見出し画像

「文字のアルバム」が作りたくて。

 2週間のドイツ国内旅が終わった。
ドイツ国内にはもう3ヶ月以上いるけれど、旅行するのが初めてだったので、ハンブルク・ケルン・ミュンヘンとドイツの北・西・南の都市を巡ることにした。



 とにかく濃厚な旅だった。
それぞれに色々な出来事があって、少し差別めいた体験もあったし怖さを感じるようなこともあった。定番の観光スポットや、ドイツの歴史を知る上で行っておきたい場所へも行った。
旅先で出会った別の国からの観光客や、街に住む人との交流も少しあって色々考えることや思うことがあった。

 色々記事の種は下書きとして溜めてあって、どれも形にしたくてウズウズしているのだけれど、思ったよりの進みが悪い。
ここにきて急に、こだわりのようなものが出てきている。



たぶん急にこだわりだした原因は、私が最近決めた「 目標 」にある。

 私はこの2年間の海外生活を本にしたいと思っている。
方向としては旅エッセイのようなもので、海外での暮らしで感じたことや旅先で知ったことや考えたことをなどを1冊にまとめるつもりだ。


 誰かに売ろうとしているわけではない。
写真でアルバムを作るように、その時の思いを綴った記事をまとめて「本」という形で残したいのだ。いうなれば「 文字のアルバム 」だ。


 先日印刷屋さんを調べたところ、1冊からでも本の印刷は頼めるらしい。
どうせ自分のために作るのだから、少しお金がかかったとしても自分好みの装丁の本にして、一生大切にしたいと思える1冊にしようと思っている。



 今の海外での生活は私が努力して手に入れたものではなく、「家族に起きた偶然に、自分も乗っかってみた」みたいな感覚が強い。
そんなかたちでいつかしてみたいと思っていた海外暮らしをすることになり、身の回りで起こるすべての経験が、私にとってはありがたいことなのだ。


 きっとこんなラッキーはずっと続かないし、残りの人生でもう起きないということもわかっている。それに降って湧く幸運をただ待つのではなくて、自分の努力や行動で手に入れるような経験がしたい。
 それもなかなか得難い経験だろうし、生きているうちにできるかはわからないけれど、せめてそういう努力をし続けた人でありたいと思っている。

 だからこそ、文字のアルバムで降って湧いた幸運を大切にとっておきたいと思うし、それと同時に幸運をいつまでも引きずらないために「文字のアルバム」を作ることで、人生においての幸運なひとときを完結させたいという思いもあるのかもしれない。



 本1冊を作るくらいで思いを大切にとっておけるかわからないし、気持ちを完結させることができるかも今の段階ではわからない。もしかしたら、そんなことをしなくてもサクッと自分なりの次のステージに進めているかもしれないし、今の生活が終わる前に今後につながる何かが見つかって歩み始めているという可能性もゼロではない。


 日本の社会的なつながりをほとんど手放してしまった私にとって、未来が本当の意味で未知だ。ここに来るまで過ごしてきたような生活にはもう戻れないだろうし、以前よりも生活が向上するのか低下するのか、そもそもまったく比べようのない生き方をするのかもわからない。


 そういう意味でも、自分の中で目標と区切りになるようなようなものをひとつ作っておきたいと思った。
 そうでないと自分の中に「いいなあ」とか「やりたいなあ」みたいなぼんやりとした希望みたいなものが乱立するばかりで、結局なににもならないまま、時間とともにぼんやりと消えてしまうのが目に見えている。


 ずっと誰かに言うか悩んでいたけれど(なんなら一度記事にしてすぐに消しているけれど)、やっぱりちゃんと自分で決めた目標として、誰に言ってもいいと思えるくらいの覚悟を持ちたいと思った。



私はやると決めた。
これから語学学校もはじまるので忙しくなるのは間違いないけれど、ちゃんとやり抜く。ちゃんと本という「 形 」にする。そのための準備をする。



 しかしそう決めると、どうしても記事へのこだわりが強くなってくる。
自分にとって残す価値のあるものを書きたいという思いが前よりも強くなったのだと思う。

 実際あとで本を作る時に振り返ったら、当時価値があると思ったことにはさほど価値を感じなくて、逆にうっすらとしか書かなかったことが大事に思えることもあるかもしれない。
そういう意味でも、色々なことを書いておいてあとで選別するのでもいいかなと思うのだけれど、まだ「そうしよう!」とまでは思いきれていない。

自分にしか関係のないことのほうが、なかなか決断できないのが私の癖だ。



 説明が長くなったけれど、そういうわけで記事を書くスピードが格段に下がっている。
 10年以上書くことを仕事にしてきた人間としては、文字を書かないことも少しストレスになっている。「とにかく書かせろ」という気持ちと突然あらわれた「こだわり」が私の中で睨み合いを続けていて、当の私はそんな両者を眺めることしかできないまま、とりあえずこの記事を書いている。


 「こうと言ったらこうだ!」と無理に動くだけではなく、ときには様子を見て待ってみることの大切さは、ドイツでの暮らしで学んだことのひとつだ。

そういうわけで、本調子にも戻るまでもう少し時間がかかりそうだ。



サポートしていただくと、たぶん食べ物の記事が増えます。もぐもぐ。