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【連載】Vol.9 青森・煮干しラーメンを首都圏に広めた目黒「支那そば勝丸」

ラー博ではあの銘店をもう一度という企画がスタートしているが、今度は『あの銘店をもう一度“94年組”』というのが並行して始まるらしい。

“94年組”というのは1994年創業当時のメンバー、8店舗のことである。これまでの企画は3週間のリレー形式だったが“94年組”は3カ月のリレーになるようだ。その第一弾が「支那そば 勝丸」である。

1994年創業時のメンバー

「勝丸」の創業は1972年(昭和47年)、屋台から始まった。あちこち移動しながらの営業で苦労も多かったようだ。

屋台でラーメンを作る後藤さん(昭和50年代)

店舗を構えたのは1984年(昭和59年)のことである。1991年になると目黒に移転。その当時、目黒の会社で働いていた私にとって会社から一番近い「有名ラーメン店」になった。もちろん何度も食べに行ったがそのお店が新横浜ラーメン博物館に出店すると聞いて凄く驚いたことを記憶している。

昭和59年。念願の店舗を白金に構える。

あまりにも身近すぎたからだ。ラー博がオープンし、何度目かに行った時に「勝丸」でも食べた。会社から徒歩2-3分で食べに行けるところにあるのにわざわざ新横浜まで行って食べたのだ。経験というのは大事なのだ(笑)。

「勝丸」店主の後藤さんは青森県出身。当時は、青森に煮干しラーメンの文化があることなど、まったく知らなかったし、世の中でも知られてなかったはず。今は、青森のラーメンが全国の「煮干しラーメン」に大きな影響を与えていると言っても過言ではない。ラー博もそんな時代の先読みをしていたのかどうかわからないが、「勝丸」に目を付けたのは今となっては実に素晴らしい。「勝丸」も売り出し方をもっと“青森煮干”寄りにしたら、どうなっていただろうか?時代は別の方向に動いたかもしれない。

今回使用する煮干しは境港産のマイワシ

最近の「勝丸」には創業者の後藤さんが戻って来て自ら厨房に立っていた。苦戦していてメニューも増やしていた。なりふり構わず「全国ラーメン紀行」と名付けて熊本や新潟のご当地ラーメンも提供していた。さすずめ「一人ラーメン博物館」である。器用なのだろう、狭い厨房ながらいろんなメニューを創り出していた。

今年80歳を迎える後藤店主

外出する際に店の前を通ることもあるので掃除中の後藤さんに会うことも少なくなかった。そんなある日、「ちょっと相談したいことがある」と言われ、後日、時間を決めて会いに行った。後継者問題で悩んでいた。いろいろ話を聞いているうちに「そういえば、いろんなラーメンを作っていますがレシピは揃ってるんですか?」と聞くと「レシピ?そんなもの、うちには無いよ!食材だって日々変わるんだから決まった作り方じゃなくて味を見て変えていかなきゃ!」と豪快である。レシピなしで50年もやってきたのか!(笑)
『あの銘店をもう一度“94年組”』のコンセプトは“1994年当時の味”だそうだ。後藤さんの頭の中にあるレシピのデータベースから引っ張り出してくるのだろう。もちろんわざわざ新横浜にあの頃の「勝丸」を食べに行くのである。タイムスリップみたいでこれもまた楽しい。
出店期間:2022年11月7日(月)〜2023年2月26日(日)予定。
文/大崎裕史

📖バックナンバー
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Vol.2 伝説の銘店 和歌山「井出商店」(2022年6月24日)
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Vol.4 魚粉のパイオニア 川越「頑者」(2022年7月31日)
Vol.5 敦賀ラーメンの老舗「中華そば一力」(2022年8月29日)
Vol.6 時代の先を行っていた伊豆「あまからや」(2022年9月18日)
Vol.7知る人ぞ知る 岡山・笠岡「中華そば坂本」(2022年10月4日)
Vol.8札幌ブラックの先駆者、札幌「名人の味 爐」(2022年10月31日)

あの銘店をもう一度”94年組” 第1弾 目黒「支那そば 勝丸」
※支那そば勝丸の詳細はコチラ
出店期間:2022年11月7日(月)~2023年2月26日(日)予定
出店場所:横浜市港北区新横浜2-14-21 
     新横浜ラーメン博物館地下1階
     ※第6弾「中華そば坂本」の場所
営業時間:新横浜ラーメン博物館の営業に準じる。
     詳細はコチラ

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