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おとこらむ oto-column

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「音楽と鳥しんぶん」に連載されていたレコード研究家の音楽的日常のコラムが、noteマガジンでも登場!家人の夢の中で「あなたはレコードのマハラジャよ!」と美輪明宏さんに称賛された夏…
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#ピアノ

GREAT CHOPINZEES~ショパン演奏の秘かな愉しみ(トレイラー)

前回のレコードコンサート「レシェティツキの弟子たち」から約5年。昨日4/8(土)富士レコード社さんのお招きで開催させていただきました「GREAT CHOPINZEES~ショパン演奏の秘かな愉しみ」が盛況のうちに終了いたしました。
約二時間半、2回の休憩を挟みながらの長丁場でしたが、皆様リラックスして楽しんでいただけたようで、当日の朝までムービーを作りながらレコード選定に迷った甲斐がありました。ご来
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ピアニスト/ピアノ研究家の松原聡さんがベヒシュタインを弾きに来てくださいました

ピアニスト/ピアノ研究家の松原聡さんがベヒシュタインを弾きに来てくださいました

ピアニストであり、ピアノ研究家としても活動されている松原聡さんが、白金ピアノスタジオにベヒシュタインを弾きに来てくださいました。

松原聡さんはピアノ研究家として、様々なメディアで執筆活動をされている方なのでピアノについて大変お詳しく、逆にベヒシュタインのピアノの歴史についてたくさん教えていただきとても勉強になりました。

そして、実際に演奏もしていただいたのですが、松原さんの優しいタッチに、スタ

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ピアニストと戦争〜ショパン国際ピアノコンクールと悲劇の女流ピアニスト

ピアニストと戦争〜ショパン国際ピアノコンクールと悲劇の女流ピアニスト

ショパンの祖国であるワルシャワで、第1回ショパン国際ピアノコンクールが開催されたのは1927年。
世紀の大ピアニストであるアレクサンドル・ミハウォスキ(1851-1938)をアイコンに、J.ジュラヴレフとZ.ジェビエツキの両教授が、ショパン演奏の更なる繁栄を掲げてのスタートでした。
もう一つの目論見として、ポーランド・ピアニスト達を世界に発信したい、という想いがあったはずです。しかし、実際に優勝し

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アヴァンギャルドな元ベルギー王女   マリー・アントワネット・オーセナック・ド・ブロイの奏でる嫋嫋たるショパンの一部始終

アヴァンギャルドな元ベルギー王女   マリー・アントワネット・オーセナック・ド・ブロイの奏でる嫋嫋たるショパンの一部始終

マリー・アントワネット・オーセナック・ド・ブロイ王女(Princess Marie-Antoinette Aussenac de Broglie, 20 July 1883 - 31 October 1971)という、ポルトガルの貴族出身のピアニストがいた。ジャック・ド・ブロイ王子と結婚したことによって、1933年に離婚するまでのおよそ7年の結婚の間、王女となった。

オーセナック・ド・ブロイは、

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日本とワルシャワのショパンの1949年

日本とワルシャワのショパンの1949年

「眞木先生の音は可愛く激しく、独特な世界が聞こえる。まさに現代にピッタリ!」(綾戸智恵/ジャズシンガー)

ショパン没後100周年である1949年。戦後4年、世界は戦争の惨禍からの復興の最中にありました。ナチスの侵略によって壊滅させられたショパンの故郷ポーランドのワルシャワでは、このショパンの記念的な年に、戦後初「第4回ショパン国際ピアノコンクール」を開催し新しい時代の幕開けを行いました。(このコ

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ラヴェルと左腕のピアニスト

ラヴェルと左腕のピアニスト

 パウル・ヴィットゲンシュタインは、実業家カール・ヴィットゲンシュタインとレオポルディン・マリア・ジョゼファ・カルムスの四男としてウィーンに1887年に誕生。第一次世界大戦中に負傷から右腕を失い、左手のピアニストとして成功を収めたことで知られています。また、高名な哲学者ルートヴィヒ・ヴィットゲンシュタインの兄にもあたります。

 当時、ウィーンの上流階級であったヴィットゲンシュタイン家には、ブラー

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ショパンの孫弟子による伝説のノクターン

19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤⑤

ラウル・フォン・コチャルスキ(1885-1948, ポーランド )
ショパン「夜想曲第2番変ホ長調 作品9-2 (ヴァリアント付)」(1938年録音)

● ショパンの高弟カロル・ミクリにショパン伝統の継承者として育てられたサラブレットであるコチャルスキによる伝説的なSPレコード。聴き慣れないヴァリアント(装飾音)は、ミクリがショパン自身の演奏を聴い
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巷に雨の降る如く〜ドビュッシーのピアノ

巷に雨の降る如く〜ドビュッシーのピアノ

ビュッシーのショパン演奏を聴いたことのある者たちは、ハンマーを意識させない程のビロード・タッチと、溢れ出る泉のようなその響きを生涯忘れることが無かったという。それもそのはず、ドビュッシーはショパンの弟子であったフレーヴィル夫人にピアノを習っている。ドビュッシーの才能が、この夫人からショパン演奏の秘密を多く吸収していた事は容易に想像されるのである。
確かにドビュッシーのショパン演奏なんて想像しただけ

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19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤④ フランシス・プランテ

19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤④

フランシス・プランテ (1839-1934, フランス)
ショパン「練習曲 ハ長調 Op.10-7」(1928録音)
https://youtu.be/UOVs526XWJw

●ショパン自身のピアノ演奏を聴いたことがあるとされる唯一のピアニストによるショパンのレコード。この最晩年の演奏は、スイスの自宅までコロムビアが機材を運び込んだ甲斐もあり、愛用
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19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤③ モーリッツ・ローゼンタール

19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤③
モーリッツ・ローゼンタール(Moritz Rosenthal, 1862-1946, ポーランド)

●ショパンの弟子であるカロル・ミクリと、フランツ・リスト本人に学んだポーランド出身でアメリカで活躍した伝説のヴィルトゥオーゾ。若い頃はその超絶技巧的な演奏が過ぎて、評論家から苦言を呈されるほどでしたが、成熟するにつれて詩情溢れるショパン弾きとして、パハ
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19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤② ピアニストとしてのセルゲイ・ラフマニノフ

19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤②
セルゲイ・ラフマニノフ(Sergei Rachmaninoff, 1873-1943, ロシア)�
●現在、ラフマニノフは大作曲家として親しまれていますが、当時は超絶技巧のピアニストとして高い評価を得ていました。
当時のラフマニノフ作品は、スクリャービンやストラヴィンスキー、プロコフィエフなどの同時代作曲家たちに比べて、チャイコフスキーなど全世代に連な
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19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤① ウラディミール・ド・パハマン

19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤①
ウラディミール・ド・パハマン(Vladimir de Pachmann, 1848-1933, ロシア)
●ショパン存命中に生まれたピアニスト、ピアノの魔術師パハマンによるショパン「小犬のワルツ」の決定的名演奏です。
これのレコード、なんとパハマンによる前口上から始まります。
「最初は書いてある通りに、段々ゆっくりと弾いて、次はパガニーニのようなスタッ
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数多くの大ピアニストを輩出したレシェティツキ派を歴史的なレコードで辿る、音のドキュメンタリー・シリーズ

100年以上前に空気を振動させた音が、21世紀の空気をまた振動させ僕たちの耳に音楽を届けてくれる。レコードというのは非常に不思議なタイムカプセルです。クラシック(古典的)音楽という名称がつけられていますが、作曲された当時では最新の音楽だったわけで、現代とは全く別次元のライフスタイルの人たちによる芸術や娯楽だったのです。実際その当時の演奏家たちはどのように音楽を受け止めて、どのように表現をしたのか、

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ロシアの憂鬱・類を見ないデリケートなピアノタッチによる珠玉の名演奏



ロシアに生まれたニコライ・オルロフ(Nikolai Andreyevich Orloff [26 Feb.1892 - 31 Mar.1964], Pianist) は、モスクワ音楽院でピアノをコンスタンチン・イグムノフに、作曲と対位法をセルゲイ・タネーエフに学んだ。ピアニストとしてデビューを果たした1912年には、作曲者自身の指揮でグラズーノフ「ピアノ協奏曲」の初演も務め成功を収めている。

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