オカルトの惑星―1980年代、もう一つの世界地図
同じ青弓社から出ている『オカルトの帝国』の続編といえる本です。
オカルトという視点から見た日本社会について、解析しています。
『オカルトの帝国』は、ほぼ、一九七〇年代の日本に限って、語っています。
対して、本書は、一九六〇年代から一九八〇年代という、より広い範囲を語っています。
一九七〇年代の日本は、大変なオカルト・ブームでした。なぜ、そうなったのかを探るには、その前の、一九六〇年代から見なければなりません。
『オカルトの帝国』は、そこをカバーしきれていませんでした。本書は、そこを補っています。
また、「一九七〇年代のオカルト・ブームは、その後どうなったのか?」についても、本書がカバーしています。一九八〇年代のことですね。
一九八〇年代は、一九七〇年代とは違った形で、オカルトが日常に入り込んできた時代でした。
それを、本書が明らかにしてくれます(^^)
二〇一一年現在から見ると、一九八〇年代は、二〇年以上前です。ヒトの記憶が薄れるには、充分な時間ですね。
けれども、当時をはっきりと覚えている人が、まだ、おおぜいいます。それくらい近い過去でもあります。
二〇年という時間は、一つの時代を冷静に眺めるうえで、必要な時間かも知れません。
「オカルト的なもの」―UFO、未確認動物、超古代史、シャンバラ、新宗教、ニューサイエンスなど―に興味がある方は、ぜひ、読んで欲しい本です。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
なお、一部に、普通のネット環境では表記できない漢字があります。そこはやむなく「?」にしておきました。
はじめに
第1部 オカルトの水脈―― 一九六〇年代から八〇年代へ
第1章 美しい地球の〈秘境〉――〈オカルト〉の揺籃としての一九六〇年代〈秘境〉ブーム
1 一九六〇年代の〈秘境〉と「学術調査」
2 大衆娯楽としての「海外学術調査」
3 〈秘境〉をつくった男たち
4 ”書斎の探検家”の〈秘境〉の歩き方
5 〈秘境〉はあなたの心の中に――オカルトから精神世界へ
第2章 オカルト・ジャパンの分水嶺――純粋学問としての人類学からの決別
1 オカルトの揺籃としての人類学
2 共振するオカルトと探検
3 蜜月状態とその解消
第3章 邪馬台国と超古代史
1 新たなる志向
2 「帝国」の逆襲
3 時代の帰還
4 見えざる脅威
5 苦労な攻撃、地図の復習
第2部 地球の午後―― 一九八〇年代オカルトの地平
第4章 デニケン・ブームと遮光器土偶=宇宙人説
1 古代宇宙飛行士平井節=宇宙考古学の系譜
2 遮光器土偶=宇宙人説
3 ポピュラー・カルチャーのなかの「宇宙考古学」
第5章 シャンバラへの旅――八〇年代日本の危うい夢
1 アガルタの首都シャンバラ
2 多彩な表象
3 チベットに回帰するシャンバラ
4 精神世界の救世主へ
5 チベット人ディアスポラとカーラチャクラ
第6章 台湾のオカルト事情
1 『小叮?』と『哆啦A夢』
2 日本文化がオカルトであった時代
3 トンデモ本的思考
第7章 バブルとUFO
1 「SF元年」と八〇年代日本の「UFO熱」
2 救世主【メシア】としての宇宙人像――『大予言』とともに
3 良き隣人としての宇宙人――〈癒し系〉の先蹤【せんしょう】
4 UFOアブダクションと性的妄想
5 恋人としての宇宙人――〈宇宙エロティシズム〉、その後の展開
第3部 日常化するオカルト―― 一九八〇年代から九〇年代へ
第8章 児童虐待とオカルト―― 一九八〇年代女性週刊誌における猟奇的虐待報道について
1 「児童虐待」報道の戦後史―― 一九八〇年代後半の記事数の増大
2 一九八〇年代後半の猟奇的な海外の虐待報道
3 隠された児童虐待の系譜――悪魔儀礼虐待と悪魔カルト
4 日本での児童虐待問題の変容
5 一九八〇年代後半の女性週刊誌というメディア空間――児童虐待報道とオカルト記事の交錯
第9章 かくも永き神の不在に、セカイを語るということ
1 不可触なる中枢
2 ある王の死と偽王の死と
3 《物語》進化論
4 世界の終りのアンダーグラウンド
5 《物語》は続く
第10章 カリフォルニアから吹く風――オカルトから「精神世界」へ
1 オカルトブームと「科学」の揺らぎ
2 ニューサイエンスという「思想」
3 八〇年代の新宗教と日本の雑誌メディア
4 カリフォルニアから風が吹く
ネス湖への旅は終わらない――あとがきにかえて
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