野外活動を快適に!植物学者のカバンの中身 | 素早い出し入れと防水にこだわりました
色んな方のカバンやメイクポーチの中身を見るのが、とても好きです。経験の中で試行錯誤して選抜された実用的でお洒落な品々の情報をお裾分けしてもらっている、積年の集大成を一気に見せてもらっている、そんなお得な気持ちになるんです。
そんな私がいつも「覗けたらな」と思うのは、植物調査員のカバンの中身!というのも、私は植物調査員として働き始めて8年目、未だに「これで決定版!」というカバンの組み合わせと荷物配分に辿り着けていないのです……!
前職である北海道の調査会社では5年間、調査用ショルダーバッグ+ヒグマ対策で腰紐にスプレーと鉈+登山用具用のザック、というてんこ盛りスタイルで固定でした。
植物調査員は野外での作業数が多く、それに応じて細々した荷物が多いのが一番の課題。山や野原を練り歩くので救急キットや食糧、雨具を持ち、保護や駆除対象の植物を見付けたら写真を撮り、野帳や画板に観察したものごとを書き、必要なら植物を採集して個別の袋に入れ、記録場所のGPSを落とし、必要ならその場で図鑑を引き………などなど、やることと荷物が、やることと荷物が多い………!
しかも、去年からは拠点が北海道からアイルランドに変わり、アイルランドの雨の多さを初体験。山に調査に行けば必ず降られ、愛用していた図鑑はカビて買い直し、常に濡れながら調査する前提でカバンと中身をカスタマイズする課題も出てきました。
ということで、登山+記録+標本採取の荷物を全て快適に持って使えるスタイルの確立を目指して、カバン事情を新調したい。けれどネットで調べてもなかなか植物調査員のカバンの中身は出てこない……なら、私がやってみよう!ということで今回は、暫定で考えたアイルランドでの植物調査用のカバンの中身を公開して、「もっとこうしたら良いのでは」などなど、皆さんのアドバイスもいただけたらと思って記事を書いてみました。
考える手順
今回はこれぞというカバンを選ぶぞ!という意気込みの元、以下の手順でカバンとその中身を考えてみました。
1)使うアイテムの書き出し
まずは、野外に出る時に使う主な道具をざっとリストアップします。
2)現地で使う頻度の振り分け
次に、現地で作業している時をイメージして、各アイテムの使う頻度を考えます。頻度のより高いもの、より低いものでまとめ、身体のどこに置いておきたいか(手前のショルダーバッグか、後ろのザックか)の配置を決めました。そうすると、だんだん各バッグで欲しい容量が決まってきます。
3)細かいストレス要因の軽減
今までに作業していた感じたストレスを書き出してみて、それをなくすためにはどうなったら良いのかを考えてみます。
そこから2)で容量を決めた各バッグに対して欲しい機能や構造を絞ることで、より自分に合ったカバン選びをしていこうとしました。
調査で使うアイテム
いつも使う道具はざっと以下のような感じです。
1)植物標本の採集用
標本というのは、現地で採取した生の植物のこと、あるいは押し花状に保管してあるもののことです。顕微鏡などで室内でゆっくりどの種かな?と観察が必要な時や、その種が生育していた記録証として植物を採取することが多々あります。これらはそのための道具。
本来は、採ったその場で標本を押すのが形も綺麗に保てて理想的なんですが、押す作業は意外と時間がかかります。予算管理で調査時間が限られているため、基本はラベル付けした袋に個別に入れて、車/家に帰ってから押しています。
ルーペ
いわゆる虫眼鏡。植物は細か~い部分を見ることが多いので、いつでもどこでも必需品。首から下げていると、生き物好き感が出るのも◎
図鑑
図鑑は引いている時間が現地では少ないので、持っていても開かないことが多いです。が、例えば標本を持って帰れない希少種の場合、本当にその種かちゃんと確かめるために現物と図鑑を見比べる必要があるので、やっぱり念のため持っておきたい。しかし重いしカビる。防水と、出来れば軽量化が出来たら良いな~
フックショット
水深のある池や湖に投げ入れて、水草を採取する鉤縄。鉤がかさばる&あらゆるところに引っかかるので、個別に収納したい。
パチンコ(スリングショット)
高い場所にある樹木の葉や種子を採りたい時、便利そうだなと思ったのが半分、ロマン半分で購入したもの。特にマツの仲間を見分けるために、種が入っている新鮮な松ぼっくりが欲しい!でも届かない!ということがあるのです。実際に、東南アジアなんかの高木が多い地域では、パチンコやライフルで樹木の種子を採る手法が確立されています。
北海道ではこれを持って先輩と調査に行くと、毎回「今日はみはら先頭ね」と頑なに背後を取られないようにされました😂
アイルランドでは、パチンコの使用に関する法律や規制を調べ切れていないのと、使う玉も環境に問題のないもの(現地の石など)を使いたいのですが、入手出来るか不明。ということで今のところ使う予定は未定です。
2)データの記録用
調査内容によって多少変わりますがこのあたりがあれば、基本的な生育場所の環境、生育時の様子、生育面積、地形(凹凸)や植物のサイズなどの記録が出来ます。
折れ尺
畳める定規、その名も折れ尺。
スケールを入れて対象のサイズが分かる写真を撮ったり、調査する枠組を作るのにとっても便利😊アイルランドのホームセンターには売っていないので、日本帰国中にあと3本くらい買っていきたい。
防水野帳
どちらも防水。LEVEL BOOKは測量用に作られた野帳で、学生時代からずっとお世話になっています。片手に収まるサイズ感や書き心地が本当に大好き。Chartwellは会社支給で使い始めましたが、短辺綴じでめくりづらいのを差し引いても、ページ数が多いので好きです。
双眼鏡
アイルランド行が決まったときに、餞として友人が買ってくれた双眼鏡。双眼鏡は、近付けない場所に生えている植物を見る時に使っています。例えば、岸壁に生える草花、谷を挟んで向こうの尾根の大体の植生、あるいは頭上高くにしか葉が生えていない樹木を観察する時などなど、持っていないと困る場面が多く、大活躍中です。
一眼レフ
前に使っていたOLYMPAS-PENは湿原調査の時に私と一緒に沼に落ちて再起不能に…。その後二代目として、カメラに詳しい先輩に「防水防塵耐寒だからおすすめ」と聞いてPENTAX k-70を購入。購入額は10万円以下で、ファインダーでもバリアングル液晶モニターでも撮れるところ、アウトドアに適した性能がとても気に入っています(2500円くらいでマクロレンズも購入出来ます✨)。念のため防水ケースに入れてから、さらに防水ショルダーバッグに入れる予定。
3)アウトドアの必需品
調査地は都市部の廃屋~河川敷~牧草地~野山と様々。車から離れて調査する場合は、大体このあたりを持ち歩きます。
エピペン
エピペンは筋肉に射すアドレナリン注射のことで、アレルギー反応が出た時に使います。スズメバチアレルギーなので、いつもお守りのように持ち歩いています。ゾンビゲームでもアドレナリン注射のアイテムを治療に使ってますよね!
ナイフ
大学の研究室でとてもお世話になった先輩に、卒業後、北海道に行く際の餞としていただいたOPINELの折り畳みナイフ。餞に武器を貰うという物語のようなシチュエーションに、当時とても興奮しました。
ストレス要因と解決案
1)道具の出し入れの時短
やることと道具の多さ、時間制限、移動中は両手を空けておけることを考えると、植物調査員のカバンに最適なのはショルダーバッグ!と前職入社時に教えてもらいました。
北海道では密集したササの藪を漕ぐ機会が多く、カメラとGPSなど、アイテムを首からかけるのは、傷ついたり紐が切れて落としたりするリスクがありNG。ショルダーバッグはそう言ったアイテムを手元で出し入れが出来るので、画板や野帳で記録したら、それをしまってカメラを取り出して写真撮って…と、野外で持ち物を取り出すのがスムーズで、ストレスがリュックより少なかったです。
ただ一つネックがあるとすると、荷物量が増えると片側の肩に負担がかかりすぎること。ということでリュックと併用して使えるサイズのものが良いかも。
2)防水機能かつ取り出しやすいデザイン
アイルランドでは、常に雨!雨!雨!の天気で、やっぱり防水機能があると良いな…と思い、サイクリスト用ショルダーバッグを購入して使っていました。
我ながら良いアイデアと思った矢先、自転車に装着するために背面が頑丈に作られていて、思ったよりも内部が広がらない。標本をポイポイ入れられず、画板や野帳を取り出すと、開口部が狭いので他のアイテム、特に手袋も一緒にこぼれてややストレス…
手袋は植物や虫の刺から守るため、皮製必須なんですが、これだとカメラやペンの作業はやりづらく、移動や植物採集の時は手袋装着、細かい作業は外す…と着脱が激しく、かばんの一番上に入れることが多いんです。そのせいで他のアイテムに巻き込まれてこぼれやすいというネックがあり、これも何とか解決したい。
3)採集した植物標本を潰さない
採集した植物は車や家で押し花になるまで、出来るだけ生育時の形を保っておけたらベターです。が、花や果実は特に少しの刺激でバラバラになってしまいやすく、激しく荷物を出し入れするショルダーバッグに入れておくともうぐちゃぐちゃに…特におしべやめしべは種を決める大事なパーツなので、原形を留めておきたい…!
ということでリュックの一室を標本専用にして入れておきたい、というのもカバン選びの大事なポイント。
暫定版△カバンの中身
以上のことを詰め込んで、カバン+アイテム配置が暫定的に決まりました!ザックとショルダーバッグ併用です。ウェア、手袋、カバンはほぼ新調しました◎
1)ザックの中身
ザックのこだわりは、何と言っても2気室以上あること!一室は標本袋入れ専用に、そしてもう一室は泥んこまみれの標本と隔離して食糧や着替えを入れたい!というのがマストでした。
今回購入したのはColumbiaのBlueridge Mountain。1万円以下で30Lの2気室+フロントポケット付きという収納力と、肩紐も丈夫で、腰ベルトもあるので荷物が重くなっても安心な作りが気に入りました。ColemanのWalker33も同じくらい良いなーと思っていたんですが、腰ベルトのしっかり感と、差し色になるパープルの色味でColumbiaに。
防水リュックは防水機能確保のためファスナー数が少ない=仕切りが少ないことが多いので、泣く泣く断念。取り出す頻度の低いものだけを入れておけば、防水のザックカバーで取り出しにくくなってもストレスが少ないんじゃないかなと思っています。
図鑑は…雨でカビたことを考えると、自炊してPDFをタブレットに入れてしまったら軽量&防水になるのではと画策中。
2)ショルダーの中身
使う頻度が高くて、リュックからの出し入れでは時間がかかりすぎるものをショルダーにまとめて、手元でスムーズに取り出せるようにしました。
カメラも入れる&頻繁に開けるのでこちらは防水のものをチョイス。餅は餅屋、釣りグッズメーカー・Stream Trailから選ぶことにしました。
Stream Trailのショルダーは色々なサイズが取り揃えてあり、今回はザックと併用しても邪魔にならないギリギリのサイズ、ということでMusselを選びました。防水と引き換えに仕切りが少ないので、そこはダイソーのバッグインバッグを購入予定。
デジカメはセリアで買った電話線のようなカールコードストラップでカバンに装着。撮りたい植物まで近付けつつ落とし物も防止できる優れもの。
皮手袋・ゴム手袋はスマホやペンの作業と採集作業の行き来で取り外し頻度が高く、ショルダーへの出し入れでも煩わしいので、中に入れずセリアのグローブホルダーで外付けにしました。
今回のカバンの中身改善中、100均に色々と助けられました。痒いところに手が届くアイディア満載で、デザインも可愛いグッズの溢れる日本の100均は唯一無二。アイルランドに住み始めてから、Youtubeの一人暮らしDIY収納術を見た後、セリアもダイソーもないことに絶望。本当に凄さを痛感しています。帰国中の今、色々買うぞ~!
というわけで、植物調査員のカバンの中身(案)でした。今までで一番システマティックに検討出来た気がしています!が、また野外で実際に使ってみて、色々と改善点が出てくるだろうなという気はしています。
「もっとこうした方が良い&これおススメ!」などありましたら、是非皆さん教えてください!
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