見出し画像

1度きりだから楽しい?

もう忙しくて練習の時間が取れず、よほどキャンセルしようかと思ったんですよ……。

何の話かと言うと、オーケストラ練習会のことです。昨年のGWに第1回が開催され、難曲てんこ盛りで参加メンバー(特に弦楽器)がヘロヘロになったやつです。その後、主催者の方がアンケートとの結果をもとにブラッシュアップを行い、ずいぶんと改善されました。曲数を絞ったうえである程度仕上げ、録音・配信をする形になったのです。こうすれば1回きりの合奏で終わる演奏とはいえ、形として残るので練習のモチベーションも上がります。

ちなみに今回のプログラムといいますか、取り上げた曲は次の通り。
 ・シャブリエ/狂詩曲「スペイン」
 ・サン・サーンス/サムソンとデリラより「バッカナール」
 ・ベルリオーズ/序曲「海賊」
 ・グラズノフ/交響曲第5番
はい、決して簡単な曲ではありません。むしろ弾きがいがありすぎるくらいで(汗)。どれも今までに演ったことのない曲ばかり。興味はあったものの個人練習の時間がとれないことはわかっていたので、全乗りは潔く諦めてグラズノフのシンフォニーのみの参加としました。

結果的にはそれで正解でした。グラズノフの曲はもちろん初めて弾くのですが、曲の構成はシンプルな一方で転調が激しく、調号や臨時記号がやたらに多い。耳で聞けば同じモチーフが半音ずつ上がったり下がったりしているだけ、というパターンが多いのですが、それをきちんと弾こうとすると身体がなかなかついてゆきません。あとは4楽章の変拍子的なリズムはもう暗譜して覚えるしかなく、ここでも時間が必要。そして最大の鬼門、ト音記号。これが神出鬼没であちこちに顔を出します。ワーグナーを弾いた時にずいぶん慣れたはずですが、ほぼ初見で対応するにはまだつらい。この状態で、さらに譜読みの曲を増やすのはムリでした。

とまあ、不安な要素はたくさんあるまま当日を迎えたわけで、会場へ向かう電車の中で「いったい自分は何を好き好んでこんな大変なことをしているのだ?」と後悔の念に駆られたほどです。

おそるおそる会場の中に入り、ヴィオラチームがいるあたりに顔を出すと、知っている人とお初の人が半々くらい。一番うしろでこそっと弾こうとしたら、トップ担当の方から声をかけられ「それはダメです」(えぇ? なんか面白いなぁ←心の声)。今回は楽章ごとに席替えをするとのことで、チャンプルーみたいにメンバーがごちゃまぜになる仕様になっていました。

じつは、この練習会のテーマが「交流」でして、さまざまなオーケストラ団体から人が集まるだけでなく、プロの演奏家も混じっていっしょに演奏できる貴重な機会なので、例えばエキストラの依頼をしたり、トレーナーの依頼をするきっかけになればとの狙いがあるのでした。

私がオケ練習会を特に評価しているのはこの点でして、演奏者って、特定の団体に所属すると、なかなか他団体の演奏者と知り合ったり交流する機会がないんですよね。もちろんエキストラとして呼ばれたり、いくつもかけもちをするなど、もともと行動範囲が広い人は良いのですが、そういう人は決して多くありません。でも質の良いオケ活動を続ける上で、人脈を広げるって大事だなと、年を取るにつれて強く思うようになりました。このチャンプルーみたいな練習会は良い機会だと思います。活用して損はなし。

さて、実際に弾いてみると、意外と楽しいグラズノフ。これは指揮者の力も大きかったなと思います。音楽愛あふれる方に降っていただくと、たちまち曲の魅力がたち現れるものです。一人でさらっていたときにはイマイチだなーと思っていた曲が、合奏の場で合わせた途端に命が宿りい生き生きと動き出しました。各パートが噛み合ったりかけあったりする様子も肌で感じることができるし、ぶっちゃけ、生の音の洪水に浸ることそのものが快感なのです。

というわけで、半分くらいは「弾いたつもり」でやりすごしまたが、久しぶりに合奏の空間に身をおいたことで、ずいぶんとリフレッシュできたし、楽しい時間でした。最近乾き気味だったメンタルの土壌にたっぷりを水をやった感じで、心地よい疲れが良いですね。

最後に、告知から事前準備はもちろん、この場を完璧な仕切りで用意してくれた主催者の上井さんには大変感謝です。

(あっ、事後アンケートに回答しなくちゃ。来年のために😁)


投げ銭絶賛受付中! サポート頂いた分は、各地の美術館への遠征費用として使わせていただきます。