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ヒーローが去った後には、新たなヒーローが登場する。広島・野村投手の引退試合。ルーキーの滝田投手が好リリーフ。プロ初登板で初勝利。去る先輩へ、亡き母へ捧げた

ヒーローが去った後には、新たなヒーローは現れる。それを象徴する試合だった。広島で13年間プレーした野村祐輔投手(35)の引退試合。先発を務めた野村投手を引き継ぎ、ルーキーの滝田一希投手(22)が2番手でマウンドに上がった。プロ初マウンドで4回1失点と好投して初勝利を挙げた。去る先輩へ、そして亡き母へ捧げる白星となった。

5日にホームの広島で行われたヤクルト戦。デビューから先発登板を続けた野村投手は、最後のマウンドも先発を任された。初回を無失点に抑えてマウンドを下りた。これで先発登板記録を211と伸ばし、現役生活に別れを告げた。

今月2日にはヤクルトの青木宣親選手(42)の引退試合があり、その時の対戦相手は広島だった。お互いがヒーローの引退試合の対戦相手となるのも何かの縁だろうか。

ヒーローが去った後には、ニュースターが誕生する。そう思わせる5日の試合だった。野村投手が1イニングで降板した後に、2番手としてマウンドに上がったのが、ドラフト3位ルーキーの滝田投手だった。

北海道出身のサウスポー。寿都高時代には甲子園出場はなく、地元の星槎道都大へ進んだ。6人きょうだいの5番目。小さなころから母の美智子さんが女手一つで育ててくれた。大学3年の春に、母が急死した。53歳だった。

プロになって母に楽をさせてあげたい。そう思っていた滝田投手は野球を続ける意味がなくなりかけた。落ち込む滝田投手に、大学の二宮至監督から「プロをめざして、契約金で立派な墓を建てろ」と発破をかけられた。

再びプロをめざそうと決意した滝田投手。そこに転機が訪れた。母との別れから3か月後。プロのソフトバンク3軍との交流戦に登板した。6回を2安打無失点に抑え10奪三振。この好投で注目度が増した。

昨年のドラフト会議で広島から3位指名を受けた滝田投手。亡き母への思いを胸にプロ入りを果たした。

そして今月5日のプロ初登板。野村投手の後を引き継いだ滝田投手は二回から登板。無死一、二塁のピンチを背負うが、ここから三者連続でアウトを取って無失点で切り抜けた。

150キロ前後のストレートにスライダー、スプリットを交えて、三回は三者凡退に。四回に味方打線が2点を先制してくれた。心強い援護だった。五回に1点を返されたが、最少失点で切り抜けマウンドを下りた。4回1失点。2安打、4四球を与えたが、要所を締めた。

チームは3-1で逃げ切り勝ち。滝田投手にとって、うれしいプロ初勝利となった。去る先輩のために負けられない一戦だった。亡き母のために立派なピッチングをしたかった。滝田投手は去る先輩と天国の母へ捧げる1勝となった。

ヒーローが去る時には、新たなヒーローが登場する。滝田投手の来季のさらなる活躍が楽しみだ。

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