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雑文

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2023年6月の記事一覧

芋虫の“魂魄(こんぱく)”は躰の外に存在する。

芋虫の“魂魄(こんぱく)”は躰の外に存在する。

アゲハチョウが、幼虫から蛹になるまでをご覧になったことがあるでしょうか。

蝶々が卵から孵って芋虫になり蛹になり、やがて蝶となる。この劇的な変化が彼らの身体に起きることは誰もが知っていることです。蛹から鮮やかな蝶が出てくる様ならば、実際に見ていなくても映像で見ている人はわりと多いのではないでしょうか。

しかし、その蛹となる前に、彼らに何が起きるのかを見る人は、多くはないかもしれません。

ある年

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「お父さん、オモチャのお城のようなあれは何?」(ある海岸の物語)

「お父さん、オモチャのお城のようなあれは何?」(ある海岸の物語)

子どもの無知の無邪気さ。大人になって思い返すと、あ~なんてことを言ったんだろうと恥ずかしくなる。そんなことって、ないですか。ええ。私はあります。

小学生の時です。
家族でドライブに行きました。運転は父、私が助手席、母と姉が後ろに乗っていたはずです。

今思い出してみるとあれは海沿いの道、秋田市方面から国道7号線を走っていたので、象潟の海にでも行ったのでしょうか。

岩城を過ぎ、

本荘に入り、

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本当の牛の姿。

本当の牛の姿。

母親の実家のすぐ近くに牛乳屋さんがあります。

S牛乳店と言って、小規模ですが母屋の奥は牧場で、ホルスタインが今日も元気にお乳を出してくれています。酪農地帯ではないので、民家が並ぶ中に牛達が暮らしている風景は、現代では少し珍しいものかもしれません。子どもの頃は家族で遊びに行くと、散策がてら父に連れられて、牧場脇の林道から、よく牛さん達を眺めていました。

まだ幼かったある日、実家で遊んでいると、S

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「君は僕より先に死んじゃダメです。」

「君は僕より先に死んじゃダメです。」

ジョアオ・マリオ・グリロ監督『アジアの瞳』を見ていました。あちこち探し回ってやっと見つけたDVDなのです。
天正遣欧少年使節であり、後に禁教令下の長崎で殉教した中浦ジュリアンの物語をベーシックに、現代の長崎を訪れたEU文化官の女性の目を通して見た、キリスト教弾圧という加害とその後の原爆被害。そのようにして不寛容を繰り返すこの世界。原爆という悲惨な出来事そのものを忘れたかのような日本の変容ぶりが忘却

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