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記事一覧

盆東風待ち

盆東風待ち

雨音消えた町
痛み伴う日差し
忍び寄る足音

あなたが好きだと言っていた
あの季節はきっと悪魔

何時までも心音加速させる
あなたもきっと悪魔だ

温い風に肌を触れられて
記憶は何処かへ飛び立つ
待つ人のない場所へと

降ってもいない雨を
避けるように進みながら
飛び立った記憶を追いかける

温い風は強く腕を掴む
振り解き歩みを進める
私のほうが強いのだと

言い聞かせて

砕けて散らばった
景色

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水無月あさあけ

水無月あさあけ

重くベタついた室内の空気
割れるような終わり見えない頭痛
ドアノブに手を掛けた

早朝踏み出した足は軽いはずもなく
首を上げれば涙溜め込んだような
不穏な色が広がっていた

臆病者はよたよたと
それでも前を向き無心で歩く

助けは要らない
もう一人でも問題はない
ただ話す相手はほしいけれど

精神のリハビリ肉体の痛み
スクラップ寸前
目的は何だっけ?

息が上がる
意気が揚がる
上がる

精神のリ

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秋晴れに懐う

秋晴れに懐う

金木犀が記憶を引っ張り出した
押し入れのずっと奥

見慣れぬ封筒ひとつ
忘れた頃に嫌味のように
番いの一羽は旅立ったのに

開封、黙読
罫線を幸せそうに踊る文字

あなたに似合いの色
出逢いの色
紙の色

遠く消えた
約束の数を数える

叶わなくて本当に良かった
誰も傷つかないもの

この約束は他の誰かと
叶えてくれていたら

いいな

幻のスカート

幻のスカート

丈長い上着の裾
緩い風が揺らしていく

頑固な夏と
軽快な秋が
少し喧嘩をする
季節の変わり目

大人の帰り道
右手に有料袋

慣れ親しんだ風景に
半透明の画像が重なる

あの日の帰り道
心は少し時間を戻した

あの時の右手は
君の左手を掴んでた

幻のスカートが揺れる

季節外れた春風

季節外れた春風

不意に現れて
心に吹いて乱すのに
とても心地が好い

季節外れの春風のようです

隔てられた世界で
向こう側覗き込んでいたけど

隠れて秘密の暗号
風は吹き飛ばし飛ばされて

あなたがいる世界
わたしのいる世界

季節外れの春風
愛を知らないわたしに
愛を連れてきてくれた

騒がしくなった心
ふわり触れた心

遠く遠い近い距離で
名前浮かべたら
涙が溢れ出したんだ

おもちゃの箱

おもちゃの箱

窓の外がちゃんと暗くなると
そこから始まる私の時間

ワクワクのおもちゃ箱
開けて覗き込んで
その時がくるのを待つ

世界はお部屋なんかじゃなく
広大な宇宙にでもなったようで

今夜は開催されるだろうか
夢見る前に夢の時間

予定時間はなく
目の前に広がる眩しい光

響く音は今夜も私を誘い
遠く存在しない何処かへと

跳ね回る心
急ぐ指先

永遠に続かないことは
知っているのに
今があればいいや

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ひと粒の砂

ひと粒の砂

いつの間にか
好きな想いが重くなって
足取りが覚束ない

あっちへふらふら
こっちへふらふら

気も漫ろ

いっそ色つきハートに
リボン巻き贈ろうか

どんなに頑張っても
広大な砂地の砂のひと粒で
言葉交わすこともないのに

心は愚かで純粋で
その手に掬われた砂の中の
ひと粒でありたいと願ってしまう

どっち?

どっち?

行き場失くし
退屈持て余す若い炎

グレーの景色も
カラフルに見えているのか

笑い声
剥き出しの口元

彼等を退屈そうに
窮屈な場所から
眺めているのもまた
若い炎

現実のようで現実ではない
かといって
これは夢ではない

頭も身体も追いつかない
何を信じていいかわからない

ボロい智能手机の深いところ
変わらぬようでまるで違う
どっちの僕等も存在してた

すかしふみ

すかしふみ

私が放った絡繰の文
手元返ってきたのは
更に難解でした

人の言葉に拐かされ
躊躇いなく覗き見るほど
私には勇気が備わっていない

ああ、少しだけ
存在を近く感じるのに
ただ抱きしめては
月日は流れゆくのだろう

間違った解釈で
失いたくはないし
それでもいいやと
思ってしまうのが怖い

もう少し
あと少しでいいから

美しい色に浸らせて

あいまい

あいまい

空気や風は熱を帯び
空は瞳に痛く

嫌いな夏
また君がいない夏だ

好きが過ぎるほど
顔も姿も声も
脳内再生できないのは何故?

嫌いな夏
次も君がいない夏だ

写真を削除した
後悔はなかった

だから君を再生できない
記録に頼ることができない

曖昧な君を
夏空にぼんやりと
映そうにもできそうもない

想いの欠片

想いの欠片

なんの為かなんて
理由を考えて実は
要らないんじゃないかと
思い始めている

理由がほしい為の何か
理由がない故の何か

誰の目にも留まらない

共通項目はただひとつ
言葉だけ

それさえも実は
要らないんじゃないかと
思い始めている

なんの為に
想いは言葉になるの?
それに意味はあるの?

中の私

中の私

どう受けとってくれても
構わないよ
これが私の全部だから

自分自身でさえ
自分を信用できない私だけど

あなたのこたえも
あなたの言葉も
きっと正しいはず

昼と夕の合間
小さな灯火鞄にぶら下げ
お守りのように握り歩く

混色の空の下
どう受けとってくれても
構わないよ

私は今日も私だけど
人は信用していたい私だから

花七つ

花七つ

雨続きの合間
見上げれば白と青
白は花の形に

思い出し引っ張りだした
フォルダーの中
溜まった花

コラージュして
数合わせて
青を混ぜる

赤と青
花七つ

宛名はない
差出人は私

気づくだろうか
本物は遠くに置いてある

夢

わたしの瞳がまだ
黒いうちに

わたしの喉がまだ
声を出せるうちに

わたしはあなたと

出会いたいと思ってしまった

叶わなくていいよ
叶わないほうがいいよ
その方がきっと
幸せでいられるから

私は醜いから

心も何もかもが
わたしは醜いから

美しいあなた
薄硝子越しに言葉交わす
いや交わせていない

ああ、ねえ
今夜もまた夢を見せて

生きていたいと思える

夢を見せて