さやのもゆ

日常の気付きや想いを、生まれ育った地· 奥浜名湖の風景に寄せてお届けします。 お時間頂…

さやのもゆ

日常の気付きや想いを、生まれ育った地· 奥浜名湖の風景に寄せてお届けします。 お時間頂けましたら、お読みくださいね。

記事一覧

僕も、アヤメを植えるー2024ーさやのもゆ

4月も下旬にはいった週末。 都田公園に出かける途中、車窓の景色を眺めていた母が思わず「あそこの家のアヤメは花が咲いてたのに、ウチのはマダなんだよ」と、口にした。 …

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奥浜名感懐ー湖北の初夏/さやのもゆ

連休の初日。 五月晴れの空のもと、淡い新緑も束の間に過ぎていった。 緑も深まってきた日中は、初夏の花が華やかに彩っていたが、日没と共に色を失くしていく。 そのな…

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さやのもゆ/読書会ノート      『おかげで、死ぬのが楽   しみになった』          遠未真幸/著    【not…

【掛川ほんわかブッククラブ読書会】 ー第2部・もくじー 『ランチ読書会』 『高校生が選ぶ掛川文学賞』授賞式&交流会 ーーーーー《ランチ読書会》ーー―――――― 掛川…

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さやもゆちゃんねる朗読エッセイ『密柑山の桜奇譚』

私さやのもゆは、生まれ育った遠州奥浜名湖地域の日常的な自然の風景を題材にエッセイを綴っております。 このたび、『さやもゆちゃんねる 朗読エッセイ』を開設。自作エ…

さやのもゆ
2週間前
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さやのもゆ/読書会ノート2024.1.20 『おかげで、死ぬのが楽しみになった』 遠未真幸/著    【note版】ー第1部ー

【掛川ほんわかブッククラブ読書会】 日時:2024年1月20日(土)10:00~11:30 場所:掛川中央図書館 会議室 〈テキスト〉 『おかげで、死ぬのが楽しみになった』    …

さやのもゆ
2週間前
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さやのもゆ      読書会ノート2024.1/20「おかげで、死ぬのが楽 しみになった」      遠未真幸/著 【概略版】 …

掛川ほんわかブッククラブでは、月に一度の読書会を、主に掛川中央図書館にて開催しております。 1月読書会は、年始めにふさわしい、特別企画の1日となりました。 テキ…

さやのもゆ
3週間前
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ホタルブクロの雫落ちてー初夏

私、さやのもゆは、生まれ育った遠州・奥浜名地域での、身近な自然や出来事をエッセイに綴っております。 この度YouTubeにて、自作の朗読エッセイの配信を始めました。 5…

さやのもゆ
1か月前
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朗読エッセイ サルトリイバラをさがして さやのもゆ

さやのもゆ、と申します。 生まれ育った奥浜名湖の日常風景を、エッセイにしたためております。 この度、自作エッセイを朗読したものを動画にて配信させていただきました。…

さやのもゆ
4か月前
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サルトリイバラを探して        さやのもゆ

年々暖かくなってきた、冬の季節。 今年の紅葉は、色づく前に葉っぱが散ってしまうもののようだ。 休日の午後になると、母とふたりで、都田川の堤防をウォーキングするのが…

さやのもゆ
4か月前
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富岡のコスモス       さやのもゆ

八月の終わり。 初秋に咲かせるコスモスの、種まきが始まる頃だ。 私の記憶のなかで、すぐに取り出せる引き出しには、常に一枚の写真がしまってある。 ―山の端に近い西日…

さやのもゆ
4か月前
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『破船』に見る村の民俗と作者・吉村昭について     さやのもゆ

『破船』吉村昭/著(筑摩書房、1982) 本書は、あらすじ等の先入観が無い状態で読み始めた。これが幸いして、物語の世界観とその展開に強く引き込まれていったのを記憶して…

さやのもゆ
4か月前
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朗読エッセイ『ツワブキの朝に』さやのもゆ

さやのもゆ
5か月前
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ツワブキ―石蕗―の朝に② さやのもゆ

我が家には、ツワブキ(石蕗)の鉢植えがある。フキの葉を深緑に小さくしたようなそれが、年がら年中、土も見えぬほどに生い茂っており、毎年秋になると花を咲かせる。母に…

さやのもゆ
5か月前
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浜松の象徴/松菱百貨店⑦さやのもゆ

僕は1942年(昭和17)、生まれ。現在は浜松市天竜区山東(やまひがし)に住んでいますが、中野町(なかのまち・浜松市東区)に生まれ育ちました。  僕が子供のころに知って…

さやのもゆ
5か月前
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阿多古川を遡る

暑い盛りの日々は、少しはなりを潜めたものの、まだまだ夏は続きそうだ。  この日は昼過ぎより、ドライブを兼ねてウォーキングに出掛けた。いなさ湖(都田川ダム)にしよう…

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ホタルブクロの雫落つ-初夏      さやのもゆ

五月。今年もまた我が家を囲む細葉の生け垣には、葉影の奥からホタルブクロの茎が細い竿をいくつも差しかけていた-蕾の重みにしなりつつ、日毎に花色を染め上げていきなが…

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僕も、アヤメを植えるー2024ーさやのもゆ

僕も、アヤメを植えるー2024ーさやのもゆ

4月も下旬にはいった週末。
都田公園に出かける途中、車窓の景色を眺めていた母が思わず「あそこの家のアヤメは花が咲いてたのに、ウチのはマダなんだよ」と、口にした。
母は、毎年のように忘れず、わが家のアヤメのことを心にかけている。
これには、大切な理由があった。

ちょうど4年前の、四月。
昼下がりの庭仕事から、家に入ってきた母は、こう言った。
「玄関に置いた鉢植えのアヤメが、蕾をもっているから、見て

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奥浜名感懐ー湖北の初夏/さやのもゆ

奥浜名感懐ー湖北の初夏/さやのもゆ

連休の初日。

五月晴れの空のもと、淡い新緑も束の間に過ぎていった。

緑も深まってきた日中は、初夏の花が華やかに彩っていたが、日没と共に色を失くしていく。

そのなかで、真昼の花々と入れかわる様にして、存在を現す花があることをー私はずっと前から知っている。

4月も終わる頃。
毎年のように、わが家のまわりは、匂いたつほどの強い香りに包まれていく。

その正体である花の存在を、姿かたちではなく、香

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さやのもゆ/読書会ノート      『おかげで、死ぬのが楽   しみになった』          遠未真幸/著    【note版】ー第2部ー

さやのもゆ/読書会ノート      『おかげで、死ぬのが楽   しみになった』          遠未真幸/著    【note版】ー第2部ー

【掛川ほんわかブッククラブ読書会】
ー第2部・もくじー
『ランチ読書会』
『高校生が選ぶ掛川文学賞』授賞式&交流会

ーーーーー《ランチ読書会》ーー――――――
掛川中央図書館にて開催した読書会のあとは、街なかを流れる逆川(さかがわ)のほとりにあるカレーのお店、「JAN」さんに移動。
スパイシーなカレーランチをいただきながらの、読書会の続きとなりました。
ここでも、読書会テキスト『おかげで、死ぬ

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さやもゆちゃんねる朗読エッセイ『密柑山の桜奇譚』

私さやのもゆは、生まれ育った遠州奥浜名湖地域の日常的な自然の風景を題材にエッセイを綴っております。
このたび、『さやもゆちゃんねる 朗読エッセイ』を開設。自作エッセイを朗読動画にお作りしての配信を始めました。
今回のテーマは、『桜』。
タイトルは『密柑山の桜奇譚』といたしておりますが、怖くも何ともありませんので、ご安心を。奥浜名湖の山の春をお楽しみください。

さやのもゆ/読書会ノート2024.1.20 『おかげで、死ぬのが楽しみになった』 遠未真幸/著    【note版】ー第1部ー

さやのもゆ/読書会ノート2024.1.20 『おかげで、死ぬのが楽しみになった』 遠未真幸/著    【note版】ー第1部ー

【掛川ほんわかブッククラブ読書会】

日時:2024年1月20日(土)10:00~11:30
場所:掛川中央図書館 会議室
〈テキスト〉
『おかげで、死ぬのが楽しみになった』
     著者:遠未真幸(とうみ・まさき)
         サンマーク出版、2023

初春の、花の季節。
平年より10日ほど早い白梅(しらうめ)も、匂い立っていた事と思います。
寒暖をくり返す日々のなか、体温調節にも気を

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さやのもゆ      読書会ノート2024.1/20「おかげで、死ぬのが楽   しみになった」      遠未真幸/著 【概略版】          

さやのもゆ      読書会ノート2024.1/20「おかげで、死ぬのが楽 しみになった」      遠未真幸/著 【概略版】          

掛川ほんわかブッククラブでは、月に一度の読書会を、主に掛川中央図書館にて開催しております。

1月読書会は、年始めにふさわしい、特別企画の1日となりました。

テキストは「高校生が選ぶ 掛川文学賞」受賞作『おかげで、死ぬのが楽しみになった』(遠未真幸/著、サンマーク出版)。

同日午後より開催の「掛川文学賞・授賞式&交流会」との、タイアップ企画です。

当日(1/20)は、作者・遠未真幸(とうみ・

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ホタルブクロの雫落ちてー初夏

私、さやのもゆは、生まれ育った遠州・奥浜名地域での、身近な自然や出来事をエッセイに綴っております。
この度YouTubeにて、自作の朗読エッセイの配信を始めました。
5分前後の朗読になりますので、ちょっとしたすき間時間などに、ご視聴くださいね。

朗読エッセイ サルトリイバラをさがして さやのもゆ

さやのもゆ、と申します。
生まれ育った奥浜名湖の日常風景を、エッセイにしたためております。
この度、自作エッセイを朗読したものを動画にて配信させていただきました。
お時間頂けましたら、ご視聴ください。

サルトリイバラを探して        さやのもゆ

サルトリイバラを探して        さやのもゆ

年々暖かくなってきた、冬の季節。
今年の紅葉は、色づく前に葉っぱが散ってしまうもののようだ。
休日の午後になると、母とふたりで、都田川の堤防をウォーキングするのが日課になっている。

12月初旬の日曜日のこと。この日は、いつものように河川敷に車を置いて、堤防の遊歩道を歩き始めた。だが、一週間前からは澪(みお)つくし橋を左に見て、数百メートル南のところで迂回しなければならない。
理由は、これより先で

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富岡のコスモス       さやのもゆ

富岡のコスモス       さやのもゆ

八月の終わり。
初秋に咲かせるコスモスの、種まきが始まる頃だ。
私の記憶のなかで、すぐに取り出せる引き出しには、常に一枚の写真がしまってある。

―山の端に近い西日が斜めに差し込んでおり、赤土の地面に三脚を立て、カメラを構える父を照らしている。帽子の影に表情が隠れてはいるものの、眩しそうに空を仰ぐ横顔は陰影深くーいつもの父が、そこにいた。

しかし、写真を撮った母は、こう言った。
「お父さんは、こ

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『破船』に見る村の民俗と作者・吉村昭について     さやのもゆ

『破船』に見る村の民俗と作者・吉村昭について     さやのもゆ

『破船』吉村昭/著(筑摩書房、1982)
本書は、あらすじ等の先入観が無い状態で読み始めた。これが幸いして、物語の世界観とその展開に強く引き込まれていったのを記憶している。まるで、文章を追いかけるように、一気に読み終えた感があった。
もっとも、これは同作の他著にも言える事だが、吉村文学は、一旦紐解いたら最後まで、読者を捕らえて離さない。その牽引力は一体処からくるのだろうか?
作者・吉村昭は、日本の

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ツワブキ―石蕗―の朝に② さやのもゆ

ツワブキ―石蕗―の朝に② さやのもゆ

我が家には、ツワブキ(石蕗)の鉢植えがある。フキの葉を深緑に小さくしたようなそれが、年がら年中、土も見えぬほどに生い茂っており、毎年秋になると花を咲かせる。母によれば「ツワブキは、神社の秋祭りの頃に花が咲く」という事だった。が、今年の夏が去年にもまして暑かったのが影響してか、十月半ばにお祭りが済んでも、花は咲かなかった。その頃は漸く、まだ青いつぼみが葉っぱの上に顔を出したばかり、茎も短いままであっ

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浜松の象徴/松菱百貨店⑦さやのもゆ

浜松の象徴/松菱百貨店⑦さやのもゆ

僕は1942年(昭和17)、生まれ。現在は浜松市天竜区山東(やまひがし)に住んでいますが、中野町(なかのまち・浜松市東区)に生まれ育ちました。

 僕が子供のころに知っていた松菱百貨店が、浜松の街で一番高いビルだった事は覚えてる。あの位の高さのビルって、他に有ったかどうか覚えが無いもんな。

 何でも、昔は海からも見えたそうだけど・・まあ、見えるだろうな、高さが30mもあるんだから。だから戦争の時

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阿多古川を遡る

阿多古川を遡る

暑い盛りの日々は、少しはなりを潜めたものの、まだまだ夏は続きそうだ。
 この日は昼過ぎより、ドライブを兼ねてウォーキングに出掛けた。いなさ湖(都田川ダム)にしようか、それとも天竜区の熊(くんま)地区に行って川沿いに遡る道を歩こうかと迷っていたが、都田町は藤淵橋の袂で、後者に決めた。道順的には国道を使って天竜区回りでアクセスする方が楽なのであるが、せっかく空がくっきりと青いのだから、高所からの眺望目

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ホタルブクロの雫落つ-初夏      さやのもゆ

ホタルブクロの雫落つ-初夏      さやのもゆ

五月。今年もまた我が家を囲む細葉の生け垣には、葉影の奥からホタルブクロの茎が細い竿をいくつも差しかけていた-蕾の重みにしなりつつ、日毎に花色を染め上げていきながら。しだいにふくらかな花の形をととのえていく姿を見るにつけ、近いうちに静かに弾けて、花びらの縁をちょっぴりつまんで咲くところを想像しては、その日を心待ちに過ごして迎えた朝であった。

 色づき始めた頃の蕾は朱を筋状に差した茜色をしていたのだ

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