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とことこショート

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5分で読めるショートストーリー
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#介護

当たり前なことは大事なこと

当たり前なことは大事なこと

『あー、やってらんない!』 
つい、思ってしまうこと。
家族が嫌いという訳ではない。
でも、私の中で沸々と湯が沸くように温度が上昇している。

『お義母さんの介護』
一年前に交通事故にあった。それ以来、右脚が不自由になって介護を要する事態となった。元々一緒に暮らしている。何をどうすれば良いのか意思疎通は取れていたのでそんなに苦痛ではない。
しかし、腰をかがめる動作が多く少し腰痛が気になり始めている

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マイボイス

マイボイス

「あれ? なんだか手に力が入らないな…」
買い物袋を持とうとしても掴みづらい。なんとか腕にかけ運んだ。
最近、物を持つ手に力が入らないことをが多くなり、気になっていた。
何かがおかしいと思いながらも、毎日、私は家族の世話をしていた。

手足のしびれ、脱力感がここのところずっと続く。
少し怖い気持ちを持ちながら、私は病院を訪れた。
精密検査の嵐を乗り越え、出た診断結果は、

筋萎縮性側索硬化症(AL

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カフェ・ソスペーゾ【後編】

カフェ・ソスペーゾ【後編】

ソフィアはアンドレアの話を静かに聞いていた。どこまで続くとも分からぬ戦争に心を痛めていた。辛く悲しい体験をしてきた人が目の前にいる…ソフィアは神妙な面持ちで聞き入った。

終戦後、アンドレアは無事に帰還した。心待ちにしていたマーラを強く抱きしめ、子供達と一緒に再会の喜びを分かち合った。戦場では味わえない人の温もりがそこにはあった。
長く苦しい時代が終わったのだ。
これからは希望を持って生活ができる

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カフェ・ソスペーゾ【中編】

カフェ・ソスペーゾ【中編】

イタリアの片田舎にあるカフェ・スペラーレ(希望)
店主マティがソスペーゾ(助け合い精神)で一人の女性を雇った。
その女性の名はソフィア。
ソフィアはマティに恩返しをしようと一生懸命働き、彼女本来の明るさを取り戻しつつあった。
ソフィアが店先で掃除をしていれば、彼女見たさに近所の野郎どもが集まってくる。
つかさず、「おはようございます」と笑顔いっぱいで挨拶すると、途端に彼らは蜂の巣を突いたかのように

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『お母さん、どうしちゃったの?』~キッチンドランカーになったわけ~

『お母さん、どうしちゃったの?』~キッチンドランカーになったわけ~

なっちゃんのお父さんとお母さんは、同い年で学生の頃からお付き合いしていた。
そして、二人とも同じ年に大学を卒業した。

お父さんは、成績優秀で上場企業の会社に入社。
お母さんは、大手の広告代理店に勤めたが2年後、結婚を機に寿退社した。

順風満帆な新婚生活。
お母さんは、とっても幸せな気分でお父さんに食事を作ってあげたり、
スポーツジムに行っては、身体を鍛えプロポーションを維持する。
洋服もハイブ

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必ず、想いは通じる

必ず、想いは通じる

その頃、茜は離婚をした。
『この世はみんな打算でできている。自分さえ良ければそれでいいのか?』と
絶望に苛まれていた。

仕事を探さなければ生きていけない。
子どもを残して死んではいけない。
そんなプレッシャーの中、ハローワークの職業支援を目にし、勉強しながらお給料がもらえるシステムを知った。
”ヘルパー2級講座” 
茜に迷っている暇などなかった。3ヶ月間介護のことを学び、就職に繋げていくというも

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認知症の大変さを知る

認知症の大変さを知る

私は40歳を過ぎてから介護ヘルパー2級の資格を取ってデイサービスで働いている。
人生100年時代…すごい世の中になったものだと不安にも似たようなものを抱えていた。
医学の進歩により、治らない不治の病だったものが早期発見で治ってしまうことも手伝って、人々も健康に意識を向けるようになったからだ。

私は少し、仕事に対するモチベーションが下がっていた。
お年寄りというのは、頭が正常な人でも同じ話を何回も

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