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ロボットと哲学

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「SFにおけるロボット」という観点から「人間という存在」について哲学的な考察を試みました。小説を中心としたロボットに関するSF作品の紹介と哲学思想の概説が中心です。SF好きも哲学…
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#小説

ロボットと哲学④人間の行動規範

ロボットと哲学④人間の行動規範

「三原則」と人間 前回はアイザック・アシモフの小説に登場する「ロボット工学の三原則」を取り上げたが、ここで人間の思考や意思を制約するものは存在するのかという問題に突き当たった。ここで再び「ロボット工学の三原則」を参照しよう。

第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなけ

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ロボットと哲学③ロボット工学の三原則

ロボットと哲学③ロボット工学の三原則

前回

 皆さんはアイザック・アシモフという人物をご存知だろうか。彼はアメリカの科学者兼作家であり、SF界のビッグスリーの一角をなす人物である。その中でも今回特に着目すべきは、彼の小説内に出て来る「ロボット工学の三原則」である。なお、ロボット工学(robotics)と言う語はアシモフの小説が初出である。

ロボット工学の三原則ロボット工学の三原則
第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。ま

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ロボットと哲学②道徳と実存

ロボットと哲学②道徳と実存

前回は「ロボット」という語の語源について紹介し、四原因説に従って人間とロボットについて考察したが、今回は「目的性」について別の角度から論考することにより、人間とロボットの存在について再度考察する。

カントの目的論 イマニュエル・カントは人間の理性を「純粋理性」と「実践理性」に分けて考えた。前者は合理的思考能力、後者は善や道徳に関する理性である。純粋理性に関する問題は、量子論や脳科学との関係性から

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