見出し画像

Vol.26 ひたすら濃厚 直球勝負の"どトンコツ" 久留米「魁龍博多本店」

魁龍博多本店の「ラーメン」

1999年の夏、東京から7人と福岡から3人、計10人で福岡県のラーメンツアーをした。この頃はインターネットはあったものの、ラーメンデータベースも食べログもない。博多で行きたい店は何軒かあったが、北九州となると情報がさっぱり。そこで地元のラーメン好きに案内を頼んだ。
まずは「みんず」と「唐そば」を回った。今では「みんず」は本店が閉店し、小倉にお弟子さんがやっている店がある。「唐そば」も本店は閉店し、息子さんが東京・渋谷に出店している。
そして3軒目に回ったのが聞いたこともない「魁龍」というお店。地元の人が自信を持って勧めてくれた店である。店の前に着くとすでに豚骨臭い。これは凄そうだ。店内に入るとさらに強烈。ラーメンを頼んだ。その時の簡単な感想が残っていた。
「スープが超こってりのヘビーなスープ。もちろん完食したが凄い髄の量。」

超濃厚なスープ

二日で13杯食べたので各店舗の感想は短めだが、「魁龍」のおいしさとスープの強烈なインパクトは今でも忘れない。福岡県は博多や久留米だけじゃなく、北九州もちゃんと回らなきゃダメだな、と痛感した。そして、「魁龍」のような隠れた“スゴイ店”がまだまだあるんじゃないかと改めて全国を食べ歩きたいと強く思ったのである。
我々が「魁龍」と出会って二年後、衝撃的なニュースが飛び込んできた。その「魁龍」がラー博に出店するというのだ。見つけたのは我々だけではなく、ラー博のメンバーも見つけており、粘り強く交渉し、出店にこぎ着けたようだ。
こういうラーメン集合施設ではより多くの人に食べていただくために、おいしいのは当然として、幅広い層に受け入れられるラーメン店を選択しがちだ。ところがこの「魁龍」に関してはその“スゴさ”ゆえに食べ手を選ぶのではないかと思っていた。それくらい凄いスープだったのだ。

命のスープ釜

そのスープをラー博は“どトンコツ”と名付けた。正直、「やられた〜」と思った。私もラーメン評論家として雑誌やテレビに出るようになり、お店の紹介や特徴を表現していたが、この表現には完全に“負けた”と思った。「魁龍」の凄いスープを見事に的確に表現しているキーワードだった。その通り、まさに“どトンコツ”なのだ。

私としては2年ぶりの再会だったがやっぱり衝撃的なスープだった。スープは豚頭と背脂のみ。呼び戻し方式で煮込み、煮詰めて24時間かけてようやく50杯分のスープができあがる。とにかくスゴく強烈で強暴(←あえてこの字)なスープなのだ。

どトンコツスープ

そして麺。低加水中細ストレート麵なのだが、店のオススメはなんと「ずんだれ(やわらかく茹でた麺)」なのである。

今回ゆで加減は”ずんだれ”のみで提供

そういえば、店主の森山日出一さんは1959年生まれ。私と同じである。まだまだ先輩方も頑張っていて勇気をもらえるが、同年代の頑張りには励まされる。森山さんは明るく、声がでかいので会うたびに元気を貰える。

魁龍博多本店の創業者 森山日出一さん

今回はスープの量の関係もあり、2023年9月19日(火)~10月2日(月)のわずか2週間限定の出店。森山さんはお店を閉めてこちらに来られるようなので、私も元気を貰いに行ってくる。もちろん注文は“ずんだれ”である。楽しみだ!
文/大崎裕史

📖バックナンバー
Vol.1「2年で味わい尽くす、ラー博30年史」(2022年6月17日)
Vol.2 伝説の銘店 和歌山「井出商店」(2022年6月24日)
Vol.3 創業90余年 福島・会津「牛乳屋食堂」(2022年7月15日)
Vol.4 魚粉のパイオニア 川越「頑者」(2022年7月31日)
Vol.5 敦賀ラーメンの老舗「中華そば一力」(2022年8月29日)
Vol.6 時代の先を行っていた伊豆「あまからや」(2022年9月18日)
Vol.7知る人ぞ知る 岡山・笠岡「中華そば坂本」(2022年10月4日)
Vol.8札幌ブラックの先駆者、札幌「名人の味 爐」(2022年10月31日)
Vol.9 青森・煮干しラーメンを首都圏に広めた目黒「勝丸」(2022年11月5日)
vol.10 『呼び戻し』スープの発祥久留米「大砲ラーメン」(2022年11月23日)
vol.11幻の店が13年ぶりに復活!! 青森「八戸麺道 大陸」(2022年12月14日)
vol.12鍋焼きラーメン発祥のお店。高知・須崎「谷口食堂」(2023年1月3日)
vol.13とんこつを極めて35年。「麺の坊 砦」(2023年1月27日)
vol.14東京では味わえない 飛騨高山「やよいそば」(2023年2月21日)
vol.15新東京ラーメンの一翼を担った「野方ホープ1994」(2023年3月1日)
vol.16九州ラーメン総選挙第1位に輝いた「元祖名島亭」(2023年3月14日)
vol.17伝説のラーメン店復活 函館「マメさん」(2023年3月31日)
vol.18ラーメン業界のステージを上げた 「支那そばや」(2023年4月20日)
vol.19天才 中村氏がプロデュース「IKEMEN HOLLYWOOD」(2023年5月16日)
vol.20パスタの国イタリアからの逆輸入「カーザ・ルカ」(2023年5月31日)
vol.21 佐野実最後のプロデュース 唐津「らぁ麺むらまさ」(2023年6月26日)
vol.22昭和13年創業、京都の最古参ラーメン店「新福菜館」(2023年7月16日)
vol.23時代の先を走っていた銘店「げんこつ屋1994」(2023年7月17日)
vol.24唯一無二のツナコツラーメン「YUJI RAMEN」(2023年8月7日)
vol.25茶系とんこつラーメンの銘店「ふくちゃんラーメン」(2023年8月28日)

あの銘店をもう一度 第22弾 久留米「魁龍博多本店」
※魁龍博多本店の詳細はコチラ
出店期間:2023年9月19日(火)~10月2日(月)
※魁龍博多本店の出店期間は2週間ですのでお間違えなく
出店場所:横浜市港北区新横浜2-14-21 
     新横浜ラーメン博物館地下1階
     第20弾 「YUJI RAMEN」の場所
営業時間:新横浜ラーメン博物館の営業に準じる。
     詳細はコチラ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?