉大なる古代ローマの誕生秘話の世界へ出発だ!


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古代ローマの創始者は、狼に育てられたロムルスという青年だったと伝承されている。だけど、まずは彼の先祖の話からしてみよう。時はローマの前衛となる都市を建設したアイネイアスにまで遡る。

時は前1184年頃、アカイア系ギリシア人とトロイア王国の間で激しい抗争が繰り広げられていた。この戦争をトロイア戦争という。10年間に及んだ大戦争で、一人の女性を巡って多くの人間の血が流された大惨事を招いた。アカイア系ギリシア人とは、ミュケナイ、スパルタ、イタケなどの都市国家の人々を指す。このスパルタの王メネラオスが王妃ヘレナをトロイアの王子パリスに奪われたことを発端としてアカイア連合軍とトロイア軍との間の血みどろ戦いが始まった。

ヘレナは絶世の美女で、彼女に勝る美女はギリシアには存在しないと言われるほどの美貌を誇った。メネラオスは、そんな妻を娶ったことが自慢だった。だが、トロイアから来訪した王子パリスがヘレナをそそのかし、彼女をトロイアまで誘拐してしまう。王宮に王妃がいなくなったことで、スパルタは大騒ぎになった。怒り狂ったメネラオスは、ミュケナイの王で兄のアガメムノンにこのことを話し、軍の要請を頼んだ。メネラオスは力づくでもヘレナを取り戻すつもりだった。兄アガメムノンは弟メネラオスの願いを聞き入れ、共にトロイアへと進軍する。だが、屈強なトロイアを攻め堕とすには他の都市国家の救援も必要であり、ギリシア中から傭兵から募られた。中でも有名なのはプティアのアキレウス、イタケのオデュッセウスだろう。アキレウスは百戦錬磨の無敵の戦士であり、オデュッセウスは頭脳明晰な名将だった。

古代ローマ人は、自分たちの先祖をコインの上に頻繁に描いた。彼らには先祖崇拝という思想があり、先祖の功績を何よりも重んじた。そして、先祖のように偉大なる業績を残すことが徳とされた。彼らにとっての一番の栄誉とは、武勲を挙げることであり、もっといえば、外国を侵略して新しい土地を手に入れることにあった。

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図柄表:メルクリウス
図柄裏:オデュッセウス
発行地:ローマ共和国ローマ市造幣所
発行年:前82年
発行者:ガイウス・マミリウス・リメタヌス
銘文表:-
銘文裏:C MAMIL LIMETAN(Gaius Mamilius Limetanus / ガイウス・マミリウス・リメタヌス)
額面:デナリウス
材質:銀
直径:18.0mm
重量:3.7g
分類:RCV I 282、RSC6、Crawford 362/1、Sydenham 741、Mamilia 6. N

伝令神ヘルメスとオデュッセウスを描いたデナリウス銀貨。オデュッセウスは。トロイア戦争でギリシア連合軍を勝利に導いた英雄である。彼はトロイア王国の不落の城壁を突破した天才軍師で、アカイア系ギリシア人の大いなる誇りとされている。だが、考古学上の調査によれば、トロイア王国があったとされる現在のトルコの地域一帯に神話内で描かれるような巨大な都市や屈強な城壁の痕跡は存在せず、伝承は当時の人々による創作だったというのが定説である。

ペルセウス、ヘラクレス、テーセウス、アキレウスなどが力によって英雄として讃えられたのに対し、オデュッセウスは知恵で成り上がった一風変わったニューヒーローといえる。解決できない困り事があったら、オデュッセウスにというように軍内での彼の信頼は厚かった。神話内では、ギリシア連合軍が幾度も危機に面した時、彼の知恵で困難を突破していく様が軽快である。繰り出される難問をどう解決していくのか、それが実に楽しい。ギリシア連合軍の総大将アガメムノンがオデュッセウスを徴兵した理由も頷ける。

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本貨は、オデュッセウスが故郷イタケに帰還し、愛犬アルゴスと再会する感動の場面を描いている。発行者ガイウス・マミリウス・リメタヌスは、オデュッセウスの末裔が建設したと伝承される都市トゥスクルムの出身だった。共和政ローマの貨幣発行担当者は、自身の出自に関した図柄で貨幣を発行することが度々あった。また、ローマは政治上ギリシアを支配下においていたものの、彼らが持つ神話に憧れ、次第に自分たちをギリシア人の末裔と自称するようになった。カエサルはトロイアの武将アイネイアスの末裔と自称していた。

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メルクリスウスは、伝令、商業、窃盗を司る男神だった。ラテン語ではメルクリウスだが、ギリシア語ではヘルメスと呼ばれている。トロイア戦争終結後、オデュッセウスが故郷へと帰るための険しい旅を手出けした。

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このマップを見てもらえば分かると思うが、現在のトルコに位置したトロイア王国は、メネラオスやアガメムノンらがいるスパルタやミュケナイからは少し距離があった。そこで総大将のアガメムノンは中継地としてエーゲ海のエウボイア島に一度軍を集結させてからトロイアへと出航することにした。だが、アガメムノンがその横暴さからアルテミス女神の怒りを買っていたせいで、港は常に嵐で吹き乱れ、一向に一行は出港できない状態にあった。困ったアガメムノンは、占い師に嵐の原因を占わせた。すると、嵐の原因はアルテミスの怒りであり、生け贄にアガメムノンの娘を捧げなければ嵐はずっと収まらないとのことだった。思い悩んだアガメムノンだったが、最終的には娘を犠牲に捧げるという苦渋の選択を行った。この犠牲によって嵐は止み、アカイア連合軍はトロイアに向けてようやく出港したのだった____。


To be continued... 


Shelk 詩瑠久🦋

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