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劇評

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主に石川県金沢市での、演劇・ダンスの観劇記録です。
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#劇評

(劇評)吐かれる息が安堵となるように

(劇評)吐かれる息が安堵となるように

演芸列車「東西本線」『窒息』の劇評です。
2024年6月30日(日)15:00 金沢21世紀美術館シアター21

演芸列車「東西本線」による公演『窒息』(作・演出:西本浩明)は、現実に起きた「京都伏見介護殺人事件」を題材にしたフィクションの作品である。2006年2月、当時54歳の男が生活苦から、86歳の認知症患者の母親の首を絞めて殺害した。母を殺害後、男も包丁で自殺を図ったが未遂となった。男は承諾

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(劇評)本物を定義することは難しいが

(劇評)本物を定義することは難しいが

劇団ドリームチョップ「プロゲキ!ドリームチョップLIVE」プロゲキ!6・16『Authentic(オーセンティック)』の劇評です。
2024年6月16日(日)14:00 DOUBLE金沢

2023年4月から始まった、演劇初心者にも観やすい短編演劇を複数上演する『プロゲキ!』も2年目を迎えた。本日の『Authentic』は2年目の2回目の公演である。Authenticは、「本物の、真正の、正統な」

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(感想)まず自らが楽しむこと

(感想)まず自らが楽しむこと

(以下、筆者Xより転記した文章に追記)

演劇ユニット浪漫好『We are the Stage』鑑賞。なんとミュージカルである。浪漫好として初であるだけではなく、金沢の劇団でも珍しいことではないか。音楽を学ぶ二人のスタンスの違いを通して、表現とその意味、価値などに思いを巡らせる。考えは違えども、各々の表現したい気持ちが好演されていた。

音楽教室で学ぶ生徒(響:山崎真優、絃:高田滉己)と先生(橋本

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(劇評)恐怖があたりまえになる恐怖

(劇評)恐怖があたりまえになる恐怖

劇団暗黒郷の夢『まだ人間じゃない』の劇評です。
2024年4月28日(日)14:00 スタジオ犀

劇団暗黒郷の夢の第三回公演『まだ人間じゃない』は、フィリップ・K・ディックの同名小説をベースに、木林純太郎が台本と演出を手がけた作品である。

会場に入るとまず目を引くのが、壁につたう有刺鉄線だ。ところどころにぬいぐるみなどのおもちゃが刺さっている。舞台後方の中央辺りに通路があり、上手側と下手側は黒

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(劇評)四者四様、バラエティに富む

(劇評)四者四様、バラエティに富む

『プロゲキ!富山公演 vol.1 Sweet Revenge ー甘美なる報復ー』の劇評です。
2024年3月30日(土)14:00 Charlie's Studio

『プロゲキ!』は、井口時次郎の主催にて2023年4月より始まった、30分程度の短編演劇を複数上演するスタイルの公演である。演劇初心者にも生の芝居を楽しんでもらいたいと、趣向を凝らし、金沢市内中心部のライブハウスにて上演を重ねてきた。

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(劇評)あなたがいてこその、私

(劇評)あなたがいてこその、私

劇団ドリームチョップ「プロゲキ!ドリームチョップLIVE」プロゲキ!12・17『vs X.(バーサスエックス)』の劇評です。
2023年12月17日(日)11:00 DOUBLE金沢

2023年4月から隔月で開催されてきた「プロゲキ!」は今回で5回目となった。30分程の短編演劇を複数上演する、演劇初心者も楽しめる公演を目指している、公共交通機関で訪れられる場所、学生も来場しやすい日曜の昼公演、と

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(劇評)百万石演劇大合戦 予選公演D

(劇評)百万石演劇大合戦 予選公演D

「いしかわ百万石文化祭2023」参加事業として、金沢市民芸術村にて「百万石演劇大合戦」が開催された。これは上演時間が30分以内の短編演劇のフェスティバルである。金沢市民芸術村は金沢市民の創作の場であるが、今回の「いしかわ百万石文化祭2023」を機に、県外の団体にもその場を開放し、全国から演劇祭への応募を受け付けた。百万石演劇大合戦実行委員会による選考を経て選ばれた、北陸6団体、全国6団体が、3団体

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(劇評)百万石演劇大合戦 予選公演C

(劇評)百万石演劇大合戦 予選公演C

「いしかわ百万石文化祭2023」参加事業として、金沢市民芸術村にて「百万石演劇大合戦」が開催された。これは上演時間が30分以内の短編演劇のフェスティバルである。金沢市民芸術村は金沢市民の創作の場であるが、今回の「いしかわ百万石文化祭2023」を機に、県外の団体にもその場を開放し、全国から演劇祭への応募を受け付けた。百万石演劇大合戦実行委員会による選考を経て選ばれた、北陸6団体、全国6団体が、3団体

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(劇評)百万石演劇大合戦 予選公演B

(劇評)百万石演劇大合戦 予選公演B

「いしかわ百万石文化祭2023」参加事業として、金沢市民芸術村にて「百万石演劇大合戦」が開催された。これは上演時間が30分以内の短編演劇のフェスティバルである。金沢市民芸術村は金沢市民の創作の場であるが、今回の「いしかわ百万石文化祭2023」を機に、県外の団体にもその場を開放し、全国から演劇祭への応募を受け付けた。百万石演劇大合戦実行委員会による選考を経て選ばれた、北陸6団体、全国6団体が、3団体

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(劇評)百万石演劇大合戦 予選公演A

(劇評)百万石演劇大合戦 予選公演A

「いしかわ百万石文化祭2023」参加事業として、金沢市民芸術村にて「百万石演劇大合戦」が開催された。これは上演時間が30分以内の短編演劇のフェスティバルである。金沢市民芸術村は金沢市民の創作の場であるが、今回の「いしかわ百万石文化祭2023」を機に、県外の団体にもその場を開放し、全国から演劇祭への応募を受け付けた。百万石演劇大合戦実行委員会による選考を経て選ばれた、北陸6団体、全国6団体が、3団体

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(劇評)トロフィーは贈れなくとも、声援を

(劇評)トロフィーは贈れなくとも、声援を

劇団ドリームチョップ「プロゲキ!ドリームチョップLIVE」プロゲキ!10・22『トロフィー』の劇評です。
2023年10月22日(日)14:00 DOUBLE金沢

『プロゲキ!』の会場に「予約席」が増えてきた。この予約席は、観劇後のみ予約できる「GREEN TICKET」制度によって指定されたものだ。このチケットは1人分の料金で2枚購入できて、予約の段階で座席を指定できる。つまり今回の予約席は、

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(劇評)人の思いの底知れ無さ

(劇評)人の思いの底知れ無さ

劇団ドリームチョップ「プロゲキ!ドリームチョップLIVE」プロゲキ!8・27『怪談』の劇評です。
2023年8月27日(日)17:00 DOUBLE金沢

2023年4月から隔月で上演を始め、今回で3回目となる「プロゲキ!」である。「もう3回?」と驚く。だが、「まだ3回」でもあるだろう。「プロゲキ!」は演劇初心者でも観やすい、30分程度の短編劇を複数作上演する、というコンセプトの元に開催されている

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(劇評)人生のいつどこでだって夢は持てる

(劇評)人生のいつどこでだって夢は持てる

劇団ドリームチョップ「プロゲキ!ドリームチョップLIVE」プロゲキ!6・11『曲がり角の向こう側』の劇評です。
2023年6月11日(日)14:00 DOUBLE金沢

劇団ドリームチョップ「プロゲキ!ドリームチョップLIVE」(以下「プロゲキ!」)は今回の公演で2回目となる。演劇初心者でも観やすい、30分程度の短編劇を3作品上演する、というコンセプトは第一回と変わらない。会場も前回と同じ、公共交

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(劇評)内輪から一歩はみ出して

(劇評)内輪から一歩はみ出して

劇団ドリームチョップ「プロゲキ!ドリームチョップLIVE」第一回公演『井口時次郎の場合、』の劇評です。
2023年4月16日(日)14:00 DOBLE金沢

劇団ドリームチョップ「プロゲキ!ドリームチョップLIVE」(以下「プロゲキ!」)のプレ公演を鑑賞して、「プロゲキ!」に賭ける井口時次郎の思いについて、先に書いた。

劇団の稽古場でのプレ公演を経て、音響(長山裕紀)や照明(林怜奈)、映像(高

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