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小さな歌集

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投稿作品、旅先での歌を中心に挽歌も含めて小歌集を集めています。
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記事一覧

池の鯉をひねもす眺むる如月 三首

池の鯉をひねもす眺むる如月 三首

春立ちぬ
 湧き水いまだ朝に冷え
  ゐねむるごとく鯉ゆらめけり

図書館の
 池に親子の錦鯉
  泳ぎかはして日影に映ゆる

とりどりの
 錦のまゝにねぐらへと
  鯉は往にけり春の夕ぐれ

製鉄マンM先輩への挽歌

製鉄マンM先輩への挽歌

鋼鉄を作りて国を栄えさせ
      人もりたてしリーダー逝きぬ

住友の本流を生き
      住友の人間として身罷られけり

本流の真ん真ん中を歩まれき
       技術堂々M先輩はや

(2018年)

「はだかの兎」十五首

「はだかの兎」十五首

家うつり知らぬ街なかありくほど長年もとめし本と出会へり

〈装丁家とならむ〉と告げし旧友の名を見つけたり詩集の奥付

神田へと田舎学生ひとり来て胸高鳴れば書店に入れず

あの門で〈アレクサンドリア四重奏(クァルテット)〉読みかへす娘(こ)と待ち合はせけり

古びたる教養主義の残り香の消えぬ時代に本としたしむ

美の道を京の館で極めけり愛書狂(ビブリオフィリア)生田耕作

御(み)言葉をしるす聖なる

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恩師Kさんに寄する挽歌

恩師Kさんに寄する挽歌

遥かなる日々に集ひて知恵絞り我を忘れし初等幾何学

おもねらず駆けて至れり〈ああ、おもろかったと言って死ねる人生〉

ひとり来てひとりで立ちき ひとり呑みひとり薨ぜり 人に道あり

(2018年)