産科混合病棟で働きながら、私が未来に想うこと
はじめまして!
POTEに参加している助産師のキャリーです✨
今回は、『産科混合病棟』について。
▢ 就職は決まったけど4月の入職時点まで配属がわからず不安な助産学生
▢ 「赤ちゃんとママが好きで助産師になったのに…他科の患者の受け持ちばかり」と悩んでいる新人さん
に向けて、私が体験した臨床のエピソードも交えながらお伝えしたいと思います。現状について統計にも触れつつ、未来に想いをはせながら…noteに記事を書いています。
とある病院の1人の助産師の考えですが、『産科混合病棟』から『混合病棟』に移行する未来を危惧し、『助産師としての専門性やアイデンティティは…?』という不安と向き合うための思考過程を表現できればと思います。
そして、この助産ケア1つ1つが産科を守る未来につながればと思っています。
このような表現の機会を頂き、POTEの杏奈さんに感謝申し上げます。
ある日の午後、
「最近、他科の入院多いですね…」助産師の後輩が寂しそうに呟いた。
この言葉から、後輩の『助産師としての専門性を発揮したい』や『妊産婦さんにケアを届けたい』という想いが痛いほど伝わってきた。
もどかしさも…やるせなさも…
一方で、そんな後輩の呟きを聞いたとき、私には”ベッドを少しでも稼働させたい”という病院の経営的な視点が頭をよぎった。この経営に、私たちのボーナスの行方、生活がかかっているのも事実だからだ。極論、人の命がかかっている医療でビジネスの視点で考えるべきではないことかもしれないが、持続可能でなければ医療は続けられないという現実が・・・。
数字で見る”混合病棟”
日本看護協会が2016年度に実施した調査では、分娩取扱施設の約8割が産科混合病棟だというのだ。そこに勤務する助産師が、産科以外の患者さんの対応をしている。この調査では、産科混合病棟化の傾向は今後も続くものと予測されている。
その背景には『少子高齢化』があると頭では理解していても、感情レベルでは『助産師なのに、助産師として働けないの?』といった心理的抵抗感が透けて見える。
そんな葛藤とは裏腹に、2022年上半期に生まれた子どもは38万4000人余りと、40万人を下回る数字に驚かずにはいられない。
2021年の81万人というセンセーショナルな数字も飛び越えていくインパクトのある数字。いとも簡単に、データは私たちに現実を突きつける。
現状を知るという意味で『全国の産科混合病棟の割合』や『背景にある少子化の数字』を用いましたが、ここからは『混合病棟のポジティブな側面』も3点ほど紹介したいと思います。
混合病棟にも良い面がある?!
1.空床を有効活用できること
今後、多死社会を迎える日本にとって病院も生き残りをかけた生存競争が予想されます。私たちの働く環境、ましてや妊産婦さんに医療的なケアを行う場を守る側面もあると考えています。助産師の雇用を守るという意味でも…(病院が助産ケアを行う全ての場ではないことは一度置いておいて)
2.患者さん同士の交流
今でも思い浮かぶ情景があります。
ある日、母児同室中の褥婦さんが、赤ちゃんがなかなか泣き止まずデイルームで抱っこしながら、一生懸命あやしていました。恐らく、同室の産後ママを気遣って、デイルームに出てきたのかもしれません。そこには、椅子に座っていた婦人科の70代の女性が家族と電話をしていました。
赤ちゃんの泣き声がご迷惑じゃないかと、頭を下げながらあやす褥婦さん。婦人科の女性が電話を終えたあと、「謝らなくていいんだよ。未来を繋いでくれて、ありがとうね。」と優しい口調で声をかけ、ガラケーの鈴のキーホルダーで一緒に赤ちゃんをあやしていました。表情が和らいだ褥婦さんの顔と70代の女性の優しい眼差しが忘れられません。こんなホッコリする光景が時々生じるのが混合病棟の副産物なのかもと思うのです。
3.周産期以外の分野の看護を学ぶ機会、実践経験を得たこと
婦人科疾患の患者さんからは、周手術看護、終末期看護などさまざまな看護を学ばせて頂きました。特に終末期の患者さんから、倫理について深く考える機会を得ました。
晩産化、ハイリスク分娩が増える中、婦人科看護で学んできたことが活かせる機会を何度も経験してきた今だから言えますが…新人時代は目の前のことにいっぱいで、他科で学んだ看護が周産期に活かされる知識や経験になることをすぐには気づけませんでした。
ただ、これも程度の問題だと私は思います。
婦人科の患者さん以外にも、近年は眼科や消化器内科、呼吸器内科と科の領域は広がりつつ、症例も増えつつあります。これをポジティブな側面で捉えるならば看護力向上の機会であることは間違いありませんが、他科の割合が産科の比率を上回ると、ポジティブな側面からモチベーションを維持したり、病院経営の大人の事情を飲み込むことすらも厳しくなってくると思うからです。
「自分らしく助産師を続ける選択をしてほしい」
最近、新人助産師さんから頂くご相談の中にも、『入職後に産科業務に携われていない焦りや漠然とした不安の声』が聴こえてきます。
病院や施設によると思うので、一概に言えませんが…。いつ産科業務が出来るか見通しが分からなかったり、学生時代の友人から「もうお産介助しているよ!」と聞いた日には、不安や焦りの気持ちでいっぱいになるのは無理もないと思います。
もし、混合病棟にいて『助産師としての専門性やアイデンティティは…?』と自分の看護に迷いが生じたり、悩んでいるならば、立ち止まって考えてみてもいいと思います。ポジティブな視点で乗り越えるもよし、働く環境を変えるという行動を起こすもよし。新人さんには『自分らしく助産師を続ける選択をしてほしい』そんな想いでいます。
『またここでお産したい』のその先に
私自身は、混合病棟で他科の看護を学ぶことを選択し続けています。でも、ただ受け入れているだけではないことを最後にお伝えしたいと思います。『助産師としての専門性やアイデンティティは…?』という不安や葛藤はもちろんあります。
だけど、『いま目の前の妊産婦さんに、またここでお産したい』って思ってもらえるような助産ケアを心を込めて提供することを意識しています。小さなことかもしれませんが、『またここでお産したい』と思った女性が次子を妊娠・出産したり、友人などに紹介して分娩・産褥入院でベットを埋められたら…そんな未来を夢みています。
そして、この想いをチームで共有して、この助産ケア1つ1つが産科を守る未来につながれば…そのケアの先に『またこの助産師にケアしてほしい』と願う妊産婦さんがいると信じて、今日も臨床現場で現実と向き合い、未来に想いを繋いでいこうと思います。
こんな拙い文章を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。