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風待ち日記

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水無月のほとりで風を待つ、いつかその日が来るまで
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#夏

レース編みの光を浴びて

レース編みの光を浴びて

午後の光というのは、どこか穏やかなようでいて情熱を秘めていたりするので、なんとも好ましいなあと思う。

桜が散ったあとの季節の太陽の光は、春にしてはやや強すぎて、夏というにはまだまだ未熟だけれど、私にはちょうどいい。やさしくてほがらかでさわやかで。風がぬるくて気持ちがいい。木かげがひんやりしていて気持ちいい。

大体、季節というものは総じてたちが悪い。季節は私の手をとって巧みにエスコートし、心底楽

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オレンジの香り

オレンジの香り

このまえの週末、家にオレンジジュースがあったのでひさしぶりに飲んでみた。

紙パックにストローを突き刺し、ちう、とぬるいジュースを吸い込むと、オレンジのみずみずしい甘さの後ろにちょっぴり苦味を感じて美味しかった。私はなぜだか、りんごジュースよりオレンジジュースの方がどこか少し大人びている気がする。昔からずっと。

オレンジジュースを飲むと、私は江國香織さんの小説「きらきらひかる」を思い出す。

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ポロシャツのぬくもり

ポロシャツのぬくもり

私はプールがきらいな子どもだった。みんなは6月から始まるプールの授業をとても楽しみにしていたけど、私はいやでいやで仕方なかった。

私はとても痩せっぽちの女の子だったので、晴れの日はともかく、雨の日のプールの低い水温にはとても耐えられず、いつも唇を紫色にしてぶるぶる震えながら水に入っている小学生だった。友達に「大丈夫?」と心配されて「うん」と返しはするけれど、実は寒くてたまらず、しれっと親友の女の

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夏色のひかり

夏色のひかり

大学3回生の夏を迎えている。

3回生になってから演習の授業が圧倒的に増えたので、みんなひいひい言いながらレポートや発表資料を作成していて、それを見て私もなんとかがんばらなきゃと思えるのだから、仲間の存在はとても大切だと思う。

そして「卒論どうする~?」というような話もちらほら耳にするようになってきた。どの先生の研究室に所属するか、どんなことをテーマに卒論を書くかといったことを、みんな少しずつ考

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