堂 慈音

諸々移行予定です。 当ブログはAmazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

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マガジン

  • 日記

  • ロボットと哲学

    「SFにおけるロボット」という観点から「人間という存在」について哲学的な考察を試みました。小説を中心としたロボットに関するSF作品の紹介と哲学思想の概説が中心です。SF好きも哲学好きも楽しめるような構成になるように心がけております。

  • 経済原論概説

    初学者向け。経済原論、あるいは経済学に触れてたことのない方向けのコンテンツ。経済学全9回に渡り近代経済学(ミクロ・マクロ経済)とは対をなすように発展してきた経済理論を紹介し、またその方法論を用いて近現代の日本・世界の経済が抱える問題について解説する。

最近の記事

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短編小説『紫陽花』

1  私は現在、システムエンジニアとして生計を立てている。「上」の指示どおりに二進数の配列を増大させ、その対価として報酬を得ている、という訳である。情報通信技術の世界にも哲学的深淵は存在するのだろう。しかし、そんなことは私には関係がない。必要なのは、「YES」か「NO」か、「TRUE」か「FALSE」か、「1」か「0」か、それだけである。実に単純な話だ。自分の生み出した配列が、結果的に社会にどの様な影響を及ぼしているのかは、私の知るところではない。世の中は私の理解が及ばないこ

    • 書籍紹介『組織の経済学』

      0.はじめに 先日、専門書読書会というものに参加しました。 参加者が各々専門書を持ち寄り紹介、それについて質疑や感想を共有するという形式でした。自分の知らない世界についても知ることができたり、会が終わった後の雑談も話題が様々な分野に広がっていったりと、非常に楽しい時間を過ごすことができました。  読書会に向けては、紹介用のメモを作成しました(アドリブで話すのが苦手なため)。その甲斐あってか、多くの方に興味を持って頂くことができました。このままメモを破棄してしまってもよかっ

      • 福田節郎『銭湯』を読んでの感想、あるいは無意味な文章について

        「07月31日までに記事を書くことで連続投稿を3ヶ月に伸ばすことができます。今月もnoteを書いてみませんか?」 昨日、久方ぶりにnoteにログインすると、こんな通知が届いていた。先々月にnoteを再開したばかりだというのに、この体たらく。「継続は力なり」という言葉はよく耳にするが、この点において私はとことん無力なようである。しかし、そんな泣き言をぼやいてみたところで何も変わることがない。どんな形であっても、継続するほか今の私に施せる手段は存在しないのだ。  そんなこんなで

        • 孤独な独身男性は「しあわせバター」味のカップラーメンで幸福になり得るのか

           ファミリーレストランに行くと、子連れの家族やカップルがやたらと目につくようになった。おそらくそれは、私が他人とのつながりを求めているせいであろう。要するに、孤独なのだ。村上春樹の小説にも、孤独な独身男性が登場するが、大抵の場合、彼らは何かしらの思い出を大切に胸に抱きながら、その温もりと共に生きている。一方で、私には大切に抱くべき思い出も特に持っていない。そういう意味では、彼らの孤独よりも、私の孤独のほうがより実質的な孤独と言えるだろう。仕事も在宅勤務が中心となり、平日に人と

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        短編小説『紫陽花』

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        記事

          2023年ゴールデンウィークの思い出 あるいは「本来の私」と「公的な私」について

          有り余っていた有給休暇を使用することで、今年のゴールデンウィークは11連休となった。泊まりがけの旅行などはしなかったため、連休中に珍道中的出来事も、冒険譚的出来事も起こらなかった。それは、単なる休日が11日連続で存在していただけであった。 「そんなに連休があるのに、旅行に行かないなんてもったいない」と思う方もいるかもしれない。そう思うのは自由だが、私は私の過ごしたいようにこの連休を過ごしたまでである。何も泊まりがけで旅行に行く義務は無いのだ。 そうは言っても、日帰りの旅行に

          2023年ゴールデンウィークの思い出 あるいは「本来の私」と「公的な私」について

          ロボットと哲学⑦決定論と自由意志・終わりに(ロボットと哲学と人間)

          前回は構造主義の立場から、換言すれば私たちの外側から人間やロボットについて考えた。今回は自由意志に対して懐疑的な立場を取る理論を通してロボットと人間について考察する。 ニュートン力学 初期条件が与えられれば、それ以降の運動は方程式によって一意的に決定付けることができると考えられる。現在の状態が分かっていれば将来を完全に予測することができるという事であり、このような考えを決定論と呼ぶ。 決定論を最初意に定式化したのはポール=アンリ・ティリ・ドルバック(1723-1789)であ

          ロボットと哲学⑦決定論と自由意志・終わりに(ロボットと哲学と人間)

          ロボットと哲学⑥構造主義と労働(Robota)

          前回  19世紀から、フィールドワークによって様々な民族の社会や文明を研究する文化人類学が発達した。文化人類学者であるレヴィ=ストロース(1908-2009)は、ソシュールの考え方などからの影響を受け、「主体の思考や行動は構造(社会)によって規定される」と考えた。このような考えは構造主義と呼ばれる。第2回で触れたサルトルの「実存は本質に先立つ」という実存主義的な考えとは対照的である。 アルチュセール ルイ・アルチュセール(1918-1990)学校やメディア等を国家のイデオ

          ロボットと哲学⑥構造主義と労働(Robota)

          ロボットと哲学④人間の行動規範

          「三原則」と人間 前回はアイザック・アシモフの小説に登場する「ロボット工学の三原則」を取り上げたが、ここで人間の思考や意思を制約するものは存在するのかという問題に突き当たった。ここで再び「ロボット工学の三原則」を参照しよう。 第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。 第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、与えられた命令が第一条に反する場合は、この限りではない。

          ロボットと哲学④人間の行動規範

          ロボットと哲学③ロボット工学の三原則

          前回  皆さんはアイザック・アシモフという人物をご存知だろうか。彼はアメリカの科学者兼作家であり、SF界のビッグスリーの一角をなす人物である。その中でも今回特に着目すべきは、彼の小説内に出て来る「ロボット工学の三原則」である。なお、ロボット工学(robotics)と言う語はアシモフの小説が初出である。 ロボット工学の三原則ロボット工学の三原則 第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。 第二条 ロ

          ロボットと哲学③ロボット工学の三原則

          ロボットと哲学②道徳と実存

          前回は「ロボット」という語の語源について紹介し、四原因説に従って人間とロボットについて考察したが、今回は「目的性」について別の角度から論考することにより、人間とロボットの存在について再度考察する。 カントの目的論 イマニュエル・カントは人間の理性を「純粋理性」と「実践理性」に分けて考えた。前者は合理的思考能力、後者は善や道徳に関する理性である。純粋理性に関する問題は、量子論や脳科学との関係性から考える方がより建設的であるため、今回は深く扱わないこととする。これは、人間の認識

          ロボットと哲学②道徳と実存

          ロボットと哲学①語源と目的性

          SF(サイエンスフィクション、スペースファンタジ-)は、映画・小説の中でも人気ジャンルであろう。SFは私たちに近未来の空想を与え、好奇心を刺激してくれる。しかし、SFが持つ力はそれだけにとどまらない。現実を現在の構造から外したり、ある部分を誇張したりすることで、我々の常識や価値観に疑いを向けさせたり、哲学的な命題を投げかけて来るのである。例えば、映画『猿の惑星』のような人類の文明が滅びた設定はお馴染みである。同シリーズでは白人社会を揶揄する様な作品等も見られる。その他にも、環

          ロボットと哲学①語源と目的性

          経済原論概説 番外編 置塩経済学における利潤率低下論+20世紀前後の欧米経済

          記事案内 はじめに  利潤率低下論とは、イギリスで発展した古典派の経済学、とりわけデイビット・リカードウ及びジョン・シュチュワート・ミルという人物の経済理論を支える支柱となっている。リカードウによって提唱された利潤率低下論は、「人口(生物個体数)の増加率は食糧の増加率を上回る」というトマス・ロバート・マルサスが『人口論』で展開した考えに強い影響を受けたミルによって継承された。  置塩経済学とは、置塩信雄というマルクス経済学の研究者として名高い日本の経済学者の名前に由来する。

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          経済原論概説 番外編 置塩経済学における利潤率低下論+2…

          経済原論概説 最終回

          記事案内 前回 現代社会  社会主義の形態が変容するように、資本主義もまた様々な変化が起こっている。冷戦終了後のアメリカは軍事技術の平和利用に乗り出し、IT産業をリーディング産業として電子メールやコンピュータなどの分野で業績を伸ばした。IT革命とも呼ばれるほどの技術革新が起こり、これらの技術を商取引やネットオークションなどに転用した。2001年のテロ事件を受け、経済成長のために低金利政策を行った。殊に住宅ローンの低金利化によって住宅需要が上昇し、個人投資家が増加した。同時

          経済原論概説 最終回

          経済原論概説 第8回 社会主義国家

          記事案内 前回  1917年、ロシア革命を契機にソビエトによって社会主義体制が建設された。この革命は1905年、血の日曜日事件に対して労働者のデモやストライキが行われた第一次革命に端を発する。1914年に第一次世界大戦に敗北すると、農業生産が低下し食糧危機が発生した。戦費調達のために貨幣や国債の発行が行われたことによりインフレも発生し、増税を行うことで貧窮化も進行した。「パンと平和を」というスローガンの下、労働者はソビエトを組織した。軍隊も労働者側に合流すると、1917年

          経済原論概説 第8回 社会主義国家

          「開発援助」を巡って

          「先進国」や「発展途上国」という言葉があるが、これは”先進国”側の主観的な価値観であり、先進や後進というのもその価値基準によって測られた相対的なものである。このような視点に立つと、本来推奨されるべき行為にも疑問を抱かざるを得なくなる。その一つがまさしく「低所得国に対する開発援助は妥当な行為であるか」という問題である。経済の発展はよいものであると解釈されており、故に開発援助は善良な行為であるとみなされているが、ともすればそれはイデオギーの押し付けになりかねない。この記事では開

          「開発援助」を巡って

          経済原論概説 第7回 日本近代経済史 後編

          記事案内 前回  IMF・GATT体制並びにケインズ政策は、1950~60年代に於いては有効に機能していた。しかしながら、1971年のニクソンショック発生を契機に金とドルの交換が停止されると、73年には変動為替相場制度が採用され、さらに同年にはオイルショックも発生した。国内では、ケインズ政策の効力が弱まり、スタグフレーションが発生した。スタグフレーション化では、インフレを容認した雇用政策は効力がなく、不況が続いた。  ケインズ型の有効需要政策が効力を失ってしまったのは、経

          経済原論概説 第7回 日本近代経済史 後編