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むぎ光葉
2024年7月31日 23:24
もわっとした空気にうとうとうと慌てて非常階段へ都会の空は狭いはずだったけれど今日はビルとビルの間に空(そら)のビルがある狭い空間を突っ切ってどんなビルより高いこうして都会のなかで大きな自然をくりぬいた
2024年6月28日 21:00
雨降り駐車場わたしのもうひとつの部屋雨から守ってくれるガラスの向こうの景色がゆがむ昨日の人の顔を思い出すわたしたちと喋ってたけどほとんどもうひとりの方見てた合わない目線を追いかけて合わない空気に笑みを浮かべて合わない温度設定がわたしの頭ボーッとさせてく今日はエアコン入れなくてもちょうどいい温度まだまだ居場所を探せるね雨よどんどん降ってくれ薄い車体に打ち付け
2024年5月31日 23:55
窓ガラスの向こう机ならべて椅子に座って浮かぶわたしたち鏡みたいなふたつの教室ぼーっとしていると皆がどこかに引いている蛍光ペン慌てて隣を盗み見て本当の教室に世界は戻る先生の言葉ひとつから想像の蜘蛛の巣はどこまでも広がったどこにも行けなくても教室で旅をし続けた豊かな時間は小さな机にいつもこうしてはりついている
2024年4月30日 23:36
イントロのギターリフ聞こえてきたよ揺れる波は鼓動と共鳴するライブの音源思い出したい記憶ははじめから無くてはじめからある何もない記憶前にも後ろにもどこにも行かずここにいることを揺らぎの中で寂しく知る気持ちだけがゆらりゆらりいまの位置を高めていつしか大人になっていった寂しいと思う記憶があってよかったそんな風に思う日を待ちながら歩いている音の波
2024年3月31日 23:09
窓の外には海が広がる光が水面をキラキラに化粧する窓の中には部屋が広がる仕方なく使ってる小さめの古い棚に埃が今も積もってる窓の額の中は外窓の額の外は中遠くの美しさに気がついているのなら遠くの美しさも眺めているようだこちらの絵を誰かの憧れがあって夢があって時間だけが紡ぐ物語があって泣き笑いのなかのキラキラに化粧した窓辺に今も佇んでいる
2024年2月29日 19:46
朝の光雑貨屋さんで見つけた指輪わたしの指できらきらひかる冬の間の低い日差しを集めるようにわたしに届く光の届く場所にいれば傷んでくるけれどお気に入りを身につけていたい日の当たる場所傷ついても探しているきらきらとても美しい色にはあらわせない心のなかの色がまた揺れて
2024年1月23日 00:01
晴れた空に油断していた振り向くと向こう側で雷雨雲はもうそこにあり子どもたちは公園からいなくなったわたしは近くのカフェで雨宿りティーラテひとつにガレットひとつ窓辺のソファ席深く腰かけ外を見ながら大人の贅沢味わってる今こうして雨を避ける屋根を買った甘いものを口にする権利を買ったリラックスした時間を過ごすソファを買った避けるものたくさん買えるのも
2023年12月9日 23:51
ファミレスの窓の隙間からのぞくひつじ雲が美しかったすぐに忘れてしまいそうなパーツを綴り生活の手触りを確かめている心地よいものを長く共にしたいみんなが違うもの好んでいるからいろんな素材に溢れているいつも変わる美しい組み合わせ揺れ動きを楽しむ心がぽわんと浮いてる空
2023年11月13日 21:46
駐輪場のハンガーがおめかしする日髪についた水滴振り払いながらいつもの場所へ急ぎ足は水たまりの水しぶきステップ軽やかに水滴が乾いた頃にはくるくると踊っている毛先部屋の外静かに騒がしく音楽は続いているおめかししてステップ踊っている音楽と今度はいつだろうどうせまた踊るのだからおめかししなくちゃとハンガーと約束する
2023年11月6日 01:23
誰もいない砂浜にござを敷く今日買ったジェノベーゼパン昨日買ったりんごジュース海を見ながら朝ごはん貝殻飛行機灯台太陽ほんとうに素敵なものは教えられない素敵なままでわたしのこころをまもるのだ
2023年10月29日 01:34
太陽はひとつ今日も顔を出すじわーっ「どこで見ても同じだよ」そうかもしれないけれどその地で顔を見た瞬間に感じたものはいつも初めてで思いがけない気持ち胸の中にひろがる宇宙にいまきらりと想いを巡らせる壮大で繊細なひとりであること思い出し日の出としばらく佇むころ
2023年10月22日 07:38
形のちがう石を渡って歩く向こう岸まではもうすぐか鯉にえさをあげる人楽しそうにしてるひとつずつひとつずつ途切れながらも次があるよく出来た橋よりも趣のある形を渡りたい楽しそうだからと選べるうちは選んでる向こう岸に辿り着くまでは不安定の美しい調べにのせて軽やかに
2023年10月14日 14:38
貨物列車を追い越していくピンク色の空があたりを包むころ今が記憶を追い越していく電車の窓から馴染んだ文字見えるころあの子が働くビルを追い越していく灯りがついてること確認したころ貨物列車が追い越していく空の光が奪われたころ生活は進む誰かがどこかで今日もまたやさしい色を分け合いながら
2023年10月6日 22:38
視線の先助けを求める彼女はもういつかの時代の人生きることは苦しさとともに名前もない時代背景を語る多くの中のひとりいつかどこかのまちで照らされ誰かの目にとまったとき彼女はまた生きているいつかどこかのわたしもまた何かの名前をもって存在すること理解する多くの画家はもういない絵のなかで出会う市井の人と目を合わせいつまでも過去と対話していよう