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BEST天国

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物語のタネ その六 『BEST天国 #46』

物語のタネ その六 『BEST天国 #46』

ミヒャエルのオフィス―――
彼の淹れてくれたコーヒーを一口飲む宅見氏、何かを思いついたよう・・・

「ふと思ったのですが、天国コンシェルジュ、ってお給料出てるんですか?」
「出ていますよ」
「出てるんですか⁈」
「勿論、出ていますよ。買いたいものとかありますからね」
「そう言えば、以前、プロレス誌取り寄せていましたね」
「ええ。コンシェルジュは天国エリアにいますが、どこかの天国に住んでいるわけでは

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物語のタネ その六 『BEST天国 #45』

物語のタネ その六 『BEST天国 #45』

ミヒャエルのオフィス―――
マグカップを両手で包み込み、コーヒーを飲む宅見氏。

「宅見さん、どうですか?今日の珈琲は?」
「また新しい味ですね、美味しいです」
「よかった、嬉しいです」
「やっぱり、私は味だけではなく、たくさん飲むってのが好きですね」
「人それぞれかと思いますが、量の存在が質の感覚をサポートしているってとこはあるかもしれませんね」
「質と量の分離、量の呪縛からの解放。しかし、一見

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物語のタネ その六 『BEST天国 #44』

物語のタネ その六 『BEST天国 #44』

ミヒャエルのオフィスの朝―――
テーブルに座る宅見氏の前に、自分で淹れたコーヒーを置くミヒャエル。
宅見氏は両手でマグカップを包み、目を瞑って一口。

「あれ、ミヒャエルさん、いつもと違う味ですね」

お!っという顔して、
「わかります?実は豆、変えてみたんですよ」
「そうなんですね、これも美味しいな」
「毎回一緒だとつまらないでしょ、いくら美味しくても」
「つまらなくはないですけど、色々飲めるの

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物語のタネ その六 『BEST天国 #43』

物語のタネ その六 『BEST天国 #43』

ミヒャエルのオフィス―――
いつもの如くミヒャエルの淹れたコーヒーを楽しんでいる宅見氏。
心なしかその味が今までよりも美味しく感じている。
ふと見ると、ミヒャエルがテキストらしきものを開いてイヤホンで何かを聞いている。

「お取り込み中、スミマセン。ミヒャエルさん、何かお勉強中ですか?」

ミヒャエル、イヤホンを耳から外して、

「ええ、ちょっと、チャミクロ語の勉強を」
「チャミクロ語?」
「ペル

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物語のタネ その六 『BEST天国 #42』

物語のタネ その六 『BEST天国 #42』

ミヒャエルのオフィス―――
彼の淹れたコーヒーを飲んでいる宅見氏。
いつもの風景だ。

「相変わらずミヒャエルさんの淹れたコーヒーは美味しいですね」
「ありがとうございます」

天国リストから顔を上げて答えるミヒャエル、嬉しそう。
宅見氏マグカップを両手で包みように持ち、また一口飲んで。

「しかし、天国ってのはニッチな欲望を満たしてくれるもんなんですね。山登りと尾根歩きを分けて考えるなんて思いも

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物語のタネ その六 『BEST天国 #41』

物語のタネ その六 『BEST天国 #41』

中カルビ天国の内見に行った翌日。
朝のミヒャエルのオフィスに宅見氏がやって来る。

「おはようございます、ミヒャエルさん。いやー、昨日は食べましたね」
「食べましたね。まだ、腹パンな感じですよ。だって宅見さん、あと、一枚って言っておいて結局何枚お食べになりました?中カルビ」
「すみません、覚えていないです。だって食べる度に違いますからね。中カルビって一体どの具合のことなんだ?と。あれは、底なし沼で

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物語のタネ その六 『BEST天国 #40』

物語のタネ その六 『BEST天国 #40』

ミヒャエルのオフィス―――
宅見氏がじっと目を瞑って座っている。
その様子に気付いたミヒャエル。

「宅見さん、どうしました?なんか深刻な顔してますけど」
ゆっくりを目開ける宅見氏。
ふう〜と一つ大きなため息。

「この前連れて行って頂いた人の役立ってる天国、あれと自分の人生を照らし合わせると、なんともな、という気持ちになってしまいまして」
「なんともな、な気持ちですか」
「折角天国に来たので、こ

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物語のタネ その六 『BEST天国 #39』

物語のタネ その六 『BEST天国 #39』

ミヒャエルのオフィスにて新聞を読んでいる宅見氏。
そこへ帰ってきたミヒャエル。

「おはようございます、宅見さん」
「おはようございます。ミヒャエルさん、朝からお出かけだったんですね」「ええ。今日は天国公園のお掃除デーで」
「お掃除。コンシェルジュさん達がされているんですか」
「いつもは専門の方がやってくれるんですけど、月に一度ボランティア活動の日があるんですよ」
「ボランティアで公園掃除!そう言

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物語のタネ その六 『BEST天国 #38』

物語のタネ その六 『BEST天国 #38』

ミヒャエルのオフィス―――
本棚をふと見る宅見氏。
そこに何かを見つけたよう。

「ミヒャエルさん、これってアルバムですか?」

宅見氏の言葉にファイルから顔を上げるミヒャエル。

「ああ、それ。はい、そうです、私の」
「見ていいですか?」
「もちろん」

アルバムを本棚から取り出し、デスクの上で広げる宅見氏。

「あれ?この子供って、もしかして」
「はい、私です」
「あらー、かわいいですね」

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物語のタネ その六 『BEST天国 #37』

物語のタネ その六 『BEST天国 #37』

ミヒャエルのオフィス―――
珍しくヘッドフォンをしているミヒャエル。
そこからかすかに漏れてくる音を聴いて宅見氏。

「ん?ミヒャエルさん、BTS聴いてる?」

ノリノリで大音量で聴いているミヒャエルには、どうやら宅見氏の声が聞こえていないよう。
ポンポンとミヒャエルの肩を叩く宅見氏。

ミヒャエルはヘッドフォンを耳から外して、
「どうしました?宅見さん」
「お楽しみ中にすみません。ミヒャエルさん

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物語のタネ その六 『BEST天国 #36』

物語のタネ その六 『BEST天国 #36』

ミヒャエルのオフィス―――
いつものように彼の淹れたコーヒーを飲んでいる宅見氏。

「うーん、いつ飲んでも美味しいですね、ミヒャエルさんのコーヒーは」「ありがとうございます」
「やはり、この味を出すまでにはかなりの時間が?」
「そうですね、やはり試行錯誤がありましたね」

そんなミヒャエルの言葉を聞きながらマグの中のコーヒーに視線を落とす宅見氏。
おもむろに口を開く。

「最近ちょっと思うんですよ

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物語のタネ その六 『BEST天国 #35』

物語のタネ その六 『BEST天国 #35』

ミヒャエルのオフィス―――
いつもの如く宅見氏がミヒャエルの淹れたコーヒーを飲んでいると、

ピンポーン

宅配便が届いた。
それを受け取り箱を開けるミヒャエル。

「届いた届いた」
「ミヒャエルさん、何を買われたんですか?」
「あ、サウナハットを」
「サウナハット⁈ミヒャエルさんもサウナーなんですか?」
「実は、最近デビューしまして。始めてみたら、結構ハマってしまいまして・・・」
「そういう方多

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物語のタネ その六 『BEST天国 #34』

物語のタネ その六 『BEST天国 #34』

天国コンシェルジュのミヒャエルのオフィス―――

いつものように宅見氏がミヒャエルの淹れたコーヒーを飲んでいる。
ふと見ると、ミヒャエルが何やら熱心に雑誌らしきものを読んでいる・・・。

「ミヒャエルさん、何をそんなに熱心に読んでいるんですか?」
「え、あ、これ、ムーの最新号です」
「ムーってあの超常現象とか紹介している。ミヒャエルさん、そんなの読むんですか?」
「ええ、私、好きなんですよ」
「奇

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物語のタネ その六 『BEST天国 #33』

物語のタネ その六 『BEST天国 #33』

天国コンシェルジュ、ミヒャエルのオフィス―――
大きなテーブルに新聞を広げているミヒャエル。
そこに宅見氏がやって来る。

「おはようございます、ミヒャエルさん。あれ?新聞ですか」
「おはようございます。ええ、新聞です。宅見さん、新聞お読みになりませんか?」
「読みますけど、ネットでですね。生きている時は、通勤時間中にスマホで」
「今は、そういう方多いですよね。私はどうしても新聞は新聞紙で読みたい

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