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なゆた
2023年6月24日 07:33
いのりは、燈郎に髪を切ってもらって1ヶ月経った。美容院に電話して予約を取ろうとした。「ありがとうございます。BeLu美容室青葉店です。」「予約をお願いしたいです。零宮いのりといいます。」「いつもありがとうございます。」店長になった横井が電話に出た。「皆川が長期休暇に入っておりますので、担当を色々模索してみましょうか。」心遣いがあった。「若尾さんでお願いします。」「すみません。若
2023年6月23日 07:51
9時前に車に戻ろうとした時、いのりは燈郎らしい人を見つけた。確信はなかった。燈郎は体育館を出ると、いのりの傘がある事を確かめた。「髪が濡れる心配はない。」車で待っていると真巳がやってきて乗り込んだ。いのりも体育館を傘を刺して出た。車を走らせる燈郎に気づいた。「何でここ来たんだんだろう。弟さんもバスケやってるって言ってたなぁ。迎えに来てたんだ。」声をかけたかった気がする。
2023年6月11日 06:59
いのりが店に戻ると店は閉められて店内には誰もいなかった。ガラス越しに、傘立てに、さされた傘を確認できた。ガラスにも雨露が付き傘が遠退いていくように霞んでいた。家に帰る途中に、また振り出した。「今日は本当についてない。」切ったばかりの髪はぐっしょり。帰宅するとすぐお風呂に入った。燈郎は、いのりが雨に濡れてるのではないか心配した。「綺麗な黒髪に・・雨が・・・」雨がいたずらをした
2023年6月10日 06:50
いのりは、その日の最後のお客様だった。バタバタと一斉に閉店に取り掛かった。燈郎が店の扉の札をclose にする時、傘の忘れ物に気づいた。「さっきの零宮様の傘だ。」と直感的に思った。先輩の横井に「傘の忘れ物があって、零宮様のと思うので、追いかけてみます。」と店を出た。今日は、梅雨告げる本降りの雨だったのに、今だけ止んでる。また降り出すのではないだろうか。夏の始まりの若葉には露がついてい
2023年6月9日 07:53
雨が止んでいる事に、いのりは気づかず、傘を持たずに帰り始めた。髪を丁寧に触られた感触。寒気がした。「無理。本当にもう無理。」しばらくして、水たまりに足を入れてしまった。さっきまで雨降ってたんだ。「あぁ。」「傘、忘れた。」溜め息を二度ついた。とぽとぽと、引き返し美容院に向かった。水たまりが教える雨と傘マガジン↓https://note.com/now_you_tow
2023年6月7日 07:42
本当に傘が送られてきた。饒舌だったし、その場限りの話かもと思っていた。おじさんの話は、本当だったのだ。高級傘を家族分4本も。母は晴雨兼用の黒の傘。縁取り10cm程に黒の上品なレースが重なっている。父には焦茶で合皮の持ち手の傘。弟には濃紺の傘。私のは縦糸に抹茶色、横糸に山吹色の傘。布製なのに決して重くない、16本針の一番上等な傘。それは花束でも届けられたように梱包されて贈られてき
2023年6月6日 06:58
再び部屋に入ると話は賑やかに変わっていた。たぶん初めて会うおじさんに傘職人さんがいた。「あの傘の持ち主だ。」と思った。老舗の傘職人で、一時は低迷していたが、高級ブランドからの注文が入るようになって、経営は持ち直した。高級ブランドからの発注であっても、すべて手縫いでしっかりした作りだった。おじさんは誇りに思っていた。「あの傘立てにあったの見ました。鶯茶色と京紫の傘がおじさんとおばさんので
2023年6月5日 07:54
いのり、大学3年生の晩秋、雨の日。おじいちゃんのお葬式が終わった。おじいちゃんは父のお父さんで離れて暮らしてた。骨上げを待つ間に親戚だけで、別室で食事をしていた。親戚と言っても、いのりの知らない人がいた。遠い親戚という人、どのように遠いのか話を聞いても、わからなかった。お葬式はそういう事も、よくあるだろう。皆、悲しむ事もなく穏やかに、食事をしながら話していた。いのりは、変わらず
2023年5月28日 08:37
[あらすじ]いのりと燈郎が、憧れる美容室の店長の皆川ひかりが、体調不良によりお休みとなる。髪を触られるのが苦手ないのりが、代わりに燈郎にカットしてもらった。いのりは動揺し美容院に傘を忘れてしまう事から始まる話。その傘は遠い親戚の傘職人おじさんからもらった大事な傘。二人は、すれ違がう事によって惹かれていってしまう。燈郎はいのりの髪に傘をさしかける事ができるのか。私は詩人なので、1話