『破船』に見る村の民俗と作者・吉村昭について さやのもゆ
『破船』吉村昭/著(筑摩書房、1982)
本書は、あらすじ等の先入観が無い状態で読み始めた。これが幸いして、物語の世界観とその展開に強く引き込まれていったのを記憶している。まるで、文章を追いかけるように、一気に読み終えた感があった。
もっとも、これは同作の他著にも言える事だが、吉村文学は、一旦紐解いたら最後まで、読者を捕らえて離さない。その牽引力は一体処からくるのだろうか?
作者・吉村昭は、日本の歴史上のさまざまな人物または事物に焦点を当て、重厚な記録文学作品に結晶した数々の