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至高の現代文19/09東大国語 第四問(随想)
【2009東京大学/国語/第四問(随想)/解答解説】
〈本文理解〉
出典は馬場あき子「山羊小母たちの時間」。
①~④段落。いなかに、山羊小母(めんこばんば)と呼ばれている百一歳の叔母がいる。山羊小母の家に行ったことは二、三度しかないが説明するとなると結構大変である。一見、藁葺屋根のふつうの農家だが、入口を入ると土間があって、その土間を只見川の支流から引き入れた水が溝川をなして流れている。土間から
至高の現代文19/11東大国語 第四問(随想)
【2011東京大学/国語/第四問(随想)/解答解説】
〈本文理解〉
出典は今福龍太「風聞の身体」。
①②段落。立派な顎髭のエカシ(長老)は火のそばに座り、鋭い眼光に裏打ちされた人懐っこい微笑をうかべながら、おもむろに壮年のころの熊狩りの話をはじめていた。アイヌと聖獣である熊とのあいだに猟師が打ち立てる繊細な意識と肉体の消息をめぐる豊かな関係性の物語である。エカシにとって熊は、「山」という異世
至高の現代文19/12東大国語 第四問(随想)
【2012東京大学/国語/第四問(随想)/解答解説】
〈本文理解〉
出典は河野裕子「ひとり遊び」(『たったこれだけの家族』より)。筆者は歌人で本文中の短歌も筆者の自作である。
①②段落。熱中、夢中、脇目もふらない懸命さ、ということが好きである。下の子が三歳、ハサミを使い始めたばかりの頃のこと。晩春の夕ぐれ時、四畳半の部屋の中に新聞紙の切りくずが錯乱し、もう随分長いこと、シャキシャキとハサミを使う
至高の現代文19/15東大国語 第四問(随想)
【2015東京大学/国語/第四問(随想)/解答解説】
〈本文理解〉
出典は藤原新也「ある風来猫の短い生涯について」。
①~④段落。南房総の山中の家には毎年天井裏で子猫を産む多産猫がいる。私の知る限りかれこれ総四、五十匹産んでいるのではなかろうか。猫の子というよりはまるでメンタイコのようである。そういった子猫たちは生まれてからどうなったかというと、このあたりの猫はまだ野生の掟や本能のようなものが残
至高の現代文19/16東大国語 第四問(随想)
【2016東京大学/国語/第四問(随想)/解答解説】
〈本文理解〉
出典は堀江敏幸「青空の中和のあとで」。
①段落。その日、変哲もない住宅地を歩いている途中で、私は青の異変を感じた。空気が冷たくなり、あたりが暗く沈んでゆく。大通りに出た途端、鉄砲水のような雨が降り出し、稲光をともなった爆裂音が落ちてきた。来た、という感覚が身体の奥の極に流れ込んで、私は十数分の非日常を、まぎれもない日常として生き