マガジンのカバー画像

箱庭日記まとめ  

13
創作大賞2024 ファンタジー小説部門に応募します。 もし良かったら読んでみてください。
運営しているクリエイター

#創作大賞2024

箱庭日記5.5

箱庭日記5.5

『こんにちは、いい天気。ベンチには能天気。』
朗らかながら、レザークラフト用針で刺すようなご婦人の声が聞こえた。

しまった。と思ったがもう遅い。
今日は『都民韻踏の日』だった。
私はこの面倒くさいイベントを回避するため、前々から有給を取っていたのだった。
3ヶ月前の自分の計らいをすっかり忘れて「ラッキー休みだ」と浮かれて出て来てしまった。

引き返すか?でも冷蔵庫の中の食料も尽きた。
ここまで来

もっとみる
箱庭日記12

箱庭日記12

5月●日 はれ
「生存戦略」

今日近くの大きめの公園に行くと、大きな池に鳩がたくさん集まっていた。
しばらく見ていると、2匹の鳩がクチバシをがちゃがちゃくっ付けていた。
そのあと鳩が鳩の上に乗っていた。

鳩は基本的に一夫一妻で連れ添うらしい。
夫婦なのだろう、末永くお幸せに。とぼんやり眺めていた。
最近街中で鳩を見ることが減った様に感じていたが、いる所にはいるものだ。

ふと違和感を感じた。よ

もっとみる
箱庭日記10.5

箱庭日記10.5

「夢日記」

廃校のお化け屋敷に入った夢
校舎は三階建くらいのコンクリートで出来た校舎
廃校ではなかったかもしれない、中は結構綺麗だった。
昇降口から入るとお化け屋敷のお化け達は、アクリル製の透明な部屋で過ごしており、動物園の動物を眺めるように、お化けを見ていくスタイルのお化け屋敷だった。

部屋には手を入れられる穴があり、手を入れるとお化けに噛みつかれた。
カワウソのタッチみたいな事を期待したの

もっとみる
箱庭日記11

箱庭日記11

4月●日 記録的な大雨
「4月の雨は花を咲かすか?」

4月には珍しいゲリラ的な土砂降り。
休みだったので、ジムに行き買い物をして帰る途中だった。
ランニングマシンで走っている時から、あやしい雲行きではあった。
多少の雨なら、傘をささない私でも戸惑うレベルの豪雨。
10メートル先も雨粒の暴力で霞む。
私が欲をかいた結果だと思った。

十数分前、小雨の中ジム帰りにスーパーへ寄った。
雨の日は惣菜が安

もっとみる
箱庭日記4

箱庭日記4

9月●日 くもり
「どんぐりマッサージ」

先日のこと。2日間休みが続き、起きてから寝るまで読書やネットサーフィンを思う存分楽しんだ。
身体のあちこちが、凝り固まっていて痛い。
明日からの仕事に支障が出ないよう、マッサージに行くことにした。

いつものマッサージ店へ行くと、閉店まで予約でいっぱいだと言う。
とても腕が良く、1時間で3000円なので仕方がない。他を当たることにした。

適当に散歩がて

もっとみる
箱庭日記10

箱庭日記10

3月●日 満月
「眠るには」

夜になって布団に入ると、昼間足元にあった不安とか悪いものが、飲みかけのペットボトルを倒した時のように、頭、胸、お腹、足、全身に行き渡る。

耳鳴りは、季節毎の音を鳴らして、まぶたを閉じると少しの光がチラチラと邪魔をする。

まずはアイマスクで、目を覆って光を遮断する。
そして目から光が入らなくなったら、横を向き上になっている耳の穴に栓をする。

クッションや布団で足

もっとみる
箱庭日記9

箱庭日記9

2月●日  天井知らずの寒さ更新中
「美味しいご飯の作り方」

やっといい事があった。スクラッチくじで10万円当たった。
今までの人生で買ってきた宝くじの金額が、一気にマルっと回収出来たと思う。

宝くじの窓口で10万円を受け取った足で、電車に乗り1時間半の温泉街でパーっと使うことにした。
急遽取った宿の温泉に入り、夕飯も豪華な懐石料理にした。

昼間から休憩を取りつつ、何度か温泉と部屋を往復した

もっとみる
箱庭日記6

箱庭日記6

11月●日 小雨が朝から続いている
「旅行記」

先日二泊三日で、海沿いの町へ旅行に行った。
都内よりもかなり寒く、寒がりな私は重装備で挑んだ。

私の「旅行でコレやるの最高!ランキング」の一位二位を争う「朝何となく早く起きて散歩」もう一つは「地元のスーパーに行き、地元ならではの食べ物や売ってるものを探す」だ。
今回の旅でも朝の散歩を、していた。
すると子どもが10人程縦1列になり歩いている。

もっとみる
箱庭日記8

箱庭日記8

1月●日 晴れ
「継承」

お気に入りのマグカップを割ってしまった。

一昨年1人暮らしの祖母が、叔父一家と暮らすことになった。
その際に、家中を整理して祖母の思い出の品々は大半を捨ててしまった。

理由としては、叔父の家に持って行けないから。
本人の意思で捨てた。との事だった。

確かに祖母の家には、狭いながらも長年培ってきた収納術を使って(収納術よりは、収納研究の集大成だが)ありとあらゆる『家

もっとみる
箱庭日記5

箱庭日記5

10月●日 くもり 長袖を出した。
「育つ」

10月も終わりが近づき、寒くなってきた。
今年も小さいサンタ達の巣立ち?の時期になった。
日本ではサンタが孵るのが、大体3月頃だろうか。
その頃になると、主に民家のプランターから2.3センチの産まれたばかりのサンタが顔を出す。

10月から11月までに、大体10センチ程に育つと、地面深くに潜り5.6年掛かって160〜180センチ程まで成長するそうだ。

もっとみる
箱庭日記3

箱庭日記3

8月●日 晴れ 暑すぎる
「怖い話」

夏真っ盛りだ。毎日毎日暑さを更新している、気がする。
6月の終わり頃から、30度を超える日があったが、ここまで来ると外に10分でも出ようものなら、日差しに丸焦げにされ頭からいい匂いがしてしまう。

夏といえば、怖い話。
私は怖い話が好きだ。
夏の怖い話特番があると聞けば風呂を早々に済ませ、テレビに齧り付いて見る。日常生活に疲れたなぁと思えばリフレッシュがてら

もっとみる
箱庭日記2

箱庭日記2

7月●日 晴天 暑い
「星降る夜には」

今日は星降りの日。カップル達はロマンティックに、子ども達はワクワク顔で夜を待つ。

6月の終わり頃から、街は星降りに向けて星モチーフのものが売られていたり、星ジュースを入れるためのマグを売り出したり、星降り一色だ。

さて、今日はそんな星降り当日。
実は私は、こういった類の行事やお祭りが好きである。結構好きである。
わざわざ新しいマグを買ったりはしなかった

もっとみる
箱庭日記

箱庭日記

あらすじ
「私」の日常を綴った日記。
平凡な毎日にひと匙のファンタジーを。

6月●日 小雨
「脱色」

朝起きたら、頬の羽毛が全部抜け落ちていた。
枕に赤い羽毛が撒き散らされていた。
剥き出しの耳穴に、アラームが刺さる。
とりあえず、帰りに皮膚科に寄ろう。

6月●日 雨のち曇り
「奪羽毛」

朝から頬に皮膚科で処方された軟膏を塗る。
首から上の肌を直に触れる事などなく、自分の顔にこんな触り心地

もっとみる