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ビジョンノート

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シェフとして日々考えていることなど。
運営しているクリエイター

#料理

少数精鋭が利益を生む

少数精鋭が利益を生む

レストラン業界は人手不足に悩まされているが、これを機に効率的な人材配置を考えるチャンスでもある。たとえ豊富な人材がいたとしても、飲食店の利益構造では、どうしてもスタッフの数を絞ることが求められるしね。

僕のレストランでは、接客と料理の品質こそが最も重要な業務であると位置づけ、これらにリソースを集中している。まず、各スタッフに明確な役割を持たせる。キッチンスタッフには良質な食材を仕入れ、丁寧に料理

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厨房についての考え方

厨房についての考え方

料理の世界は、常に進化し続けるテクノロジーと共に歩んでいる。特に近年の厨房機器の高度化は、料理の可能性を大きく広げた。一昔前になるがエスプーマ、液体窒素、パコジェットなどの導入により、従来では考えられなかったような革新的な料理が生み出されたのは確かだ。これらの技術は、ハイクラスのレストランを中心に、新しい料理の概念を形成する上で重要な役割を果たしている。

かつて、僕もこのような最新技術を駆使した

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シェフにとっての厨房とは

シェフにとっての厨房とは

キッチン、それは一般的には料理を作る場所として知られている。だけど、シェフにとって、厨房は単なる料理を作る場所を超えた存在だ。それはラボであり、スタジオであり、そして料理人としての魂を反映する場所でもある。シェフにとっての厨房とはどういう存在なのかを考えてみた。

ラボとして。
シェフは、新しい料理や技法を探求するための研究者とも言える。厨房はシェフにとって実験場です。新しい食材や調味料、または調

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食材への「火入れ」への想い

食材への「火入れ」への想い

食材との出会いから料理の発想が生まれ、それが形となってテーブルに運ばれる瞬間まで、料理すると言うことには多彩な一連の流れがある。それはデザイナーがデザインすることと似ていて、クリエイティブなことだと思う。その中でフランス料理では「火入れ」を重視する傾向にある。

たしかに火入れは、食材の持つポテンシャルを最大限に引き出す魔法のような瞬間だ。それぞれの食材が持つ、繊細な風味や食感、色や香りを知り尽く

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シェフとしての情熱を忘れず、料理の魅力を追求する

シェフとしての情熱を忘れず、料理の魅力を追求する

僕はレストランの監修やプロデュースをしながらも、自分のレストランであるエルブランシュの厨房に毎日立っている。毎日、自ら料理を作るシェフという仕事が僕の本業だからだ。
飲食業界はいつも厳しい競争の中に立たされているし、いつの間にやらブラックだと叫ばれ若者が遠のいていくしで、このままでは飲食業界に未来はあるのか、料理人という職業に誇りを持てるのかと、どんどん不安になってしまう気持ちもわかる。

だけど

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地産地消の限界と地方創生へのさらなる挑戦

地産地消の限界と地方創生へのさらなる挑戦

僕はフレンチレストランのオーナーシェフとしてだけでなく地方創生シェフとしても活動している。料理人として地方創生の活動をしているとよく耳にするのが「地産地消」だ。地産地消こそが食で地方創生する最も重要なキーワードだとよく耳にする。だけど、本当に地産地消が地方創生に繋がるのか、僕は最近そんな疑問を持っている。

確かに地産地消は、地域の食材や特産品を活かし、地元の経済を活性化させる素晴らしい取り組みだ

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情緒と料理

情緒と料理

日本を代表する伝説的な数学者、岡潔(オカキヨシ)氏のエッセイ集「春宵十話」(シュウシュンジュウワ)。
数学者なのにエッセイ集なんだと言う驚き。

彼は多変数解析関数論という、なんのことかさっぱり分からない数式の研究者。そんな彼がエッセイの中で数学は情緒だと言っていることに心が惹かれた。
彼曰く、そもそも数学とは「1」が何であるかを知らないが、そこは不問にして、その次あたりからが数学の出番になる、の

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