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2022東大国語/第四問/解答解説(再録)

「カーテンを開いて/静かな木漏れ日の/やさしさに包まれたなら/きっと/目にうつる全てのことは/メッセージ」(荒井由美)

武満徹「影絵の鏡」より

問四「そして、やがて何かをそこに見出したように思った」(傍線部エ)とはどういうことか、説明せよ。

内容説明問題。「そこ」とは「何も現れはしない小さなスクリーン」、「何か」とは老人が「何かを、宇宙からこの世界へ返すのだと言った」、「何か」と対応するものである。以上を確認した上で、傍線部に直結する場面(⑩)を整理する。筆者は、通訳者ワヤンに導かれ、星が砂礫のように降りしきる寺院の庭の片隅で、老人によって演じられる影絵に出会う。老人は手持ちの型を一つ二つ選びながらスクリーンに翳すが、蝋燭すら点されていない夜の闇の中で、何も見えるものはない。何のために誰のためにと問う筆者に対して、老人はワヤンを通して「自分自身のためにそして多くの精霊のために星の光を通して宇宙と会話している(a)/何かを、宇宙からこの世界へ返すのだ(b)」と応えたのであった。
ならば、筆者が見出した「何か」とは、まずは「宇宙から星を介して老人に届いたもの(a)」、そして「老人の影絵を介して筆者が見出したもの(b)」となるだろう。空間的に把握すると、宇宙から垂直に降りてきた「何か」(a)が、今度は直角に折れ、水平に筆者に届けられた(b)、ということになる。「何か」とは「何か」としか言いようがないもの、すなわち言葉で表現できない(バカラシイ!)、しかし筆者の心の内では確実に形をとった(創作の源泉となるものだろう)、宇宙からのメッセージ(私信)のようなものである(c)。以上を、状況が正しく伝わるように整理してまとめると、「暗闇で影絵を演じる老人がスクリーンに翳す見えない影が(b)/星の光を介して届けられた(a)/宇宙からの私信のように筆者には感じられたということ(c)」と解答できる。

→「至高の現代文/解法探究29」「22. 小説・随想の着眼」参照

〈GV解答例〉
暗闇で影絵を演ずる老人がスクリーンに翳す見えない影が、星の光を介して届けられた宇宙からの私信のように筆者には感じられたということ。(65)

〈参考 S台解答例〉
目に見えるものを超えて宇宙と会話する老人の営みに、意識を超えた大いなるものと交感する自身の音楽のあり方を見たということ。(60)

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