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余談的小売文化論

「知性ある消費」をテーマに、現代の消費行動や理想論と現実的な問題のギャップについて考え、言語化しています。「正解」を語るのではなく、読み手が自分なりの正解を見出すための一助になる… もっと読む
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#マーケティング

「応募者プレゼント」をプロモーションに変える方法

「応募者プレゼント」をプロモーションに変える方法

今月の「大人MUSE」を読んでいたら、プレゼントの応募スタイルが「このページをインスタにアップ」に変わっていて驚いた。

雑誌のプレゼントページといえば、これまではがきにアンケートや希望商品を書いて郵送するのが当たり前だった。

もちろん今もほとんどすべての雑誌が同じスタイルを踏襲しているはずだ。

しかし、年賀状ですら出さない人が増えている今、わざわざ官製ハガキと切ってを購入して必要事項を記入し

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「マス」の空洞化

「マス」の空洞化

イノベーションは5つの段階を経てマスに浸透していく。
そう提唱したのはスタンフォード大学の社会学者であるエベレット・M・ロジャースだ。

イノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティと段階を経るにしたがって市場が拡大し、レイトマジョリティ、ラガードとマス化するともはや「当たり前のもの」になる。

このイノベーター理論はマーケティング論の教科書にも載るほどよく知られたものだが、インターネッ

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ビジネス視点で見る女性誌の読み方

ビジネス視点で見る女性誌の読み方

今週末はいよいよ『ビジネス視点で読み解く女性誌のイマ』の開催日。

当日は、それぞれ具体的にこんな質問項目をもとにトークを展開していきたいと考えています。(絶賛資料作成中!)

第一部:「ビジネスパーソン的雑誌の読み方と雑誌の未来」
①編集的雑誌の読み方
・雑誌をチェックするタイミング
・注目している雑誌
・ファンの多い雑誌は何が違う?
・雑誌の知識を仕事に生かすコツ
②雑誌から読み解く最近のトレ

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老舗とそれ以外を分けるもの

老舗とそれ以外を分けるもの

半年ほど前からずっと考え続けてきたテーマのひとつに『老舗』がある。

老舗と呼ばれるブランドや企業は、いつどのタイミングで『老舗』と呼ばれるようになったのか。
『老舗』を分解するとどんな要素が内包されているのか。

ことあるごとにこの問いを取り出してはこねくり回し、ヒントになりそうな本を見つけては考えを繰り返し、半年ほど経ってようやく暫定的な答えがでた。

そのヒントとなったのが、虎屋社長とエルメ

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今、コスメが売れる理由

平日でも混み合う百貨店のコスメ売場を通り抜けるたび、なぜ今こんなにもコスメだけが売れるのだろうか、と疑問に思ってきた。

国内外問わずコスメの売上は好調で、百貨店のコスメフロア増床や新たなコスメブランドの誕生など、小売業界でも唯一明るいニュースが多いのも特徴だ。

市場規模の推移をグラフでみると、その勢いがよくわかる。

(出典:矢野経済研究所)

しかし、なぜこの5年ほどでコスメ市場がここまで急

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ブランディングとは期待値コントロールである

ブランディングとは期待値コントロールである

ほんの少し前まで、『ブランディング』といえば商品やサービスにいいイメージを持ってもらうための営みを指していた。ともすると、実物よりもよく見せる方法、という意味すら含んでいたのではないかと思う。

メリットをアピールし、ヴィジュアルを作り込み、人気のタレントを使い、『なんとなくよさそう』という印象を作ることが自分たちの商品を選んでもらうためのひとつの戦略だったからだ。

しかし今や、いい評価も悪い評

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オケージョン消費の可能性

2年ほど前に『これから洋服を売るために必要なのは、"ハレ"の場をどう作っていくかなんじゃないか』という話を書いたのだけど、年々この仮説への確信が深まっている。

そして当時想定していた『ハレの日』はちょっといいレストランやバーなどデート向きのものがメインだったけれど、最近はもっと幅広くカジュアルなオケージョンで消費が起きていることを感じている。

この流れを顕著に表しているのが最近注目して毎月読ん

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「人柄」の価値が高まる時代に #EC夜会

「人柄」の価値が高まる時代に #EC夜会

5/15(水)の夜、「これからのブランドの『伝え方』」と題したイベントでモデレーターをしてきました。

私自身まなびがいっぱいのイベントだったのですが、特に印象的だったのはゲストの3名全員がとても自然体でSNSをやっていらっしゃるのだなと感じたこと。

SNSにまつわるイベントはどうしても『いかにフォロワーを増やすか』『どうすればバズるのか』といった話になりがちなのですが、お三方とも作り手と受け手

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「平成ベストセレクション」マガジンを作りました

「平成ベストセレクション」マガジンを作りました

2017年に有料マガジンをはじめて、早くも2年近くが経ちました。

『余談的小売文化論』に格納した記事数も200本を超え、少しずつ少しずつ、読んでくださる方の数が増加していくことに嬉しさを感じながら、これまで続けてくることができました。

ただ、アーカイブが増えてくると最近マガジンを読み始めてくださった方から『過去の記事は読めないのですか』とお問い合わせいただくことも増え(今月購読をはじめた場合先

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ブランドは『参加するもの』になっていく

ブランドは『参加するもの』になっていく

今や日本でも広がりつつあるD2Cブランドだが、その要諦は中間マージンがないことでも原価率が安いことでもなく、自分たちの思想に基づいた体験を顧客に提供できる点である。

ブランドとの出会いから検討、購入、そしてサポートまでの体験を一気通貫でデザインし、商品というメディアを通して世界観を伝える。

モノも情報も溢れかえる中で、選ばれるために彼我の違いを生むには『商品の質』ではなく『商品を通した体験の質

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私たちが戦うべき本当のライバル

私たちが戦うべき本当のライバル

企業の戦略を考えるとき、私たちはいつも『ライバル』について考える。

市場を知るとはライバルが誰で、彼らがどんな手を打っているかを知ることであり、自分たちの立ち位置がどこかを認識することだ、と。

業界内でマーケットシェアがどれだけあるか、他業種と比べて市場規模はどのくらいか、そうやって常に『他者』と比べている。

しかし、ふと自分がモノを買う時になって思うのだ。

最大のライバルは、『買わない』

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キャズムを超えるために必要な「新しさ」のアンラーン

キャズムを超えるために必要な「新しさ」のアンラーン

日頃新しいサービスやプロダクトに接することが多いのですが、ある程度成長すると必ず『キャズムをどう超えるか』という話になります。

イノベーター理論でいうアーリーアダプタまでは普及したけれど、マジョリティに移行するための溝(=キャズム)を超えられず、停滞してしまうサービスやプロダクトは山ほどあります。

私自身百貨店を辞めた後はずっとスタートアップ界隈にいるのでこの問題についてずっと考えてきたのです

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「でいい」消費が広まる時代に

「でいい」消費が広まる時代に

先日、「無印良品は無印良品"でいい"を目指している」という話を聞き、たしかに今は『でいい』消費の時代なのかもしれない、と思いました。

無印良品もユニクロも、そしてインテリアでいえばニトリも、今成功していると言われるブランドはどれも『これがいい』ではなく『これでいい』というポジションを積極的に取りにいっているように見えるものばかり。

私たちはブランドを確立する上で、ついどうすれば『これがいい』と

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今、求められている『ストーリー』とは何か

今、求められている『ストーリー』とは何か

大学進学で上京して以来10年以上テレビを持っていない私ですが、この1、2年はなんだかんだでドラマを中心にテレビを見る機会が増えました。

スマホで視聴できる環境が整い、NetFlixをはじめ有料課金コンテンツが当たり前になったことで、これまでテレビを持っていなかった層が逆にお金を払ってでもテレビ番組を観たいと思うようになってきているという流れは面白いなと我ながら思っています。

特に最近は『半分、

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