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【本紹介】小川糸『ツバキ文具店』

――つい手元に置いておきたくなる魅力が、この本には詰まっているのです。


人生は物語。
どうも横山黎です。

作家として本を書いたり、木の家ゲストハウスのマネージャーをしたり、「Dream Dream Dream」という番組でラジオパーソナリティーとして活動したりしています。

今回は「小川糸『ツバキ文具店』を紹介する」というテーマで話していこうと思います。


📚代筆屋の物語

あなたには、伝えたいけれど伝えられずにいる思いがありますか? 「ありがとう」や「ごめんね」といった簡単なものでも構いません。言い渋っている思いはありますか?

そんな人には、ツバキ文具店に立ち寄ることをおすすめします。

手紙を代筆する、手紙屋さんです。

そんなお店が登場するのが、小川糸さんの書かれた『ツバキ文具店』です。NHKのドラマにもなり話題になりました。

主人公は雨宮鳩子。友達のバーバラ夫人をはじめ、みんなから「ポッポちゃん」と呼ばれています。「鳩」だからこそ「ポッポちゃん」というわけです。

鳩子は、先代からツバキ文具店を受け継ぎ、手紙を代筆する仕事をしています。代筆を依頼する人の種類はまばら。ラブレターを書いて欲しいと頼んでくる子どもがいれば、絶縁状を書いて欲しいという女性、離婚を報告する手紙の代筆を望む男性もいました。

鳩子はどんな内容の手紙だとしても受け入れます。そして、内容の特性、依頼人の雰囲気から、使う紙も筆記具も、文字のスタイルも変えていきます。あたかもその人が書いたかのように、手紙を代筆するのです。

ひとつひとつの手紙が、お客さんを喜ばせ、新しい日々へ踏み出すきっかけをつくっているのです。



📚紙の本ならではの…

この本の魅力のひとつに、紙の本ならではの仕掛けが施されていることが挙げられます。作中で登場する手紙がそのままページに印刷されているんです。ただ活字で記されているわけではなく、実際に鳩子が書いたように紙もフォントもひとつずつ違うのです。

作中に登場する手紙が、そのまま本に載っている。紙の本ならではの演出に、僕はにやにやしてしまいます。

代筆屋に頼むくらいだから綺麗な字で書いてほしいと依頼する人も少なくないんですが、綺麗な字を書くことが仕事ではありません。さっきも触れたように、その人の書く字のように代筆していくのです。だから、時にさばさばして崩した字体の字を書くことだってあるのです。

依頼人の数だけ、文字の種類も言葉づかいも違うんですよね。掲載されている手紙を読むことによって、画としてそれを理解できるんです。

また、これは物語には関係ありませんが、ページの左下の隅っこに絵が描かれています。これはパラパラ漫画になっているんです。パラパラめくりアニメーションが生まれるも紙の本ならではの仕掛け。そんな風に、つい手元に置いておきたくなる魅力が、この本には詰まっているのです。


📚舞台の鎌倉へ聖地巡礼

最後に魅力をもうひとつだけ。

『ツバキ文具店』を読み終えると、きっとあなたは旅に出たくなります。物語の舞台である鎌倉に聖地巡礼したくなるはずです。

『ツバキ文具店』自体は実在しないそうですが、作中に登場するお店や観光地は実在するものばかりで、物語を読み進めていくうちに、「ここに行ってみたい」という気持ちが湧いてくるはずです。

三方が山に囲まれ、一方は海が広がっている。自然と歴史が織りなす鎌倉という街には自ずと足を運びたくなる場所としての魅力がありますが、行きたい気持ちを膨らませるのが、この『ツバキ文具店』です。

実は、『ツバキ文具店の鎌倉案内』という本も出版されていて、作中に登場するお店や観光地が紹介されています。それをしおり代わりにして、鎌倉を旅してみるのはいかがでしょうか?

かくいう僕も、今日これから鎌倉に行ってきます(笑)

『ツバキ文具店』を読んで突き動かされて急遽予定を決めた……と言いたいところですが、実際は逆で、鎌倉に行く予定があったので、それにあわせて本を読んだというわけです。

近いうちに鎌倉旅行記の記事を書こうかなと思いますので、お待ちいただければと思います。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

20240620 横山黎


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