猫のいるテレワークが普通になって1年以上経った

平日は実質、一人暮らし状態だったのだが…

今のマンションに引っ越してきたのは2年半ほど前。ちょうどコロナの流行る1年前だった。猫を迎え入れてのんびりとした生活を始めようと、せわしい都心から少し離れたところに引っ越した。夫は通勤に時間がかかるが、鮨詰め状態の電車よりは時間がかかっても座って通勤できるほうが身体が楽だと言って、非常に満足そうだった。歩いて行ける範囲にスーパーもホームセンターもあり、役所や図書館もある。今まで住んだ土地はどこもそれぞれに良いところがあったが、現在住んでいるところはかなり住み心地が良い。部屋が少し狭いが、平日の日中は私ひとり+猫の生活なので、これで十分だと夫婦合意の上で引っ越しをしてきたのだった。

が、去年の年明け頃から事情が変わった。夫のテレワークが始まったのである。それまで平日の日中は私と猫だけ、狭い部屋でも一人暮らし状態だと思えば全く問題がなかった。寝室側にスペースはあるが、仕切りをとってしまうとほぼワンルームの我が家に、プライベートスペースは皆無と言っていい。この家で人間2人+猫1匹、朝から晩まで24時間ほぼ365日一緒に生活することになったのである。

二人では少し手狭なマンションで、テレワーク

正直、2人で生活するにはかなりコンパクトな(手狭な)マンションなのである。リビング(と言っていいのだろうか)のソファテーブル以外に机も椅子も置いていないし、書斎なんてものは当然存在しない。我が家で空間があるとしたら寝室だが、仕切りを取り払っていると丸見え状態。仕切りをしていても向こうの音は筒抜けである。

果たしてこんな状況で仕事ができるのだろうか?

結論から言うと、できたのである。もうかれこれ1年半、我が家では常に夫が実質ワンルーム状態の家の寝室側でテレワークをしており、リビング側で私は本を読んだり宝塚を見ていたりする。二人の距離は、およそ7m(自分の歩幅で測ったので誤差はあると思うが)。

我が家のテレワークは、定年後の夫婦状態?

Twitterやウェブニュースを見ていると「テレワークによる家庭内問題」についての話題が定期的に浮上してくる。同居人がいる状態のテレワークで効率が落ちた、生活音が気になって集中できない、育児との両立ができなくなった等、家族構成や住んでいる場所、家の作りなど、「問題」の原因は様々なようだ。

我が家に関して言えば子供がいないので、仕事と育児の両立の必要がない。専業主婦とテレワークの夫、という時点で条件はかなり良い方なのだと思う。とはいえ書斎がないので、「仕事をしている人と、仕事をしていない人」が常に同室している状態である。24時間、ほぼ365日、夫婦が顔を合わせ続けている状態ーーこれって、定年後の夫婦の姿なのでは?

我が家の「パーソナルスペース」

どのような条件にも共通しているように感じるのが、パーソナルスペースの問題である。さて我が家の場合、24時間365日、文字通り「ひと部屋」で二人が生活することになる。プライベートタイムであれば、パーソナルスペースは考えなくても良いかもしれない。だが平日の日中の殆どを、我が家は「オフィス」として考えなくてはならなくなる。まずはオフィス作りをしなければならない。

来週からテレワークになる、と決まったその日にネットでワークデスクセットを購入した。大きなものではない。週末に届き、その日のうちに組み立て、リビングから一番遠い寝室側の壁沿いにくっつける形で設置した。

寝室側で働いている夫は、壁に向きある形で仕事をしているのでリビング側は全く見えていない。リビング側の私から夫の様子は見えている状態である。9時から18時まで勤務の場合(実際にはこの通りではないが)、お昼休みの1時間を除いては、私から話しかけることは極力しないようにしている。夫から話しかけられる時は、話しても良い、というタイミングなのだと思って喋る。朝、その日一日のスケジュールを報告し合い、今日はウェブ会議が何時からあると聞けばできる限り時間を合わせて日用品を買いに行ったり、その時間家にいるときは極力静かに過ごせること(新聞をめくる音はマイクで拾われやすいので、ヘッドホンをして大人くし宝塚を見ていた方が良い、ということを最近学んだ)をする様にしている。稀に私の方で用事がある時は、夫の食事の用意や掃除などを済ませて家を出る。

ウェブ会議中の夫の声はかなりうるさく感じてしまう。電車の中の通話が不快感じるのは、会話が断片的にしか聞こえなくて内容が理解できないから、という話を聞いたことがあるのだが、ヘッドホンを使用したウェブ会議もこれに該当する。仕事の話だし、聞かない様にはしているが、耳に入ってしまうのは仕方がない。その間は家を出るか、こちらもヘッドホンをして聞かない様にすれば良い。

干渉しないことで、パーソナルスペースを確保する

私は専業主婦なのだが、家事全般が「仕事」という認識を夫婦で持っている。そのため、私は私で「仕事」を進めれば良いわけで、「仕事」さえちゃんとできていれば他の時間は何をしても良い、ということになっている。

お互いの存在を常に背中に、視界に、物音に感じ続けていながら、お互いの行動については一切干渉しない。よくよく考えてみると、家で過ごす土日もそんな感じのことが多い。私は寝室側で本を読んでいて、夫はリビング側でテレビゲームをしている。夫が家でネットショッピングをしている間、私は図書館へ行っている…お互いに「自分の時間」を干渉し合わない様にしているのは、平日も休日も同じなのだ。

我が家は完全に仕切られたパーソナルスペースというものを確保しにくい。住み初めの頃からそうであったため、いつの間にか「お互いに干渉しないことでパーソナルスペースを保つ」ということを知らない間に身につけていたようだ。

夫に、私がいることによる「テレワークのストレス」がないか、聞いてみた

出勤は多くて週2回。出勤しない週もある。圧倒的にテレワークの方が多い夫に、家で仕事をする上でストレスや不満がないかを聞いて似たところ、「オフィスより家の方が静かで集中できる」とのこと。

夫と同じオフィスで仕事をしていた時のことを考えてみる。半径1mほど離れたところには同僚がいて、斜め向かいでは電話が鳴り、後ろの方でコピー機が音を立てている。少し離れたフリースペースでは資料を見ながら2、3人が話し合いをしていて、作業を始めようとしたらデスクの電話が鳴る。「今週中でとお願いしていた案件、スケジュールが変更になってしまったため申し訳ないのですが至急今日中に仕上げていただきたいのですがーー」、そんな内線を、私は夫に掛けていた。
もちろん職種にもよるとは思うのだが、オフィス内での仕事が中心の夫の場合、生活音や集中力という面では、家の方が条件が良いのかもしれない。

仕事中は声をかけない様にしているのと、ウェブ会議中は静かに過ごす(あるいは家から出る)ことを徹底している事によってますます条件が良くなっているのだとしたら嬉しい。

主婦側のストレス

さて、主婦で「家事が仕事」の私側についてだが、昔よりストレスがなくなったように思う。

夫は常にデスクに座っている状態なので、家事を妨害されることもない。買い物の時間をちょっと気にしたり、静かにしなければいけないかなとは思うが、1日のスケジュールを朝決めてしまえば、それに従うだけなので負担ではない。

昼食は、あまり手をかけすぎないようにしている。去年の今頃は「夕食のような昼食」にしていた。肉を焼いて小鉢を並べ、白米はモリモリで…そんな生活をしていたら太ったので、現在は「和の朝食のような昼食」にしている。グリルで魚を焼き、もう一品は豆腐やもずく、めかぶなど。夕飯はこちらのnoteに記載の「基本セット」なので、食事を作るのが大変!ということはない。

三食ゆっくり、顔を合わせて話をしながら食べる。生活の上でのちょっとした困り事を相談したり、ちょっと嫌だなぁと思っていることをお互いすぐ伝える。疲れてそうだから明日話そうかな、と話したいことを先送りにすることによって我慢が続く=イライラが溜まることも無くなった。

何より、テレワークになってから夫のストレスが減ったためか、機嫌がよくなった気がする。これによって私のストレスは大幅に減った。仕事中、猫がずっと夫に寄り添っている効果かもしれない。猫様のパワーは偉大なのである。

猫のようにお互いの存在を認めながら、干渉しない

我が家はまるで猫が3匹生活しているようだな、と思う時がある。

我が家の猫は、あまり人間に干渉してこない。要求がある時は猛烈な自己主張をしてくるが、それ以外の時間は「我関せず」。干渉してこない代わりに、干渉しないで欲しい、と言っているようだ。

猫のように、「そこにいる」と存在を認めるだけで干渉しない。我が家のパーソナルスペース確保術は、猫が知らぬ間に教えてくれたことなのかもしれない。


今日も、夫は寄り添う猫を時々撫でながら、テレワークをしている。









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