【連載】Vol.13とんこつを極めて35年。一風堂 河原成美氏の一番弟子のお店「麺の坊 砦」
新横浜ラーメン博物館創館時(1994年3月6日)、出店店舗8軒の内、私が知らない店が二つあった。「すみれ」(札幌)と「一風堂」(福岡)である。
そしてこの知らなかった2軒こそがその後の日本のラーメン地図を塗り替えていく起爆剤であった。今や、この2軒は全国でもトップクラスの知名度がある有名店と言っていいだろう。
この2軒は、ラー博に入ってなかったら、その後の快進撃はあったのだろうか?たまにそんなことを思うことがある。
そして「一風堂」だが、ラー博出店時は他の飲食業はやっていたものの本店のみ。しかし、ラー博を起点として首都圏に進出し、その後、全国展開どころか、世界進出までしてしまうのだから驚きだ。そして、その初期のキーマンこそが「麺の坊 砦」の店主・中坪正勝さんである。
富山出身の中坪さんはバックパッカーのようにラーメン行脚をしていて、福岡で「一風堂」と出会い、運命のように住み込みで働くことになる。前述通り一店舗しかなかった。つまり中坪さんは“先見の明”を持った一人だったのだ。
そしてもう一人、そんな審美眼を持っていたのがラー博館長である。「一風堂」の河原成美さんを口説き落として、ラー博出店にこぎ着けたのである。そしてその店長として中坪さんは新横浜にやってきた。
後に恵比寿店、高田馬場店と拡げていく際も陣頭指揮を執り、首都圏の責任者となっていった。気が付けば「一風堂」で13年。創業者の河原成美さんが店を出した歳と同じ年齢になっていた。
そこで2001年10月、一番弟子として独立、「麺の坊 砦」の店主となった。店名は師匠の河原さんが名付けた。
「麺の坊 砦」の開店時の私の記事はまだネット上にある。導入部分にはこう書いてある。
『開店日の花輪の数と送り主の名前などを見るとこの店の注目度と期待度がわかる。また店主の人脈の広さと人徳がこういうところに現れている。』そして締めくくりはこうだ。『新世紀らしいラーメン店の誕生といえる。』
10年目の2011年にラー博に出店。九州の豚骨ラーメンとはまた違ったアプローチの「麺の坊 砦」として凱旋出店である。
今や「麺の坊 砦」は創業21年。日本最大のラーメン激戦区・東京で20年、同じ場所で商売を続けることは難しい。そんな高いハードルをクリアしてきた「麺の坊 砦」がまた3週間だけラー博に復活する。
日々進化し、パワーアップした「麺の坊 砦」の出店は2023年1月31日(火)~2月20日(月)。
サプライズがあるかもしれないので私も初日を狙って伺うつもりだ。
文/大崎裕史
📖バックナンバー
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Vol.2 伝説の銘店 和歌山「井出商店」(2022年6月24日)
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Vol.4 魚粉のパイオニア 川越「頑者」(2022年7月31日)
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