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創作大賞2024恋愛小説部門応募作「青い海のような、紫陽花畑で」9話
その朝の風は、低く吹き、そして湿っていた。
それはまるで、悲しみの風のようだった。
ジェレマイアはパドゥシャの、少し乱れた
前髪を直し、それから首筋を撫でた。
「君に、神の加護を。」
パドゥシャは美しい瞳を近づけてきた。
それからジェレマイアに息を吹きかけてきて、
そして首を上下に振った。
パドゥシャは別の部隊へ行くことになった。
ユアンの愛馬にして、高い能力のパドゥシャに、
誰もが乗りたがった。
創作大賞2024恋愛小説部門応募作「青い海のような、紫陽花畑で」8話
ズアオアトリの鳴き声を聞いたような
気がした。
夢の中で聞いたのだろうか。
そして目を開ける前に、瞼に青い光を感じた。
それは青い海のような、紫陽花畑で
花々の上を光が踊る時の。
そして幼いリズが,無邪気に踊る時の。
あの、濡れた,八重咲のクチナシに
そっと触れた時の、青い、光。
リズ、
君は変わりなく過ごしているだろか。
状況は厳しい。激しさが増している。
ブライアン、テディ、イリスも
変わり
創作大賞2024恋愛小説部門応募作「青い海のような、紫陽花畑で」7話
6月、
咲き始めの黄緑色の紫陽花は
朝露を帯びて、瑞々しく輝いていた。
リズは紫陽花を手に取り、
微笑んだ。
深く、濃く、
だんだんと色づくのはまるで、思いのように。
リズの、細い首筋を初夏の風が優しく撫でる。
それはジェレマイアのあたたかな眼差しや、
安心感のある手、不器用で繊細な心、
そのすべてを、リズに思い出させた。
少年と少女の抱擁は黄緑色の、若草の
妖精が光の中で揺れるように。
そし
幸と花と言の葉 迷迭香 ローズマリー
海底に沈む愛
ローズマリーの語源は
ロスマリヌス、海の雫。
地中海で愛されてきたハーブ。
そして和名は 迷迭香 まんねんろう
強い枝と葉を持ち、四季を通して咲き、
香る、それは永遠の存在なのかもしれない。
美しい海の底に
珊瑚礁が母なる海から生まれ、
その愛の姿のままに生きている。
永い、永い、時を生きる。
珊瑚礁に思いを馳せると
大きな愛を感じる。
母性。
母の温もり。
誰もが、いくつに
幸と花と言の葉 百日草
幸が空に還ったのは9月の初め。
そして9月の終わり、
私の誕生日に
フローリストの友人が
ジニアやマトリカリヤのフラワーアレンジメント
をプレゼントしてくれた。
ジニア 百日草。
百日を
色鮮やかなまま、揚々と咲く。
色とりどり、まあるく、
大好きな花である。
ジニアは
庭先にも道端にも
咲く。
見ていると元気になる、
植物の力。
ある人が幸のことを
野花のようだ、と言った。
野花のよう