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岡本才市(オカモト サイチ)
2019年8月5日 16:45
どうやら交通事故にあったらしい。 らしい、というのは記憶がないからだ。 でもその時のことは断片的に覚えている。あ、朝薬を飲み忘れたな飲まなきゃ、ということや、自転車の空気抜けてたな入れなきゃ、と思ったことを覚えている。非日常的な衝撃の瞬間には、人はずいぶん実際的なことを考えるものらしい。 不幸中の幸いとはまさにこのことで、事故による怪我の程度はそれほど重くはなく、肘付近の骨にヒビが入っ
2019年7月21日 23:20
水曜日、電車でNetflixを見ながら帰宅した。時間は22時。広告会社の営業としては早い方だろう。打ち合わせばかりの毎日で、帰るころにはその日何を話したか忘れているが、翌朝出社すれば思い出す。便利な脳だとつくづく思う。 帰り際、近くのスーパーで惣菜とお酒を買う。ほうれん草のおひたし、きゅうりの梅おかか和え、だし巻き卵。缶のハイボールとレモンサワー。あとは家にあるワインや日本酒で充分だ。白米は
2019年7月16日 17:30
「死ねばいいのに!」 女はそう言って1人で手を叩いて爆笑していた。IPAのクラフトビールからはじまり、角ハイボールを3・4杯、その途中に僕は合流した。それから赤ワインを2杯、そして今は日本酒を飲んでいた。刺身の盛り合わせやポテトサラダ、あん肝などがテーブルには並んでいた。料理にはさほど興味がないようだった。僕は大して面白いことを言ったわけではないのに、女は1人で笑い出し、1人なのに爆笑していた。
2019年7月10日 15:47
私の職場には、「辟易ちゃん」というあだ名をつけられている女性がいます。私自身は仲間内でもそう口にすることはなく、仕事の時などで必要な場合はきちんと(当たり前だけれど)彼女の名字で呼んでいます。 ともあれ、便宜的にここではあだ名で呼ぶことにします。辟易ちゃんはとにかく職場の誰もを辟易とさせているから「辟易ちゃん」と呼ばれています。そういう名前がついてしまうとそう見えてくるから不思議なものです。
2019年7月9日 13:14
台風一過、空は晴れ渡っている。真っ青よりもむしろ紺に近いくらいだった。通勤電車が何度かオーバーランして早朝のミーティングに遅れそうなこと以外は悪くない朝だった。車内では意識が高そうなネット記事をいくつか流し読みしていた。それらを読んでいるうちに、どんどん自分のモチベーションという名の風船が萎んでいき、心なしか吐き気を催してきた気がした。ほとんど無意識のうちに降車すべき駅のホームに降り立った。
2019年7月8日 06:48
「おとうさん、トイレ」 早朝、もうすぐ3才になる息子が僕を揺り起した。僕は唸りながら仕方なく起き上がる。早く起きた息子に抵抗しても無駄なことを知っているからだ。窓の外からは早くも鳥の鳴き声が聞こえる。 トイレを済ますと案の定、息子は眠れなくなったようだった。まだ寝ている妻と娘を起こさないように静かにリビングに移動する。妻は寝返りを打ったので、もしかすると彼女の意識は起きているのかもしれない。
2019年7月5日 10:57
「あなたは心の病気ではありません。脳が疲れているのです」 専門医はそう言った。口もとと表情は柔和に見えるが、眼鏡の奥の眼は笑っていない。 「ずーっと忙しく働かれてきて、脳が疲れちゃったんです。ほら車でもあるでしょう? オーバーヒートのようなものです。公園の脇に車停めてボンネット開けてタクシーのおじさんがよく公園で休んでるでしょう? あのようなものです。脳だって疲れたら休めることが大切なんです
2019年7月6日 23:37
私は夜になると熊になるのだが、それは大したことではない。人は誰しも秘密を持っているものだし、それが私の場合は実は熊であるということだけだ。 熊にもいろいろいるが、私はヒグマだ。医者にはわりとヒグマ率が高い。コンビニ店員なんかにはツキノワの連中が多い。あとクロネコヤマトとか。昼は黒猫で夜は熊とか冗談かね?と私たちヒグマたちからすると格好のネタになっている。海外の動静についてはちょっとわからない。