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掌編・トウキョウバナナ
話題のクッキー専門店に並ぶ人の列が、今日は短い。目玉商品が早々に売り切れたらしい。最近は帰省時期に関係なく、東京駅土産がSNSで話題になる。チーズケーキやインスタ映えするクッキー、お土産じゃなくて自分が食べたいスイーツを求めて、平日朝から長蛇の列をなす。その様子をながめながら、私は駅構内で駅弁を売る。
日々、東京駅で働いているのに、ここから2時間足らずの実家には、もう2年近く帰っていない。故
続・少しのセンチメンタルと
自転車を走らせ、仕事へ向かう朝。
秋らしくない気候が続くけれど、朝方の風は
さすがに秋めいて、シャツの裾をふくらませる。
小学校の登校時間を少し過ぎているけれど、あの子に会わなかった。
今日は遅刻せずに行ったのかな。
朝のチャイムが鳴った少し後に、とぼとぼと学校へ向かう男の子。
うつむきがちな日、前を見据えて挑むような目をしている日、いずれも気になって、すれ違いながら行ってらっしゃいと、心でつぶ
感謝をこめてリスタート
夏を騒がせた雲たちが
翼の形をもらって
飛び立ってゆくのを目で追う
季節の巡りがもたらすのは
少しの不安とときめき
いつもいつもボクらは
追いかけながら追われているような
うまく伝えられない言葉や夢
そんな下書きだらけの胸のうちは
どんなにうまく書けた夏休みの日記よりも
本当のことで埋め尽くされてる
言葉にすれば
嘘のように聞こえてしまう
嘘ではないのに
心と景色が分離して
作り物の背景のよ
レーズンサンドとダックワーズ
何をしていても引っかかってくるモヤモヤが払い除けられない午後。
傷ついている人を見ることで自分も傷つく、という出来事。
一緒に憤るのが良いのか、感情的にならずになだめるのが良いのか。
たぶん正解は、相手の感情に巻き込まれずに冷静でいること。
けれど、正しいことって時として人を悲しくさせる。
正論が聞きたいんじゃないのに、と虚しく思ったことが何度もある。
大人げないけれど、今回は彼女と一緒にな
イマソラ…そのまなざし
3年がひとつの区切り、そんなふうにいわれた3年が経つ。
父が旅立ち、という表現も今ひとつしっくり来ないくらい、いまだにどこかへ出かけているだけのような気もする。
この時期特有のはっきりしない天気はあの日と同じ。あのときも私は、今日みたいに薄手の長袖を着ていた。嘘みたいにいなくなってしまうんだなと、どうにもできなかった感じがよみがえって嫌だ。
毎日、病室で空模様を見ていた。
以来私は、ふとしたと
「桜、きれい」の先に見ている景色
夜桜を見に子どもとでかけた。
そのあとカフェでご飯たべようよ、と誘ったら、喜んで行くとついて来た。
わざわざ夜から桜を見に出かけるなんて、子どもがそんなことができる年齢になっていたことに、まず驚く。
風邪をひかせてはいけないとか、寝る時間が遅くなってしまうとか、もうあんまり考えなくていい年になっていた。
満開の桜並木、思ったほど人はいなかった。
特に桜に目をくれるでもなく歩く、仕事帰りらしき人
その時間の流れに飛び込むために
昼下がりのコーヒーショップ。
一人客が多く、テーブルごとに思い思いの時間が流れている。
人に流れている時間というのは、ひとりひとり違うんじゃないか。
飛ぶように流れていたり、ぽっかり穴が空いたように消えていったり、大河の淀みのようであったり。
どれが良いとか悪いとかではなく、それぞれ異なった時間を生きていながら、流れのタイミングが合って気持ちがガッチリとはまり込んだり、あるいはすれ違ったりする
何食わぬ顔で殻を破る
なんというか、殻を破れればね
以前参加していた創作講座の講師に
何度かそう言われた。
作品を少しばかり褒められたその後に。
閉じこもっているつもりはないけれど
その頃私が書いた作品はどこかちんまりとして
お行儀が良すぎたらしい。
普通と思っていた道から少し外れたつもりで
冒険もしている気でいたから
そう言われるのは不満だった。
けれど、はみ出した気でいたのは自分だけで
ムリをしたりカッコつけ
雪とホットレモネード
たいして積もらなかった雪にがっかりしながら、1日を過ごした。
最近の子どもたちは、中学生になると雪を喜ばない。タイツ禁止、スニーカーでの通学が大変だから。
小学生はいつもより機嫌よく、雪道を出かけていった。
小学生の気持ちを理解できる程度に、自分に余裕があるのがうれしい。
大きな予定のない日をつくることの大事さを思う。
気持ちに余裕があると、温かな飲み物を飲みたくなる。冬でもアイスコーヒーを頼