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読んで作品に興味を持った記事

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#読書日記

で、なんで待ってるのかわかりまてん!『ゴドーを待ちながら』(サミュエル・ベケット)

で、なんで待ってるのかわかりまてん!『ゴドーを待ちながら』(サミュエル・ベケット)

TBSラジオ、ライムスター宇多丸さんのムービーウォッチメン「桐島、部会やめるってよ」の映画評。

たしか「シンボルとなる人物が劇中の最後まで登場しない」という共通点で本作がかるく紹介されていて、ずっと気になっていました。

不条理演劇の代名詞にして最高傑作。デュシャンの泉のようなメインに対するカウンター的存在が、いつの間にか演劇史のなかでどっしりと鎮座している、そんな印象。

本書の解説にある通り

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「辛かったら逃げてもいい」は大人のエゴだよね。【書評】辻村深月『かがみの孤城』

「辛かったら逃げてもいい」は大人のエゴだよね。【書評】辻村深月『かがみの孤城』

「辛かったら逃げてもいい」。生きる術を知る大人の理屈である。しかし、子供はどうだろう。特に中学生の心の悩みは深い。その一言では効かない。「学校」と「家」以外にそんな場所がどこにある。大人になれば辛い目にあったり、理不尽なことをされたら「辛かったら逃げてもいい」とさかんに言われるようになった。その通りなのだが、子供たちのコミュニティは「親」と「先生」で構成される集団にしか属していない。それゆえ、逃げ

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現代の寺田寅彦による科学読本!『波紋と螺旋とフィボナッチ』(近藤滋)

現代の寺田寅彦による科学読本!『波紋と螺旋とフィボナッチ』(近藤滋)

星の動きなど宇宙の出来事を数式で記述する学問が物理学。そして、生物の形態や模様を数理モデルで記述するのが理論生物学。著者は生物の方の第一人者。

著者は「現代の寺田寅彦」と称される。タイトルにある通り、生物にまつわる事柄を、数学的目線とボケを入れながら柔らかく語ってゆきます。

自然界に存在している生物の多種多様な模様を目にすると、その複雑さに思わず「神様の創造」を信じたくなったりしませんか?それ

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解釈しがいのある古典!『デミアン』(ヘルマン・ヘッセ)

解釈しがいのある古典!『デミアン』(ヘルマン・ヘッセ)

ジェームズ・キャメロンは「12歳の子供とスタンフォードの45歳の英文学教授が楽しめる、二つのレベルでうまくいく映画をつくろうときめた」と言った。『教養の書』に登場する、あるエピソード。

ハリウッド映画における古典の引用を散りばめたような作品とはちがうけれど、表面には見えない作者の深層心理や想いを発見し、それらを解釈する喜びは『デミアン』にも共通しそうです。

話の大筋は複雑ではありません。少年時

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大聖堂の描き方(短編の名手レイモンド・カーヴァー)

大聖堂の描き方(短編の名手レイモンド・カーヴァー)

Raymond Clevie Carver Jr.

 自分の読書が長編中心なのは作者の世界観をじっくり味わいたいからで、短編だと、世界観を理解したぐらいで終わってしまうのが寂しかったりします。

 だから、短編しか書かないレイモンド・カーヴァーみたいな作家さんは、自分にとって、苦手ではないけれど没入できるほどには読み込めない作家だと思っていました。

 カーヴァーは、村上春樹さんがその著作の全

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時間旅行者たちの系譜(コニー・ウィリスの史学生シリーズ)

時間旅行者たちの系譜(コニー・ウィリスの史学生シリーズ)

 Time travelers

 今夏の課題図書としていた、コニー・ウィリスの時間旅行SF『ブラックアウト』と『オールクリア』の読了を記念して "note" したいと思います。

 時間旅行と聞いて、ちょっとトキメク感じがするのは、自分が映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」にハマった世代だからですかね....。
 今回読んだ『ブラックアウト』と『オールクリア』は、H・G・ウェルズの『タイム・マ

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