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幸と花と言の葉 迷迭香 ローズマリー


海底に沈む愛

ローズマリーの語源は
ロスマリヌス、海の雫。

地中海で愛されてきたハーブ。
そして和名は 迷迭香 まんねんろう
強い枝と葉を持ち、四季を通して咲き、
香る、それは永遠の存在なのかもしれない。

美しい海の底に
珊瑚礁が母なる海から生まれ、
その愛の姿のままに生きている。
永い、永い、時を生きる。
珊瑚礁に思いを馳せると
大きな愛を感じる。

母性。
母の温もり。
誰もが、いくつになっても
母の愛に抱かれたい。
それはある時から
実在の母というよりも
もっと大きな、永遠の存在、
永遠の母を求める。

聖母マリア、
母なる大地、
母なる海。

迷迭香、ローズマリーは
母なる海のひとしずく、
母なる海の子。
そして大地に咲き、
永遠に香りを放つ。

繁殖犬として
およそ7年を過ごしたであろう
幸は
たくさんの子を産んだらしい。
しかし、その子供たちは
どこにいるのか、元気にしているのか、
何もわからない。

そして子別れをしなくてはならない、
すぐに子を取り上げられてしまう
幸の悲しみも、その本当は
何もわからない。
幸は言葉を持たない。

ドッグトレーナーは言った。
表情、仕草、吠えることの
すべてで、幸は言葉を持たない子。

それでも
悲しみの中で
穏やかな愛を放ち、
絶望の中でも
純粋な瞳で
優しさを放った。

幸に命の期限がなければ
ローズマリーのように
強く咲き、香りを放つように
生き続けられたのだろう。

海から生まれた、ローズマリーの
ように、母なる愛を抱いて。

幸の愛は
珊瑚礁のように
海底に生きている。
そして
海の雫、愛から生まれた
ローズマリーが
咲き、香る時、そこに
母の愛と珊瑚礁の愛が
青く美しい花を咲かせる。
幸は迷迭香の中にも、
生きている。


幸について
2019年にドックトレーナー運営の
保護団体に保健所から引き出され
2020年3月に私の娘になった
元繁殖犬の柴犬。
穏やかに暮らしていたが
末期癌とわかり、2023年9月に生涯を
終える。

幸は
美しい3年半を私に経験させてくれた。
かわいらしい顔、優しい性格、包み込むような
母性を持った純粋な魂だった。



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