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#記憶

詩 イントロ

詩 イントロ

イントロのギターリフ
聞こえてきたよ
揺れる波は
鼓動と共鳴する
ライブの音源

思い出したい記憶は
はじめから無くて
はじめからある
何もない記憶

前にも後ろにも
どこにも行かず
ここにいることを
揺らぎの中で
寂しく知る

気持ちだけが
ゆらりゆらり
いまの位置を高めて
いつしか大人に
なっていった

寂しいと思う
記憶があってよかった
そんな風に
思う日を
待ちながら

歩いている
音の波

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詩 言えなかったら

詩 言えなかったら

あの日先生に
言えなかった言葉
あの日友達に
言えなかった言葉
あの日教室で
言えなかった言葉

今日をもって
笑顔に変わる

あの日の言葉
わ になって話すと色がつき
いつのまにか
覚えのない約束を果たす
大人たち

話したいような気がして
話したくないような気がして
つっかえてしまった記憶は
つっかえたまま大切に

言葉を少しずつ
貼り合わせて
不格好ながら
温かい今を
ふんわりとただ
噛みし

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詩 ふるさと

詩 ふるさと

形はいつも
変わってる

わたしの形
ふるさとの形

心の中に
ある景色
記憶とともに
歩いていたら

大切に
思っていたこと
溢れだす

「この町は素敵な景色だね」
と言ってくれた
やってきたばかりの先生と
赤いランドセル
揺らしながら歩いた時間
心地よい風が
緑一面をざぁーっと
揺らしてた

素敵な景色に
住むわたし
そう思えば
鼻高々に

小さな少女の
笑顔がぱーっと
あの日この町に
咲いた

詩 本棚にある絵本

詩 本棚にある絵本

思い出の表紙
記憶をくすぐる
やわらかく

もう思い出せない
ことばかりでも

今も変わらず
並んでいる
あの絵本に

わたしは遠く
思いを馳せる

大きくなったら
大きくなったら
大きくなったらと

夢でいっぱいの
あの日々に

わたしはまた
大きくなった
手を伸ばしている

大きくなったら
小さい君を
知りたくなるから

詩 人間観察

詩 人間観察

記憶の中の色
記憶の中の温度
時間とともに
変化しないが
時間とともに
変化していく
思い出として

わたしという人間を
あの日にもう一度
連れて行けたら
思い出は
変わらないのに

どれだけ文明が
発達しようとも
戻れない時間に
頬杖をつく

思い出を
都合の良い色にして
都合の良い温度にして
幸せに墜落していく

ダメ人間じゃないよ
きっとわたしたち
これを人間というんだろう

詩 笑顔の温度

詩 笑顔の温度

世の中が暖色に
衣替えする季節
記憶の中で
シャカシャカと鳴る
木の葉の音

昼夜の寒暖差
建物恋しく
目指す足取りはやく

さあ帰ろうと
風に吹かれて
家路を急ぐ

俯きがちな季節の中
ひとつだけ
確かにあった
温もりに満ちたそれは

あの日くれたカイロよりも
ずーっと長く
温かいまま

思い出すと
心がほんのり
あったかくなる
あの子の笑顔

詩 まちを歩くと

詩 まちを歩くと

まちを歩くと

昔使っていたバッグを持った人がいて

昔やっていた楽器の教室の看板があり

昔悔しい思いをした洋服があり

私の過去が
ちらりとどこからともなく
顔を覗かせる

愛着があって
執着があって
未練があって

忘れかけていた扉
ぱたぱたと開いていく

いろんなものを通り過ぎながら
その時に持てるだけのものを手に
どこかへ進んでいる

持ち物が変わり
靴が変わり
景色が変わり

それでも

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詩 記憶の栞

詩 記憶の栞

君の今日までを形作った
悲しい色の記憶
思い出さないよう
厳重な箱に封じ込めるのではなく

君がまた
新しいページから始められるよう
美しい栞にしてしまおう

君の歴史は動かない
ここまで物語は紡がれてきた
封じ込めることに懸命になっても
辛いことは辛いまま
それでも君のステキな未来に
干渉されてたまるものか

栞から先が
君の未来

ここまで地道に
歩んできた
この栞が
この栞の美しさが
そのこ

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