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10秒で読める小説

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100作書けたので、次の目標は150作!ってことでボチボチ書いていきます。
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2022年10月の記事一覧

【10秒で読める小説】神在月

【10秒で読める小説】神在月

我は大国主命だ。
毎年この季節、八百万の神々が、我が出雲大社を訪れる。

だが近年困った事態が起こっている。
妙な格好の者達が来ては
「菓子をくれねば狼藉するぞ」
とぬかすのだ。

天照大御神は
「天岩戸に閉じ込めぃ!」
と怒り狂うし、
須佐男神は草薙剣を振り回す。

あぁ今年もまた縁組の会議ができぬ…。

【10秒で読める小説】懐かしい味

【10秒で読める小説】懐かしい味

僕は日本で人気カレー店を営む、インド人だ。

「ここのカレーは本場の味なのに、なぜか懐かしいんだよな」
客はみな、不思議そうに言う。

「アリガトウ、ゴユックリ」
と笑顔で言い、僕は厨房に戻った。

日本人である僕の妻が、仕込み用の鍋をかき混ぜながら呟く。
「肉じゃがをリメイクしたカレーが、こんなに流行るとはね」

【10秒で読める小説】気味の悪い道

【10秒で読める小説】気味の悪い道

凍えるような朝でした。
布団が恋しくて家を出るのが遅くなった私は、高校まで近道で行く事にしました。
墓地の横の気味の悪い道です。
足元からゾッとする冷気が立ち昇ってくるような気がします。
私は悪寒が止まりません。
駆け足で通り過ぎました。

学校に着いて大変な事に気づきました。
靴下をはき忘れていたのです。

【10秒で読める小説】一目惚れ

【10秒で読める小説】一目惚れ

十歳の娘に、妻との馴れ初めを聞かれたんだが、話していいものかな?

一目惚れだった。

だから、当時付き合っていた彼女にLINEで別れを告げ、惚れた子をデートに誘ったんだ。

でもデートに現れたのは元カノだった。
慌ててLINEを見返すと、あべこべの相手にメッセージを送っていたんだ。

彼女に正直に話したら
「馬鹿ね」
って笑ってくれて、やっぱこの子しかいないって思ったんだ。

【10秒で読める小説】ストレスフリーライフの始まり

【10秒で読める小説】ストレスフリーライフの始まり

夢に黒猫が現れた。
「昔、川で溺れたところを助けて頂いた猫にゃ。
お礼に来たにゃ」

「律儀ね。お礼なんていいのよ」
「願いごとは無いにゃ?」

「毎日あくせく会社に行く必要のない暮らしがしたいけど…さすがに無理よね」
「わかったにゃ」
そういうと、猫は消えた。

翌日、会社へ行くと、倒産していた。

【10秒で読める小説】思い込み

【10秒で読める小説】思い込み

この頃、ストーカーにつけ回されている。
今だって、私の出したゴミをストーカーにあさられている。

「もうやめて! 私、彼氏がいるのよ」
思い切って注意したが、
「片想いだろ」
と奴はせせら笑った。

思い込みで物を言うとは失礼な。
こんな奴に構っている暇はない。
私は彼氏の家へと急いだ。

彼氏の出したゴミの中に、私への愛のメッセージが入っているかもしれないから。

【10秒で読める小説】嫁いびり?

【10秒で読める小説】嫁いびり?

「嫁子さん、あなた、食事は作らないでいいわ」
台所に立っていると姑に言われた。
「私の作るご飯はまずいって事ですか」
「作って欲しくないだけよ。掃除も洗濯もしなくていいわ」

これが嫁いびりか。
さて、どう返そう、と思っていると姑は

「日曜日なんだからゆっくりしてなさい。
かといって私だって休みたいからね、
これから我が家は週に一度、家事代行サービスを頼む事にしたわ」

【10秒で読める小説】無言の愛

【10秒で読める小説】無言の愛

夫は無口だ。

休日は黙々と趣味の日曜大工。
一緒に楽しめる趣味ならいいけど、目の悪い私には不向きだ。
余命宣告されてからも相変わらず日曜大工ばかり。もうすぐ死ぬってのに…。

そして、何も言わぬまま逝ってしまった。
最期くらい、私への愛の言葉を、言ってくれると思っていたのに…。

葬式が終わってから気づいた。
家中あちこちに手すりが設置されている事に。

【10秒で読める小説】男の見栄

【10秒で読める小説】男の見栄

肩が重い…。
見ると、みすぼらしい爺さんの霊が載っているではないか!

私はすぐに霊能者にお祓いを依頼した。
現れたのは目の覚めるような美女の霊能者だ。

「髪を艶々にセットした、タキシード姿の老紳士の霊が居ますね」
霊能者は私の肩を指して言った。
どうりでさっきから、整髪料の香りがしていたわけだ。

「爺さん、美女だからって見栄はるなよ!
さっさと祓われろ」

【10秒で読める小説】自己紹介

【10秒で読める小説】自己紹介

「赤ちゃん産まれました」

妻からの一報を受け、出張先から駆けつけた。
病室に入ろうとすると、妻の声が漏れ聞こえた。

「母になったのは初めてなので、至らない点も多々あるかと思いますが、よろしくお願いします」

あれ?オフクロでも来てるのか?
ドアを開けると、妻が小さな赤子に語りかけていた。

【10秒で読める小説】蓬莱

【10秒で読める小説】蓬莱

旅行で大阪に来ている。
写真をインスタに投稿すると
友人からコメントが入った。
「551蓬莱買ってきてよ」
仕方ないなあ…苦笑しつつも、駅で買って帰った。

旅行から戻り、友人の家を訪れると、二日前に亡くなったと友人母に告げられた。
コメントしてくれた時間は、ちょうど息を引き取った時間だった。

「もっと他に言うべき事あったでしょ」

お土産を仏前に供え、私はむせび泣いた。
豚まんの匂いの向こうで

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【10秒で読める小説】リクエスト曲

【10秒で読める小説】リクエスト曲

お墓の掃除に行った時のことだ。
BGM代わりにスマホでヒゲダンを流していると、どこからともなく『それじゃない…』と声が聞こえた。

もしやと思い、BGMの曲を変える。
「♪ズン、ズンズン、ズンドコ」
『きよし!』

婆ちゃん、今でも氷川きよしファンなんだなぁ。

【10秒で読める小説】お得なサービス

【10秒で読める小説】お得なサービス

Amazonタイムセールでダイヤの指輪が半額になった。
彼女への婚約指輪を探していた僕には魅力的な価格だ。
指輪を通販で買うなんて、とは思ったが財布の事情もあり、購入した。

しかしプロポーズは玉砕、見事フラれた。
落ち込む僕に、さらに追い打ちをかける出来事が起こった。
なんと二つ目のダイヤが届いたのだ。
定期便にしていたらしい。

【10秒で読める小説】二つの事件を結ぶ真実

【10秒で読める小説】二つの事件を結ぶ真実

通勤途中、俺は腰を抜かした。
街路樹から黒髪が生えていたのだ。

逃げるように会社に行くと、何故か上司の頭が禿げ散らかっていた。
「カラスに毛をむしられたんだ」と上司は涙ながらに語った。
妙な事が続くなぁと思っていたが、すぐに気づいた。

カラスが、奪った上司のヅラを枝に掛けただけだ、と。