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極私的ジャズ銘盤選2021秋

いっちょ前に秋の陣とかゆうてますけどね、6月後期リリース盤から紹介していく感じなんですよ。ほならもう初夏の陣やないかゆうてね、サーセン。反省してまーす。の姿勢でもって。当初アナウンスしていたカリキュラム通りに全く授業を進めてない大学教授さんみたい、主宰の学部にもいましたよそういう雰囲気の方。もう人の事言える立場にありませんけれど。

※例によって、一度で読める分量には到底収まりません。少量ずつどうぞ。

〜第一部〜

再生時間「46分」でいきなり面食らってしまった貴方、オープニングナンバーだけで「46分」ですよ。悪いことは申しませんからそっと停止ボタンを。菊地成孔フォロワーはマスト。ジャケ写からおわかりのように、1曲1曲に古代文字?のようなモチーフが宛行われていて。ならば読み解いてやろうじゃないかと。どこまでが筋書き通りで、どこからがフリーハンドなのか。

サウスロンドン界隈に何やら面白い動きが。つまりマルチ奏者同士あるいは同じ移民出身同士で横の繋がりが非常に強く、ゆえに結託してクリエイター集団化しさらに声高らかに音楽を鳴らしていこうじゃないかと。実はこれアメリカ大陸においても顕著で、Soul Food Hornsはそのモデルケース足り得る逸材。そりゃ美味いモンに美味いモン合わせたら絶対美味いに決まってら。

新アルバム発売間近かと噂されるMocky、最近次々とリリースされるシングルそのどれも本当に素晴らしい。圧倒的様式美と映像美、現代ミクスチャー音楽の最高峰だと思います。「ジャズ」という小さい箱の中に匿ってしまうのはあまりに忍びない、それでも銘盤選なんて仰々しいこと謳っていますから問答無用でご紹介。

夏向きな選曲が続きますね、なんでかわかりますか、まだ6月リリース盤進行中だからですよ。マイッタネ。とはいえシカゴ音楽フリークなら知らぬ人はいないマルチプレイヤーDouglas Stuart、チルを纏いつつ時にスリリングなギタリストJeff Parkerのプレイもサイコーなこちら。芸事の真髄は「緊張と緩和」と申しますがまさに。4分間によくぞこれだけのドラマを詰め込んだ。

これも超夏仕様。エンドレスサマー!!それはともかく、おじぎの耳に留まった邦楽ネクストエイジ。リトグリなんかにも楽曲提供されている凄い方です。SSW兼プロデューサー、ゆえにこの余裕余白ある音像を生み出せる訳か。自身のルーツ音楽にゴスペルを挙げているのも納得、息遣いが全然ちゃうわ。最近の歌い手さんとは明らかに一線画しとるね。急におっさん口調。

所変わってこちらスウェーデンのマルチ奏者、彼の主戦楽器はトロンボーン。歌って踊れる?Tbプレイヤーと聞き真っ先に思い浮かべるのは同郷の雄・Nils Langren、ひょっとするとお弟子さんだったりするかも。NU-JAZZをはじめとする「縦ノリ」できるジャズサウンドは比較的早い時期から北欧で広まった印象、やや飽和気味でしたが近年また盛り返しつつあるのか。

スウェーデン繋がりでもう1曲。Junipのメンバー、アルゼンチン人の両親を持ちIndieフォークの文脈で語られることの多い人物ですが、フラメンコやボサノヴァにも造詣が深く。今作はまさにそれらが絶妙に調合されたサウンド。パルマの頭打ちをダンス音楽の4つ打ちに見立てるセンス。非常に有機的な波を生んでおり、激渋演出だと思います。ますます目が離せない。

新進のアルト奏者、コンテンポラリージャズ界隈に旋風を巻き起こすか。Baptiste Herbin、Patrick Corneliusがお好みの貴方には刺さる音色、フレージングではないかと感じます。ソロ前半で比較的スムースな展開が続くと一点、後半手数の応酬でガラッと空気を変える。丁度3分前後、あの瞬間にこうグーっと心を鷲掴みされる感触があった。いろんな曲調で聞いてみたい。

清水靖晃さんの無伴奏チェロを彷彿とさせますね。サックスソロの銘盤にはいろいろありますが、新しいページとして刻まれるであろう意義深い一枚だと感じました。程良いリバーブ感でJDの息遣いやアンブシュア等音のディテールを漏れなく感じ取れる、奏法のみならずテナーサックス解体新書的な味わい方でも長年楽しめる仕上がりになっているのではないでしょうか。

第一部のラストは、これもなんで秋口にご紹介してんだって話の銘盤です。そういえばコードレス編成だったなと後に気付くほど、歌心全開の一枚。夏の陣では尺の都合上、泣く泣くカットせざるを得なかった。本来この部で6月分を消化し切るはずだったのですが、無論叶いませんでした。作品レビューをすべき段落なのに弁解文のコーナーみたいになっちゃってますが。

〜第二部〜

7月リリースとの絶妙なグラデーションでお送りする第二部、と言ってもほとんどが6月盤な訳ですが。嫌ーな予感は脇に置いて、新進のトロンボーン奏者Rosie Turtonに注目してみましょう。晴天と荒天を表現したという組曲形式のEPで聴き応え十分、この清涼感がありながらずっしり重みのあるサウンドは新しい風を感じさせます。bandcampでも購入可。

銘盤の誕生。主宰はSpotify「Release Lader」を中心に、YouTubeのレーベル公式チャンネル等で補完する形でジャズ新譜のアンテナを張っております。今回いち早くBig Crown Records公式が彼女のナイスな1曲を届けてくれた。ビンテージソウルの質感の中にもトリップホップの香りが漂う、気が付くともう何周もこの曲ばかり聞いてしまうという恐ろしい中毒性。

どうか名前だけでも覚えて帰って下さい、フロリダ出身の41歳。この度、NYモダンエクスペリメンタルの老舗・RVNGから4ADレーベルへと堂々移籍。公式MVご覧頂ければよくわかりますが、サイケな世界観にさらに拍車がかかった感ありますよ。Prefuse 73フォロワーにはもうすっかりお馴染みになった彼ですが、遂に世界的ブレイクの予感か。

何の因果かこちらもBig Crown Recordsよりの刺客。フィンランド出身LA在住のラティーノソウルバンド、なるほどサウンドにもしっかり表れています。時折Squarepusher由来のよなドラムンベースが垣間見える瞬間もあり、またKamasiを彷彿とさせるコーラスワークも絶妙なスパイスになっている。非常にクロスオーバーな音作りだと感じました。

曲名はジョーヘンオマージュでしょうか、メロウなワルツナンバーで若干のお口直し。今回の秋の陣も長くなりますよ。御年54歳、好事家なら避けては通れない名手。長年の夫婦役Jesper Bodilsenが曲の世界観あるいは場面転換を力強くリードしており、非常に好印象。こう、フロントマンとサイドマンのパワーバランスが色濃く表れて面白いのもジャズの一魅力ではないかと。

さてお口直しは終わりだ、即刻キワモノ枠で読者様を混乱の渦に引き込む。ジャケからして皆さんが思い描くジャズ盤とは間違いなくかけ離れている、しかし主宰は敢えて異論を呈したい。本来、実験性こそがジャズなのだと。もうずーっとMark Turnerのターンで進行していきますし、そこに食らいつくGeraldのしなやかかつ予測不能なドラミングもたいへん素晴らしい。

本当にうっとりするサウンド、しかし対照的仕上がりのMV。この曲は是非映像付きで堪能頂くことを強くオススメ。Hiatus Kaiyote「Get Sun」で注目を集めたAuthur Verocaiをフィーチャー。これはあくまで推測ですが彼女の名前「Flor」はインドネシア・フローレス島(Homo floresiensis)から来ていて、自身のルーツを探る旅として「Sapiens」と名付けたのではないかと。

ゲーム音楽をボディミュージックとして鳴らそうというような彼らの姿勢に、主宰はティポグラフィカの再来を見た。Nicole McCabe、Logan Kaneは近年着実にプレゼンスを高めつつある新星。Louis Coleワークスがお好きな方なら是非彼らの動向を注目して追いかけてみて下さい、きっと幸せな気持ちになれると思います。オチが妙に観念的なのは特に意味ありません。

これも21世紀のリズム感。ジャケにこうデカデカと「どんな感じ?」なんて書くミュージシャンはHONNEかYAKULくらいのものかも。英ブライトンを拠点に活動。複雑そうに聞こえますが、16分音符をアクセントあるいはアーティキュレーションで絶妙に軸ずらししているのだと思います。この辺りは別稿EPIC DRUMS 00sで詳しく取り上げる予定ですので、どうぞお楽しみに。

ナッシュビルのインディレーベルAcrophase Recordsより新たな鬼才、現る。とはいえあれこれ調べてみたのですけど、なかなか情報が少ないのも事実。詳しい方おられましたら是非ご一報お待ち申す。いずれにせよJordan Rakeiらの登場以降明らかに潮目が変わってきたジャンル、まだまだ振れ幅が期待できそうですね。

第二部の締め括りはLAビートシーンの雄Alpha Pupから、絶妙な揺らぎ絶妙なシャープネスで語り掛けてくるサウンドをご紹介。ラップトップと人力の塩梅が本当に絶妙で、Prefuse 73をバンドサウンドで鳴らしてみると例えばこんな質感になるのかなあなんて妄想も膨らんでしまうほど。まだまだ6月盤が続きますよ。夏の陣の比じゃない長期戦を覚悟の上、第三部へどうぞ。

〜第三部〜

10年代ジャズ界隈のリハモブームをおさらいしてみた時に例えばStevie Wonder、Bee Geesらの再発見が話題になりました。20年代はSADE再評価の10年間となるのか。ポストRoy Hargroveの座を誰が射止めるのかという辺りも非常に重要なイシュー。Philip Dizackはその点、まだまだ日本での知名度は低いですがしかし底知れぬ可能性を感じさせるタレントの一人です。

まーた古参ジャズファンからお叱りを受けそう、こちらもAlpha Pup繋がりで攻めのピックアップ。サイケとミニマルドローンをWスープに仕立て上げ美味しく届けてくれるでお馴染み、Josiah Steinbrickの醍醐味が味わえます。「Oil Ghost」の指す世界観については正直掴みかねていますが、しかし確実にジャズのお作法を感じる1曲です。

先日「今夜のプレイリスト」でもピックアップしたこちら。今年、めでたく結成10周年を迎えた日本語ルーツミュージックバンドが遂におじきの耳に留まった。と言っても各メンバーの共演歴を見るに、これは只者ではない敏腕クリエイター集団と申し上げて差し支えないはず。4分弾きと素朴な日本語歌詞のこれ以上ないマリアージュっぷりに唸る。

もうサイコー以外の感情がない。ディズニー好きには説明不要、シャーマン兄弟不朽の名作が現代的解釈で蘇る。お膝下であるカリフォルニアの出身。Bruno Mars二世、ひとりマルーン5などと形容される彼のサウンドは軽やかでありながら懐にすーっと入り込んでくる感触があります。ジャズとの親和性も高いのがディズニー音楽の強力な武器。

夏の陣でも取り上げた彼、無論サイコーでしたので重ね打ちしていきます。モーダルな進行にしても、ヘミオラを彷彿とさせるポリリズム感覚にしても随所にアフリカ音楽のイズムが息づいていて。それでいて音場は非常に都会的な印象、この辺りのコントラストは本当に見事です。浜辺に白い花、墓標を前に撮影されたMVと、随所に死生観が漂う魅惑の1曲。

珠玉のトリビュート、しかもメドレー形式のアカペラコーラス。昨年3月に逝去したBill Withersのヒットソングが、5分間でお腹一杯味わえます。95年設立、メンバーチェンジを繰り返しながら続くカリフォルニアの老舗。Take6などと並び初学者にオススメしたいグループとして彼らの名を挙げるミュージシャンは決して少なくありません。ハマるなら今ですよ。

ラージアンサンブルの魅力が凝縮されたアルバム。Ingrid Jensen、Dayna Stephensの双頭クインテットを管弦楽団が煽り立てる。YouTubeではMead Witter Concert Hallで収録されたライブバージョンもご覧頂けますので是非。一口にラージと言えど様々フォーマットがあるのもジャズの魅力、聴覚だけでなく視覚にも訴えかけてくれる音楽であることを再確認できます。

こちらも夏の陣以来、二度目の登場。前作同様ラップトップライクな音像で迫ってくる楽曲ですが、前者が比較的生感を残した仕上がりだったの対し、今作ではMichael MayoやJacob Mannなどに代表されるミニマルなサウンド。ひょっとすると基本トラックはシンセ1台あるいはリズムマシン1台くらいで完結させているでしょうか。ラップトップ音楽も遂にここまで来たかと。

ファン待望のコラボ実現。THE CHARM PARKがリリックを乗せ、大橋氏が曲を手掛けています。これせっかくですから逆パターンも聞いてみたいところですよね。CHARMのサウンドに大橋氏が乗っかる。非常にライフサイズな良い音が聞こえてきそうです。この、俺が!俺が!にならず三位一体に溶け合える姿勢にジャズのismを感じた。「サウンドする」とはそういうこと。

augコードが絶妙なフックになってますね、14年から大阪を拠点に活動開始し中国やマニラ、フィリピンなどでの公演でも大きな注目を集めてました。アーバン・ポップとアジア地域の親和性の高さ、それは海に面しているからなのか、都会と農村部がグラデーションになっているためか。あるいは言語的要因か、ちょっとした訛りの違いでも楽曲の印象は大きく変わりそう。

〜第四部〜

James Taylorフォロワーはマストバイ。ただ聞いて下さいここへきてまだ6月分をレコメンドしている始末。これ多分大丈夫じゃないやつや。とはいえ楽曲に目を向けますと是非MVと照らし合わせお聞き下さい。ミラーボールは回ってますがしかし楽器隊の配置、どこかKamasi的世界観も纏っているか。聞けば聞き込むほどミクスチャー性が染み出てくるスルメ的1曲。

「Summertimeは7拍子が似合う」はジャズスタンダードあるあるの代名詞。主宰も大学時代追っかけていた先輩バンドで、しかと目撃。スリリングにも大味展開にも両対応してみせる、それが7拍子。今作では非常にウェットでミステリアスな方面に舵取りしてみせました。アルゼンチン北西部サン・ファンのミュージシャン。アフロ性が生み出す緊迫感あるサウンドをどうぞ。

例えばJohn Mayerの新譜『Sob Rock』でも顕著だった80sフィール。その波は無論ジャジーPOPにも押し寄せてくる訳で。直感的に縦ノリできてアガるサウンド、主宰イチオシポップメイカーStephen Dayがつぶさに流行を捉え自身の音楽性に昇華してみせました。Mayer Hawthorneフォロワーには特に強烈にプッシュしたい逸材ですね。リピート再生不可避の清涼感。

個人的に、7月リリース盤最有力はと聞かれたら問答無用でPeytonでした。テキサス州はヒューストン出身の23歳、主宰がStones Throwの虜になる決定打を与えてくれた将来有望株。夏の陣で取り上げたMNDSGNもレーベルメイト。真っ先に声の質感に圧倒される。細かなリバーブの有無によっても世界観を一変させられる、本当にこれからが楽しみな存在です。

オリジナルのリリースは1975年。まさかこの曲をチョイスしなおかつBeckをフィーチャーしてきますかね。Beckは本当に何でも鳴らせてしまうんすね。原曲の世界観を決して壊さずに、それでいて自身のサイケ性を楽曲に上乗せすることで瑞々しい新解釈を加える。本来カバーというものはこういう作法に則って繰り出されるべきものだというまさにお手本。恐れ入りました。

Alicia Keysの先へ行ける逸材。また主語が大きくなってますがどうか主宰の話を最後まで聞いてけろ。MVでの彼女の弾き姿をご覧下さい、これはもう完全にAliciaだと。彼女が築き上げてきた歴史に、Indy R&Bのコンテクストが乗っかり20年代のポストソウルはさらに先の景色を我々に見せてくれる。ゆっくり着実に行こう。「Slowly」の真意はズバリここじゃないかと。

さっきぶりのDolphin Hyperspace、鬼の即重ね打ちです。訳語を当てるなら「不和」「軋轢」でしょうか、しかし先程とは打って変わり4つ打ち主体で非常に爽快感がある。東京ザヴィヌルバッハが好きな方は刺さるサウンド。人力の質感は残しつつやはりシーケンスありきというか、PC画面で膨らんでいった音楽なのだろうなという感触は強い。要注目ユニットかも。

実に不思議なサウンドと音場。下地として匂うのはEDMあるいはドローン、そこにサイケあるいはトリップホップの上モノが乗っかっているか。結果的には、非常に有機的で時にジャジーな響きとしてアウトプットされている。ミクスチャー音楽と聞くとついロックの文脈に流れがちですが、ジャズ界隈でも近年、意欲的なサウンドが日の目を浴びつつある。

彼もまた台風の目となるかもしれない。今年に入りNir Felder、GotchそしてGilad Hekselmanと毛色の異なるギタリスト達と相次いで共演。何か音楽的な可能性/振れ幅を探る様子が見て取れ、今後力を入れて追いかけていきたいアーティスト筆頭に堂々名乗りを上げた。今や顔を合わせずに音源データのやり取りもスムーズに行える時代、思わぬコラボがこの先出てくるかも。

読者の皆様に衝撃のお知らせです。秋の陣、はおろか7月上旬リリースすら捌き切らないまま終了のお時間となりました。「秋の陣デラックス(仮)」として近日中に急遽追加稿を、しかも前後半の二段構成(!!)でお送りする予定。だって冬の陣で風呂敷畳まないといけないんですから、ここで積み残しを消化しないでどうするんですか。謎の逆ギレで〆。キレてないっすよ(??)。

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