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びおら弾きの哀愁

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びおらとクラシック音楽に関する覚え書き
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1度きりだから楽しい?

1度きりだから楽しい?

もう忙しくて練習の時間が取れず、よほどキャンセルしようかと思ったんですよ……。

何の話かと言うと、オーケストラ練習会のことです。昨年のGWに第1回が開催され、難曲てんこ盛りで参加メンバー(特に弦楽器)がヘロヘロになったやつです。その後、主催者の方がアンケートとの結果をもとにブラッシュアップを行い、ずいぶんと改善されました。曲数を絞ったうえである程度仕上げ、録音・配信をする形になったのです。こうす

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祭りだ祭り!

祭りだ祭り!

2月の後半で「祭り」といえば、ああ、国府宮のはだか祭りね、となるのが普通だが、ここで取り上げるのは「弦祭」。弦祭(げんまつり)というのは、弦楽器奏者のためのワークショップで、1回完結型というところが面白い。毎回参加してもいいし、1回限りでもよい。1回で完結させるので、曲は短い曲や楽章を取り上げて練習し、仕上げとして通しで録音する。後日、録音した音源を参加者で共有する。詳しくはこちら

1回で完結と

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練習会か交流会かそれが問題だ

練習会か交流会かそれが問題だ

楽器ケースのフタを開けなくなって、かれこれ一年半になる。これ以上放置しておくと、もう弾けなくなるのではと思い始めた頃、タイミングよく出演のお誘いがかかった。出演といっても、演奏会ではない。いろいろなアマチュアオケから人を集めて、「オーケストラ練習会」をやろう! というお誘いだ。

ふつう、オーケストラの練習といえば、本番があってそのための練習なのだが、今回は練習のための練習で、演奏して面白そうな曲

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音符の雨

音符の雨

2年ぶりにチェンバロリサイタルを聞きに行った話

その日は前回と違い、戻り梅雨のような雨の日だった。会場となるギャラリースペース「Enne_nittouren」(えんね・にっとうれん)はフラワーショップと同居していて、軒先に素敵な植物やおしゃれな園芸用品が置いてあるのだけど、この日はグレーの背景に沈み込んだような印象だった。

この日開催されたのは、辻文栄さんのチェンバロリサイタル「イタリア古楽花

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ベートーベンと見せかけてソ連特集

ベートーベンと見せかけてソ連特集

県内ではだいぶアレも落ち着いてきて(日々の感染者数は概ね20人前後)、通常規模のオーケストラのコンサートが聞けるようになってきた。毎度刺激的なプログラムで楽しませてもらってきた名フィルも、7月から一部内容を変更して定期演奏会が復活。「生誕250年記念 トリビュート・トゥ・ベートーヴェン」シリーズということで意欲的なプログラムが組まれている。

今回聞きに行った定期はベートーベンの中でも《遺書》がテ

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透き通る響き

透き通る響き

お久しぶりのコンサート、今回は「Enne_nittouren」という小さなギャラリーにて、辻文栄氏によるチェンバロリサイタル。

プログラムは次の通り
G. フレスコバルディ Girolamo Frescobaldi(1583-1643)
・トッカータ 第7番 (トッカータ集 第1巻より)
・フォリア
・コレンテとフォリア
・フォリアによるパルティータ
・カンツォン 第6番
・ベルガマスカ
・パッ

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あまりにも有名なトライアングル

あまりにも有名なトライアングル

相次いでコンサートが消えてゆくなか、先月聞きに行った小さな演奏会の紹介を。

長久手文化の家では「午后の佇みシリーズ」というワンコイン・コンサートを定期的に開催している。前回は11月、ジャズとクラシックの交差点という大変面白いプログラムだった。

その時に勢いで今回開催分のチケットを買ってしまった。お題は「ヴァイオリンとピアノで贈る珠玉の名曲集」。平光真彌氏のバイオリン、丸尾祐嗣氏のピアノという組

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抜粋といえども「ワーグナーやったら肉!」

抜粋といえども「ワーグナーやったら肉!」

先日、約半年ぶりに名フィルの定期演奏会を聴きに出かけた。最近、財布の紐を引き締める必要があって、コンサートは控えていたのだが、にもかかわらずポチッとネット予約で席を押さえてしまったのには理由がある。

それは、演目がワーグナーの「リング」抜粋版だったからだ。去年の秋に愛知祝祭管弦楽団が、四年がかりの全曲演奏会を終わらせたばかりで、自分もその中にいた。また、プロの世界ではびわ湖ホール主催による「リン

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クラシックorJAZZ?

クラシックorJAZZ?

美術館めぐりが一段落ついたので、コンサートの感想など。

コンサートホールを持っている自治体主催で「ワンコイン・コンサート」といったものが開かれることがある。ワンコイン=500円で、平日の昼間などに小規模なコンサートを楽しめるという企画だ。小規模というのは、だいたい数人の演奏者が1時間程度の内容で、100人~300人くらいの客数を想定した演奏会。万が一外れても損害はワンコインで済むから、聞く方も気

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びおら弾きの哀愁 1

びおら弾きの哀愁 1

ビオラという楽器は、同じバイオリン族のバイオリンやチェロ(本名はバイオリン・チェロ)に比べると、知名度も音質もマイナーである。それを知っていてなぜビオラを弾くという選択をしたのだろう。しかも気づいたらアマチュア歴20年を超えているではないか。

その間にさまざまな作曲家、指揮者、演奏団体と関わり、もう限界だもうやめようと思いつつ、そのたびに音楽の神様に首根っこを捕まえられては引き戻されてきた。

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びおら弾きの哀愁 2

びおら弾きの哀愁 2

前の記事で、ビオラが受け持つのはほとんどリズムや和音作りと書いたが、実際は作曲家によってビオラの扱い方は月とスッポンぐらい違う。

シューベルト
たとえば「未完成交響曲」。おいしいメロディがバイオリンとチェロの間を言ったり来たりするのを、あたかも焼きたてのパイが右から左、左から右へと行き来するのを眺める気分でリズムを刻み、和音を作らなくてはいけない。あるいは金管楽器が悲壮なテーマをキメている時に裏

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びおら弾きの哀愁 3

びおら弾きの哀愁 3

今回はビオラ特有の音色の話。

協奏曲やソナタについてもやはりマイナーなビオラである。
ビオラのための楽曲は、主にバロック時代と近代以降に集中しており、ベートーベンやブラームスが活躍したロマン派時代に作られたもので有名曲はほとんどない。

理由はある。バロック時代にはビオラの先祖にあたるビオラ・ダ・ガンバやビオラ・ダ・ブラッチオなどヴィオール属の楽器が活躍していて、それ用の協奏曲が何曲も作られてお

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びおら弾きの哀愁 4

びおら弾きの哀愁 4

ビオラ弾きはどのようにしてビオラ弾きになるのだろう。これはなかなか興味深い問いである。というのも、子供用のビオラは存在しないからだ。

バイオリンについては、周知のように子供の身体の大きさに合わせて1/4サイズや1/2サイズなどを選べるようになっている。チェロにも子供用サイズがある。ビオラはどうするのかと言えば、ほとんどの場合、成長したバイオリン奏者がビオラに転向する。掛け持ちで弾く場合もある。(

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