「人の良いところ探しの名人になりたい」- 私の大切にしている言葉
「人の良いところ探しの名人になりたい。」
12年前に聞いた言葉ですが、今でも忘れず鮮明に覚えています。
前職で勤務していた学校で、尊敬する先生が42年勤務の後、定年退職されました。全校生徒へのスピーチで泣きながらそう語りました。
体育館で聞いていた生徒、先生も号泣するという瞬間でした。
いつも笑顔を絶やさず、決して頭ごなしで生徒を怒らないその先生には、確たる芯がありました。
ご自身の経験
高校時代に野球部ながら100mを12秒台で走るという実力と才能が認められ、大学の体育学部に入学されました。
当時はプロ野球チームからも声がかかっていたとのことです。
しかし、大学入学後、陸上部の監督からのしごきを経験され、あまりの酷さに他の部員は全員退部。一人だけ残って部活を続けるも、体を壊してしまい、アスリートの道は絶たれました。
「自分は何のために生きているんだろうか。」
と何度も自問されたそうです。
産んでくれた親に申し訳ない、という思いで何とか踏みとどまったそうです。
覚悟と実践
「自分には何ができるだろうか。」
そう考えて彼は体育教員の道を選ばれました。
彼には確たる芯がありました。
「感情で怒る不必要な厳しさやしごきは教育ではない。」
彼の周りには生徒も先生も笑顔が絶えませんでした。
✅ 生徒との関わり
悪事を働いてしまった生徒ともとことん話す。
生徒の人格を否定せず、心の奥にある本当の思いを引き出す。
優秀な生徒にも忘れずに声がけをする。
なかなか真似のできない受容力で、生徒と向き合っていました。
「あの先生なら、自分のこともわかってくれるかもしれない」
生徒からそう信頼されているのが明らかにわかる関係性でした。
みんなその先生に話しかけて欲しくて、自然と人が集まってくる、そんな素敵な光景でした。
✅ 体育の授業
体育の授業でもその思いは同じでした。
いかに速く走れるかだけではなく、プロセスも評価するために、「走行フォーム点」というものを導入されました。
先天的に足が速くない子も、授業を受けることでカッコいいフォームで走れるところを評価したかったからとのことでした。
思った通りに、体を動かせるか。
以前できなかった動きができるようになったか。
これも評価に入れるべきだ、と思われていたからです。
彼の核の部分がにじみ出る実践です。
✅ 若手教員や同僚、保護者への声がけ
生徒だけでなく、大人への声がけも鮮やかでした。
「あなたみたいに海外に行った人が生徒に寄り添ってやると嬉しいと思うぞ。経験から語れるっていうのは武器だなー。」
「ソフトボールもできるんだなー。さっき上から見てたけどなかなかいい肩しとる。ボールを拾った後、こうするともっと早く動けるぞ。」
こんな素敵な方に褒められた言葉はよく覚えています。
相手の人柄や信念がわかっていると、本人に言われていなくても、そう思われているような気までしてくるものです。
最後に
年始で前職の元同僚の方たちとやりとりをする中で、色々と思い出すことがありました。
斜に構えた思春期の生徒と毎日何時間も向き合うのは、なかなか真似できることではありません。
さらに、自分が疲れていると、マインドがどうしても後ろ向きになり、他人のマイナス点に目が行きがちです。
完璧主義と言われてきた日本では、悪いところを先に指摘して直そうとしてきました。
もちろん相手への愛があっての悪い点の指摘だと思います。
指摘する側の時間がないという理由や、相手が受け容れる度量や謙虚さがあるかを試す理由で、相手の弱点をダイレクトに伝えるのも方法としてはあるかもしれません。
しかし、同時に他人の良いところも忘れずに日ごろから直接伝えることも大切でしょう。
褒められて悪い気がする人はいません。
「あの人は私の良いところを見てくれている。」
そういう関係性があって初めて、アドバイスを受け入れる心の準備ができるのではないでしょうか。
家族でも、仕事でも、友達でも、何か通ずるものがありそうです。
「私も人の良いところ探しの名人になりたい。」
今後も在宅時間が長くなるからこそ、身近な人の良いところ探しをしたり、何気ない行動への感謝をして生きる一年にするのも悪くなさそうです。
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