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喜多川泰さんの『手紙屋』が高校生のやる気のスイッチを押した話 - 私の本棚紹介

「この本他に読みたい子がいるから貸していい?」

その眼差しは今でも忘れません。

先日のnoteで高校教師時代の事を考えたせいか、
色々と思い出しました。

教師として青春時代を生きる生徒と毎日向き合った記憶は、今でも深く刻まれています。

今日は、ある本が生徒のやる気のスイッチを押した話について、共有させていただきます。

喜多川泰さんの
『手紙屋 蛍雪編 私の受験勉強を変えた十通の手紙』です。

今アマゾンで調べたら、購入回数が2回と出てきました。

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私は本を2冊買うことがあります。

読んでみて、他の人にオススメできそうな本は2冊目を買うことにしています。

もちろん学校にも図書館があるので、
学校でも購入するようにも依頼しましたが、
生徒とのコミュニケーションツールとして
私は本を使っていました。

新米教師はどうしたら信頼されるかを考えていた

新卒で教師という職業を選んだため、
若いというだけでナメられるだろうな、
とあらかじめ心の準備をしていました。

逆に若いという理由だけで、関心を持って寄ってきてくれる生徒はいるかもしれないけれども、いつかは歳は取るので、他の要素で信頼を得られる方法が必要だと思っていました。

教員になる前の教育実習では、最初の数日はもの珍しさで生徒は寄ってきました。

しかし、その後生徒も慣れてくると

「この人授業できるのか。」
「大丈夫か。本物なのか。」

という生徒からのアセスメントが行われるし、
信頼できるかどうかを試されていると感じました。

一生懸命さとパッションで体当たりできるところは若さの良さだと思いますが、若いという理由だけでは弱いです。

自分ができていたかどうかは別として、何かの側面で「尊敬」や「共感」を目指していたような気がします。

英語力なのか、教え方なのか、教養なのか、話し方なのか、経験なのか、価値観なのか、受容力なのか、と色々と考えました。

私は一つの方法として、自分が読んだオススメの本を貸すという実践にたどり着きました。

ある生徒の話

当時高校2年生だったある生徒と私とのやりとりの話です。

その生徒はストリートダンスが好きで、
学校のストリートダンス部でした。

学校の外でも活動をしている派手めなグループの一人でした。

勉強は全く苦手のようで、追試も常連組で先生たちの中でもどうしたら良いかという話題が職員室内でも頻繁にされていました。

そもそも勉強が好きではないので、教室の椅子に座って時間を過ごすことが苦痛なようでした。

話しかけてもふてくされた様子で、むしろ話しかけないで欲しいというオーラを出してくる感じでした。

部活の先輩ならすんなり話すのに、先生になった途端に敵のような態度を示すのは何故だろうとずっと考えていました。

今までの大人と関わった経験からする不信感なのか、
親と同じだろうと思って、大人を全て拒否しているのか、色々あるだろうと思いました。

どの先生が何を話しかけても、
全く聞く耳を持たない状態でした。

ある日、一つ実験してみました。

授業が終わった後でこの本を持って、
さり気なくその生徒の机に寄って行き、
周りには聞こえない小さな声で話しました。

「騙されたと思って、読んでみて。」

本を渡しました。

最初は何が起こったのか、という顔をしましたが、
恥ずかしそうにスッと机の中に本を入れました。

数日経って、授業が終わった後に初めてその生徒が寄ってきました。

「あの本よかった。他に読みたい子がいるから貸していい?」

人の態度はこんなにも変わるのかというぐらい、
今までのふてくされた様子とは全く違う、
素晴らしい眼差しだったのを今でも覚えています。

そのあとで、「あと、英語って今からでも何かできるかな」と言ったので、
中学校からの復習のプリントを渡して、終わったら持ってくるように伝えたのを覚えています。

その後、この本はクラスを超えて別のクラスにもどんどん回っていって、勝手に表紙の裏にコメントも書き込まれていきました。

結局、コメントが書かれた現物の本はどこかに行ってしまったのですが、むしろそれで良いと思っています。

手紙屋の話に出てくる主人公で、勉強の意味を見いだせなく、親に反抗的な態度をとっていた和花がどう変化していったのかというところと、生徒が重なる部分があったのかもしれません。

「何のために勉強するのか」という問いに対して、
核心をついている本の一つだと思います。

以下にいくつか引用させていただきます。

勉強という道具は『自分を磨くため』『人の役に立つため』という2つの目的のために使った時にはじめて、正しい使い方をしたといえる (p.213)

きっと、将来あなたに出会う人は、あなたに出会えてよかったって、今のあなたのままでいる以上に思ってくれるはず (p.223)

人のために自分を磨いていこうと心底思えた時、あなたは今まで経験したことのないような力を発揮することができる。 (p.223)

最後に

本当の良書や素晴らしい言葉に出会った時、鳥肌が立ったり感情が込み上げてくる経験をした方もいるかもしれません。

喜多川泰さんの『手紙屋』は、私だけでなく、私と出会った人を大きく変えてくれた良書の一つで、私のバンコクの自宅の本棚のお気に入りコーナーに入っています。

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今日も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。

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