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どうして本屋さんでは幸せな気持ちになるの? 本は、その人の世界。


私は、ずっと本屋さんが大好きでした。時間があれば、大手書店に行ってはゆっくりゆっくり中身を見ながら本を選びました。

「読んでいい本がずらりと並んでいる」というのは、なんとも言えない贅沢と幸せを感じました。

ずっと古い哲学者の本。自分が生まれる前に起こったことの本。外国の文学者の翻訳本。

それらを、私は自由に読むことができる。その人たちの感性を味わうことができる。知性の一端を学ぶことができる。

その感じが、ずっと大好きでした。


自分が関わって初めて分かったのですが、本一冊ができるまでというのは、著者が長い時間をかけてまとめることはもちろん、カバーデザインや文字の数、配置、紙の選択など、たくさんのプロフェッショナルが関わって丁寧に仕上げていくものです。

書籍というのは、その意味で、ただの「情報」ではなく、時間、労力、想いが結晶化したものでもありました。

そのことも、本屋さんでの贅沢で幸せな感覚につながっていたのだろう、と思います。


もちろん、今は、ネットでたくさんの情報が手に入るし、電子書籍もあります。私は10年以上マレーシアに住んでいるので、部屋の中ですぐにダウンロードして読めるということのありがたみも感じてます。

ただ、あの特別な幸せ感は、タブレットでは感じられない。

書店という「場」に、何か特別なものがあるのでしょう。人がそこにいて、「本」を一緒に大事にして。

本に価値を感じる人たちが集まる「場」は、居心地がいい。

本を購入したら、家に帰って、紙の感触を楽しみながら、大事に1ページ目を開いて。


本屋が一つなくなると寂しいのは、私たちが、今まで大事に守ってきた幸せな「場」を失うように感じるからかもしれません。

でも、今、話題の新しい流れを知りました。

「シェア型書店」の人気です。

「渋谷の再開発に伴い本屋が減り、渋谷のカルチャーが細っていく感覚があった」ことから、渋谷ヒカリエ8階に「渋谷◯◯書店」を立ち上げた方がいます。

横石崇さん。「みんなで作る新しい形の本屋を作りたい、新たなカルチャーを創るコミュニティの場にしたい」という「想い」が「場」になりました。


すごいのは、「月4,950円で本屋になれる」喜びを棚主(その棚で好きな本を売ることができます)に与え、そして、棚主同士や顧客との交流も結果的に促していることです。

「本屋さんになれる」ってどういうことでしょう?

ベストセラーだから、とかでなく、「自分が」本当にいいと思う本を応援したい、その本を知ってほしいという純粋な気持ちを、棚によって表現できることです。

本って、その人の「世界」

だから、表すことには、純粋な喜びが伴う…。

棚を出したい人が多く一時受付を休止しているようです。また、予想を上回る売れ行きだそうです。

人の「想い」が、集まって「場」になる。

書店がなくなってしまうなら、自分たちで、「自分の大切なもの」を守ろうという「想い」

自分の「世界」を大事にすること。


マレーシア在住の私が「渋谷◯◯書店」を知ったのは、きっかけがありました。

先日、「渋谷◯◯書店」の棚主さんの一人が、「ジミー」を「推し」にしてくださっていたのをtwitterで知りました。

驚きました。しかも、「ジミー」が一番前の特等席。Twitterの#も#小説ジミーになってるし、、。

矢澤さんとやりとりをして経緯をきくと、クラウドファンディングで届き4月には読まれていたそう。

一見ライトな青春恋愛小説に見えるけれど うっかり読んでしまったら最後、不意に頭をガツンと殴られるような衝撃」

を受け、「たくさんの人に読んでいただきたいので」(矢澤さんのFB投稿より)と 渋谷びぶりあ書店に置いてくださっているそう。

(矢澤さんは、株式会社「びぶりあ」の代表取締役。「渋谷◯◯書店」の◯◯の中に、自分の好きな言葉を入れます。だから「渋谷びぶりあ書店」という名前なんですね)

FBで彼女の個人的な投稿を見ると、4月時点ですでに「ジミー」の写真を出してくださってました。

何より、「ジミー」で「不意に頭をガツンと殴られるような衝撃」を受けた、というのが、嬉しく思いました。

私は、とても真剣に書きました。時間つぶしのためのものではなく「本当のもの」が宿る小説にしたかった。

出版の予定もなかったので、誰も読まないかもしれないもののために、何カ月もひたすらに書き続けました。

そのとき、私の自分の最大の力を使うことしか考えていませんでした。人と比べたり、自分を卑下したりすることはありませんでした。

それは、かつての私が、本屋さんで感じていた幸福感と関係があるのでしょう。

私は、「あの世界」を信じたから、書くことができたのです。

本屋さんで目を輝かせていた、あの頃の私が、後押しをしてくれていました。

あの頃の私が、まだ、私の中にいるのでしょう。


今日、本屋さんで目を輝かせるあなたも、きっと同じなのでしょう。

私たちは、何かを信じている。

お金では買えないもの。


生きていることを思い出させる喜びに出会う、期待。




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