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旧Twitterに公開した俳句 十句 (2019年:5/15)
違和感を残ししままに暮の春
猫の子や金目銀目で世をながむ
巴里哭けば聖母の泪春惜しむ
朧なる月し逃ぐやもあをき宵
料峭や鉛硝子の青き空
ゆるき風空あをくして花の雲
雫ゆれひかり撒きたる八重桜
風とほる軒で苺をあらふ朝
夏帯をときて念ぜむ〈帰りこよ〉
夏風邪で動けないのね、あらうれし
旧Twitterに公開した俳句 十句 (2019年:4/15)
違和感で引き返せない春の日日
花つぼむ粗忽にひらく色もよし
イエメンの子ら逃水にうづくまる
ぐにぐにと変な気持ちの虻孵る
春の日や屋根の上には虎一尾
入学を待ちつつそんなに眠るのか
キャンパスを不慣れにありく新入生
隣人と殺し合うこの星の春
逃れても逃れても鬼、春の果
しづかなるチャーチにひとり聖週間
新聞に掲載された短歌と俳句(2020年)
【新聞歌壇】
酒とゐて人と語らふ時間には
思ひもよらぬ地平を得しに
平成の向こうの昭和の映像は
ことなる国の歴史のごとし
息を吸ひ
鼻腔をとほる音にきく
身体のこゑと心のこゑと
今帰仁(なきじん)の
古酒(くーす)とアグー豚しゃぶを
島の塩(まーす)で夕陽といただく
詠みてなほ
納まりきらぬ緒ののびて
仕舞ひかたをばもとめさまよふ
春
2023年「短歌研究」誌上に掲載された歌、十八首
出張の明けて迎ふる週末の
博多の朝はゆるうはじまる
菅公の宮は常世にさきはへば
参りて檜皮たてまつりけり
立冬の宵を過ぐれば武蔵野の
月かげ冴えて窓のまばゆき
月だにも予告の通り蝕まれ
神なき此岸の夜はふかまる
月蝕てふ事件起こりし天空に
冬日のぼりて晴れわたる朝
川魚はすがたのままに皿に並み