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ショートステイ

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クリエイター・リンク集「バスを待つ間に触れられるものを探しています」
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2020年6月の記事一覧

鳥の声

同じ町に住む一人暮らしのおばあさんが亡くなった。80歳くらいだったらしい。最後は自宅で、帰省してきた息子さんに看取られて旅立った。

おばあさんはヨウムを飼っていた。いつも窓際の鳥かごにいて、私が物心ついたときにはすでにヨウムはいた。名前はむーちゃん。

むーちゃんはおばあさんの言葉を真似る。おはよう、こんにちは。笑った声、えー?という口癖まで。

通夜の日、鳥かごは奥の部屋に隠されていた。それで

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今日は

今日は

去年の夏、長野に行った。
お土産に蕎麦を買った。
渡しそびれた蕎麦を、今日食べた。
賞味期限は半年前に切れている。

冷蔵庫からわさびを出す。
未開封だが、賞味期限は一年前だ。

蕎麦に付属のつゆだけが、来月まで保つらしい。

今日はいつなのだろうか。
よく分からなくなった。

賞味期限が切れていても、
特に問題はなかった。
美味しくもなかった。
賞味期限というのは、なるほど。
いくらか確からしい

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日々時々詩

日々時々詩

まとまった雨が降るには

時を待たねばならない

ただ時を待つことは

時を長くする

時には詩が必要だ

ぱらぱらと

みじかい詩がほしい
#詩 #創作 #待つ #パラパラ

恋文が届きました

恋文が届きました

恋文が届いた。
夜明けの5時に。

郵便受けの底が カタンとなって
私の浅い眠りをさました。

毛布をかぶり
はだしのつま先を こすりあわせて
私は
玄関のやわらかい光の中に立つ。

腰をまげ
投げ入れられた封筒を
指先だけを使って拾うために。

それは
独り言のように四角い。
宛先がない。

端を用心深くちぎる。

それから
かさかさ、と音を立てて
白くたたまれた
優しい言葉をひらいていく。

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『石の上』

3年、石の上に居ようとしたんだ
初日はワクワクした
3日で飽きたけど、まぁ座ってるだけだ
1ヶ月で石の固さにも慣れた
半月で自他共に居場所として認めた
1年を過ぎて達成感と飽和感を感じた
2年目からは惰性でもいいと割り切ったから
丸2年の日に気付かなかったのは自然なのかも

もうすぐ3年というある日
居眠りしてたら転げ落ちた