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原典を読みながら環境・農業問題について考えてみる

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聖書や日本書紀、平家物語などを読みながら、「日本」について外国人に説明するにはどうしたらいいかとか、農村部の論理と都会人の論理がどう違うかと言ったことについてのヒントを考えていま…
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2023年2月の記事一覧

18世紀にアダム・スミスは中国は世界一豊かだが停滞しているから中国の労働者は貧しいと述べた。21世紀までの流れを思い返してみて、今後を考えてみる・・・

18世紀にアダム・スミスは中国は世界一豊かだが停滞しているから中国の労働者は貧しいと述べた。21世紀までの流れを思い返してみて、今後を考えてみる・・・

アダム・スミスの国富論には、中国のことも出てきます。

「長い間、世界で最も富んだ、すなわち最も肥沃で最も良く耕作され、最も勤勉で、そして最も人口の多い国の一つであった。

けれども、この国は長い間、停滞状態にあったようだ。」と述べています。

スミスは、中国の停滞状態を「たとえ国の富が大変大きくても、その国が長い間、停滞状態にあるなら、そこでの労働の賃銀が非常に高いと思ってはならない」

つまり

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農耕具のガリレオになれるか?

農耕具のガリレオになれるか?

鉄の古代史(奥野正男)には、福岡県の広田遺跡の出土品について、「扁平打製石斧が採集の土掘りだけでなく、穀物栽培の農耕具としても消耗品的に使われていた可能性を示している」と述べています。

石斧だから、「オノ」と言うわけではなく、「クワ」のように使われていたと言う事でしょうか?

萬葉集冒頭の「この岡に菜摘ます子」の歌に堀串(ふくし=掘り具)と言う表現が出てきます。菜を摘むのにどうして掘り具がいるか

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タアサイは1-2月の「つなぎ」葉菜として位置づける

タアサイは1-2月の「つなぎ」葉菜として位置づける

「人間はつねに働いて生きてゆかねばならないし、彼の賃銀は少なくとも彼の生活を維持するのに足るものでなければならない。いや、たいていの場合、賃銀はこれよりいくぶん多くさえなければならない。そうでないと家族の扶養という事が労働者にとって不可能となり、職人達の家族は一代限りとなってしまうからである。

こうした理由からカンション氏は、最下層の労働者でも平均して二人の子供を育てるためには、自分自身の生活維

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「豊かな社会」における半農半X

「豊かな社会」における半農半X

アダム・スミスの国富論にこんな話が出てきます。

「大多数の職業において労働の生産力が十倍」、「すなわち1日分の労働が、それがもともとやっていた仕事の十倍の量を生産できたとしよう」

「他方、ある特定の職業では労働の生産力が二倍にしか増進しなかった。すなわち、1日分の労働が前にやっていた仕事の量の二倍しか生産出来なかった」

「大多数の職業における1日分の労働の生産物を、この特定の職業の1日分の労

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泰平モード40年で生まれた「紅色一代男」

泰平モード40年で生まれた「紅色一代男」

井原西鶴・紅色一代男(1684刊)に「塵塚よりなた豆と言う物、いと笑しく生りさがりたる垣根」と言う表現が出てきます。

ゴミ捨て場からナタ豆が自然発芽して、垣根にツルを絡ませている様子を描写しています。

畑で雑草や野菜屑を積んでおいた場所からトマトや白菜が自然発芽してくるのはよくある話です。

ところで島原の乱の終結が1638年、寛永の大飢饉が1640年-1643年にかけてです。この後、幕府は土

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「原価と手間と利益を見込んでこの値段になる」と言う説明はヨーロッパ人が植民地を作り、先住民の社会と資本主義社会を対比して生まれたものだと言うこと

「原価と手間と利益を見込んでこの値段になる」と言う説明はヨーロッパ人が植民地を作り、先住民の社会と資本主義社会を対比して生まれたものだと言うこと

アダム・スミスの国富論は1789年に書かれています。

この中で

と述べています。
中公文庫の注釈は、この記述について、以下のように述べています。

現代の私たちは、例えば、自分が売っている商品について、「これ、もっと安くできないの?」と聞かれて「いや、手間がかかっているから無理です」と答えることもあると思います。
「手間がかかっているから、この値段になる」と言うのは、「労働」が価値を生んでいる

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鎌倉時代に育てられていた野菜はどんなものだったのでしょうか

鎌倉時代に育てられていた野菜はどんなものだったのでしょうか

昨日、鎌倉時代の家庭菜園面積で、当時の百姓屋敷が500平米程度との推定がある事を受けて、家屋が100-200平米とすると、垣根の内側の畑地面積は200平米程度ではなかったかと書きました。

これは当たらずと言えども遠からずだと思います。

ただ、農水省が1世帯の野菜を自給するための面積を30平米程度としている事を受けて、敷地内の菜園で麦や豆などの雑穀も栽培しているとすると、そこで収穫できる野菜・雑

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鎌倉時代の家庭菜園面積

鎌倉時代の家庭菜園面積

「日本中世の歴史1・中世社会の成り立ち(木村茂光)」に当時の「百姓」の家の面積についてのお話が出てきます。

60歩=6分の1反で約167平米、191歩は約530平米であるとのこと。
一方、備中国新見荘の有力百姓谷内氏の「屋敷指図」によれば、

こうした古文書の記録をもとに考えていくと、

と言うのが当時の百姓屋敷の様子だったようです。
建物面積を100-200平米程度で堀や垣根の面積もあるとする

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「外的な規範」で「自由な交易」を規制している例・・・農業との関係で

「外的な規範」で「自由な交易」を規制している例・・・農業との関係で

「外的規範」と交易、交換で、「自由な経済活動」が「霊の祟り」や「公共の福祉」等、「経済の外側」にある何らかの規範によって規制される例について述べました。

農業との関係で言っても、こうした「外的規範」による規制は、歴史的にも、現代でも割りと通常に行われていると言えます。

手元に本がないので正確な引用はできませんが、バルキッドゥ・サドルの「イスラム経済論」では、アメリカ流の資本主義でもソ連流の社会

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「外的規範」と交易、交換

「外的規範」と交易、交換

交換は自己愛の刺激によって起きるとするアダム・スミス「国富論」と、贈り物(タオンガ)には霊(ハウ)が宿り返礼をしなければ霊が自分にとどまって悪い結果を招くとの観念を紹介するマルセル・モース「贈与論」。

国富論が言っている理屈は、平たく言えば、「私にその品物を売ればお金が手に入ります。そうしたらあなたはそのお金で好きな物が買えますよ」と言う考えで経済は回っていると言う事です。

贈与論の理屈は、贈

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