見出し画像

読書感想文⑩というかメモ

本日の本はこちら☞お姫様とジェンダー
最近自分の周りでジェンダーやLGBTに関する話がよく出てきて、私自身も関心を持ち始めたから読んでみた!タイトルもとっつきやすくて入りやすい~
と思って読んでみたら、割と過激派?(笑)でも面白かった~

プリンセスに生まれることは自分の力でできることではない。
他人に幸福にしてもらうことを教え込まれた女の子がこれからの世界に生きて、自分で困難と闘い、自分の夢を実現するために努力することはできるのか?
プリンセス童話は女の子に他力本願で受動的な人生を教える最高の教師

また、おとぎ話では結婚と家庭は女性にとって唯一最高の幸福だと言われているが、妊娠や出産、育児や家事については何も言及しない。
どうしたら幸福を自分で作れるかを教えないのも無責任。
そして、若さと美しさを失った時、プリンセスは魔女のように、
「この世で1番美しいのは誰?」と聞く。
白雪姫はいつの間にか継母(魔女)になってしまうのである。

用語メモ:
シンデレラコンプレックス…他者によって守られていたいという心理的依存状態

●日本にプリンセスストーリーが入ってきた経緯

ドイツのグリム兄弟がグリム童話を編纂したのは1812年。
そこから明治20年に日本で親しまれ、結婚=ハッピーエンドの結末に
夢や憧れを抱いてきた女性は少なくない。

当時日本はドイツの国家主義的な体制や文化を導入して、イギリス、アメリカ、フランスなどの民主主義的な体制や文化を防ぐことにした
日本がドイツ系の文化、思想を導入した意図は、
男性を頂点とし、中心とする家父長制的社会として強化するため。

「女の子は美しく従順であれば、地位と金のある男性に愛されて結婚し、幸福になれる」というプリンセスストーリーがジェンダーを再生産し続ける。

●白雪姫とジェンダー


白雪姫=可愛らしさ、家事役割、清潔好きいわゆる女性らしさの象徴。

女性は生来優しい、おとなしい、欲望がない、そのような虚偽の刷り込みが豊かで多様な存在である女性に強制された場合、彼女は誠実であればあるほど自己を悪として責めるようになる。
いい子でいなければならないという抑圧につぶされてしまう。

美しくて若く善良な女性vs醜く置いていて邪悪な魔女
⇒結局良い娘が幸福な結婚に漕ぎつける

美貌をめぐる女性同士の競争
⇒このステレオタイプの勧善懲悪が男性たちから見て好ましい。

そして、あくまでジャッジするのは男側
⇒したがって、ミスコンはジェンダー先進国では廃止されている

現実の私たちは「聖女」ではないが、「悪魔、魔女、悪女」でもない。
それは既に誰かがあらかじめ作り出した型に過ぎない。
現実のわたしたちはもっと複雑で多面的であり、独自の存在である

他者中心的な生き方が、女性を男性の支配する組織のメカニズムに取り込まれやすくするので、女性は男性の好意を得ることに必死で、それが女性同士の友情や連帯を損なってしまう。
自己実現や自分の状態を改善しその状況から出ていく人に嫉妬し、女性を皆水平化して自分の存在価値を確認しようとする。

●ディズニーの歴史

ディズニーは家父長制家族に育ち、熱心な反ユダヤ主義者、反共産主義者であった。1944年、反共的な映画関係者団体「アメリカの理念を保持する映画同盟」の設立に加わった。
彼が白雪姫を公開した1937年とは、第二次世界大戦の火蓋が切られようとし、日米が解散する直前だった。

白雪姫の基本テーマは、危機にあるアメリカの社会心理に訴えかけたものである。おそろしい継母に対する抵抗は暗黒の悪の力がアメリカの存在そのものを脅かすかに見える世界大戦に間も無く突入しようとしていた国民の恐怖を反映した。

あらゆる悪に打ち勝ち復活する白雪姫は、アメリカの理想な家庭を守る「理想的、家庭的女性」であった。アングロサクソン系白人男性の道徳的高潔さを賛美し、優しく素直な若い女が家庭に入ることを勧めた。
そして彼女らは皆「いつか私の王子様がやってくる」と歌い出す。
彼の理想の社会である、家父長制的社会を表している。

●シンデレラとジェンダー


シンデレラの周りにいる動物たちなど、彼女を幸福に導くキャラクターは
皆男性。彼女の幸せを阻止するのは継母、義理の姉たち女性。
魔法使いのおばあさんは母親のような存在であった。

結婚して家庭を持つことしか社会に居場所はない?
どうしてこの広い世界の全てが彼女らのものではないのか。
男は金を持っているのがよく、女はそういう男と結婚して贅沢な暮らしをするのが幸福なのか?

シンデレラに対する4つの批判

①シンデレラが王子に愛されたのは身体と衣服の美しさという外見だったことへの批判
シンデレラが身分が高く外見が良い男性と結婚して社会的階級を上げようとした点では、継母や義姉と同じ価値観を持つという批判
③何一つ自分で努力せずに全てを他人にやってもらったという受動性への批判
④彼女が召使い女のように屈辱的な状況に甘んじていることへの批判
(自分から運命を切り開こうとは決してしない)
→多くの女性がリスクを負うことを嫌い、選ばれるのを待ち、未知に向かっていくことを恐れ、成功することを恐怖している

王子様だろうが、乞食王子だろうが、出会いは偶然。来たら来たでいいし、こなかったらこなかったでまたいいかもしれない。
大事なことは、自分の一度しかない人生を偶然や待ちに頼っていないで、
しっかりと自分で作っていくことである。

●本書で紹介されていたジェンダー崩壊のための映画
エバーアフターbyアンディテナント
クレイマークレイマーbyダスティンホフマン
告発の行方byジョディフォスター
ファースト・ワイフ・クラブ
永遠に美しく

また、本書を読むことは、この社会で大量に生産され、消費されて知らぬ間にそうと思い込まされ意識を変えられているマスメディアへの批判力をつけるレッスンの一部でもある。漫画、映画、テレビドラマ、CMなどは洪水のように溢れて女性の体や性を商品化しその人間的な尊厳を破壊している。

知識が客観的にものを見ることを教え、考えることを教える。

●お姫様、自分で目覚めなさい

お姫様、自分で目覚めなさい。もしも王子様が来なかったら永遠に眠り続けることになる。この世界を統治するのが男性であって、女性はそれに従っていればいいというジェンダーの構造ができたのはおよそ4000年前からだと言われている中で、それは植民地統治や封建制の比ではない。
非常に大きい構造改革だ。

!感想!
作品には必ず創作者の意図やメッセージが含まれているもの。
そしてそれは作品が創られた時代背景にも大きく関係する。
きっとこれを読み解くことこそが読書感想文なのだなぁ…とふと思った。

たぶん何の前提知識もなければ、私はこの本を「陰謀論」と決めつけて、
ただ読むことに飽きていたかもしれない。
私も子供のころからディズニープリンセスを見て育ち、多少なりとも愛着があったからである。自分が子供のころから好きだったものや「プリンセスは素敵!」と感じた幼いころの価値観を批判されると良い気持ちは確かにしない。

しかし、多少なりともこれまでのジェンダーの歴史や社会構造を知っていれば、納得できる部分は非常に多いと感じた。
自分も身体的に女性の身体をもって生まれた分、そこに濃度はあるにしろ、
このジェンダーの問題は死ぬまでまとわりついてくるものだろう。
今後もこのテーマについては学び続けていきたい。

そして今回、映画や本などの作品を「エンタメ」や「いち物語」として消費するだけではなく、その背景や伝えたいメッセージまで読み解くという面白さと難しさを知った。
新しい楽しみ方だ~

ちなみに私はディズニープリンセスではジャスミンが好きです。
おしまい~

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?