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現代の寺田寅彦による科学読本!『波紋と螺旋とフィボナッチ』(近藤滋)

星の動きなど宇宙の出来事を数式で記述する学問が物理学。そして、生物の形態や模様を数理モデルで記述するのが理論生物学。著者は生物の方の第一人者。

著者は「現代の寺田寅彦」と称される。タイトルにある通り、生物にまつわる事柄を、数学的目線とボケを入れながら柔らかく語ってゆきます。

自然界に存在している生物の多種多様な模様を目にすると、その複雑さに思わず「神様の創造」を信じたくなったりしませんか?それがじつは単純な法則で表せる!って話だから驚きです。

著者の研究テーマはTuring波(反応と拡散をつくる波のこと)。ものすごいざっくり表すと「生き物の模様は化学反応で発生した波によるもので、すべての模様は同じ原理で説明できるよ」というもの。

著者はTuring理論という数理モデルのメガネをかけて、シミュレーションと実際の生物の模様パターンが一致するかを実験します(自腹で熱帯魚屋から魚を購入)。

理論を宝地図に見立て、お宝探しをする様がじつにイキイキと描写されます。

ここでアラン・チューリング

さらに興味深かったのが、このTuring理論の祖は、あのアラン・チューリングなのですね!ベネディクト・カンバーバッチが主演した映画「イミテーション・ゲーム」のご本人。

アラン・チューリングといえば天才数学者でドイツの暗号を解いてしまったエニグマやチューリングマシンで有名です。自死の4年前に著者の研究テーマである反応拡散原理を発見した。ちなみに当時は先進的すぎて受け入れられなかったようです。

本書はコラムも充実しています。なぜチューリングは天才的なのか?それは「抽象的に見える問題を具体的でシンプルで問題に変換する」だと。無駄を排除して本質を見抜く力がずば抜けているチューリング。

宝地図は後世に受け継がれる

チューリングが書き上げた数理モデルという名の宝地図は一時は完全に忘れ去られたものの、時代を経て著者が発見する。目に見えないバトンの継承それ自体にロマンを感じます。

スケールの大きい話だけど、著者のワクワクが伝わってきて科学がちょっと身近に感じられる、そんな熱くておもしろ本。

というわけで以上です!


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