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飲食店のメニューに「物語」を載せる

――店の紹介や、ドリンク、フードの後に、物語が載っている。料理が運ばれてくるのを待っている時間に読める短編があれば、本好きのお客さんなら「読んでみようかな」となるはず。もちろん物語の内容の良し悪しは影響してくるでしょうけど、本のある飲食店ならではのサービスが実現できます。


人生は物語。
どうも横山黎です。

大学生作家として本を書いたり、本を届けたり、本を届けるためにイベントを開催したりしています。

今回は「飲食店のメニューに『物語』を載せる」というテーマで話していこうと思います。



📚読書する店「fuzkue」に行ってきた

先日まで、東京にある本の場所を巡っていました。ブックカフェに行ったり、本のイベントに参加したり、とにかく本の集まる場所に行って、その実態や魅力を肌で感じてきたんです。

今回は、東京下北沢にあるブックカフェ「fuzkue」を紹介したいと思います。

本を読んで過ごすことに特化した店で、静かな場所で穏やかな読書の時間をつくることができます。そこに来る人たちは快適に読書にいそしみたい人なので、店のルールをしっかり守るし、余計な音を出さないように配慮するんですよね。

このお店の面白いところは、滞在時間やオーダーによって席料が変動するということ。1時間の滞在ならば900円だけれど、その間に、たとえばコーヒーだけ注文したら、席料は300円に下がって、コーヒーの料金とあわせて1000円になります。また、コーヒーに加えてチーズケーキも頼んだら席料は無くなって、頼んだ分の1200円になるんですよね。1時間滞在するならざっと1000円前後が予算になるというシステムなんです。

もちろん2時間、3時間、4時間……と滞在時間が長くなればその分席料は加算されるわけですが、お客さんに快適な時間を過ごしもらえるように親切な料金システムを組んでいるなあと思いました。



さて、僕が特に興味深く思ったのは、「fuzkue」のメニュー表です。

さきほども触れましたが、快適な読書の空間を守るために、お客さんに守ってもらいたいルールや注意事項がありまして、それがメニューにずらっと書かれているんですね。入店して席に着いたら、まずはそのメニューに記載されたルールを読むところから始まります。想像以上にしっかりと決め事が書かれているのでそれなりに量があるんですね。だからこそ、メニューはもはや1冊の本なんです。

読書をする店だし、意図的に本のようなメニューをつくったんだと思いますが、個人的には「ステキ!」という気持ちと「いや、もっとステキになるんじゃないかな」という気持ちが胸に溢れました。

本のある飲食店ならばメニューに本の要素を入れるのは魅力的な空間づくりの一助になるので「ステキ!」と思ったんですが、メニューや店の決まり事だけじゃなくて、そこに物語を載せれば「もっとステキになるんじゃないかな」と思ったのです。


📚サイゼリヤのまちがいさがし

ちょっと似ている試みで、よく知られている例を挙げると、サイゼリヤのまちがいさがしがあります。中に子どもメニューが書かれたメニュー表の表紙と裏表紙がまちがいさがしになっているじゃないですか。表紙の絵と裏表紙の絵に間違いが10個あるまちがいさがしで、意外と難易度が高くて大人でも夢中になれます。
#僕も行く度にやっちゃう

子どもメニューを使っているから、子どもに向けられた試みではあると思うんですよ。そして同時に、その家族に向けられたものでもありますよね。

子どもが挑戦して分からなくなってお父さんお母さんに訊く光景も、子どもと親で協力して間違いを見つける光景も、あるいはどっちが先に10個見つけられるか競い合っている光景も想像できるじゃないですか。

ファミリーレストランとしての価値は、家族全員が満足できるかどうかにかかっているので、家族のコミュニケーションが生まれるならば、あのまちがいさがしにはとっても価値があることになります。さらに、まちがいさがしの難易度が高いから、学生や大人たちにも刺さって話題になったりする。まちがいさがしの可能性を再認識できる事例ですよね(笑)



話を戻しますが、サイゼリヤの話を「本のある飲食店」に置き換えて考えてみると、「物語を乗せたメニュー」という答えになるのではないでしょうか。

店の紹介や、ドリンク、フードの後に、物語が載っている。料理が運ばれてくるのを待っている時間に読める短編があれば、本好きのお客さんなら「読んでみようかな」となるはず。もちろん物語の内容の良し悪しは影響してくるでしょうけど、本のある飲食店ならではのサービスが実現できます。


📚メニューも商品になる飲食店

僕のお気に入りの店に「The FAVORITE」というクラフトビールバーがあります。茨城県上水戸にある築90年の古民家をリノベーションしたお店で、僕の知り合いのゲストハウスオーナー宮田さんが運営しています。

最近は土曜日の夜だけの週一営業なんですが、宮田さんとつながっている人が来店するし、そこを会場としたイベントが頻繁に開催されるので、個人的には興味深い飲食店の回り方だなあとにやにやしています。
#ちなみに今夜は僕のイベントです


ゲストハウスオーナーの宮田さん
今夜のイベント


で、まだ確定ではないんですが、将来的に僕が「The FAVORITE」のお店の運営に関わるかもしれないので、少し前から自分が回すようになったらどうするのだろう、この店を使って自分の活動とつなげられないかなとぼんやり考えていたものです。

僕のキーワードはやっぱり「本」だし、今日もそうですが継続的に「The FAVORITE」で本のイベントを開催してきたので、本のあるクラフトビールバーにしていけたら物語性があるし、僕がやる意味もあるなあと思っていました。

お話を頂いたときから、本の飲食店にするなら、メニューはもっと本っぽくしたら面白そうだなと思っていたんですが、この前fuzkueに行ったり、他の本のある飲食店を廻るうちに、レイアウトを本にするだけじゃなくて、そこに物語を載せたらさらに面白そうと思い至ったわけです。

メニューに物語が載っているお店ってなかなか聞かないし、本好きの人にとっては最高の待ち時間の潰し方だし、そこに価値が生まれるようになってきたらメニュー自体が売れるかもしれません。文芸雑誌のように、いろんな人がそこに短編を載せる未来もあるだろうし、毎月中身を変えればそれを読む(買う)ために行こうという流れが生まれるので、月一で継続的に来店してもらえる未来もある。

やってみないことには分からないけれど、少なからず本のある飲食店の魅せ方のひとつなんじゃないかなと思いました。

今夜は「The FAVORITE」で「FAVORITE‼︎」という本のイベント。本のある飲食店の可能性を探っていきます。イベントが終わったら、宮田さんとこの話をしてこようかな。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

20231208 横山黎




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